ペンダント
「イテー、せっかくの再会なのにひどいじゃないか!我が妻セルリアン」
悪びれた様子も無く両腕を広げてセルリアンに近づいてくるブレットに机を盾にして行動を阻止したセルリアンは唇をわなわなと震わせた。
「今すぐその呼び方やめないと永久にその口を聞けなくするぞ」
「つれないなー我が妻セルリアン!」
そんなやり取りを見ていると、さっきまでの危機的状況にひんしていた状況は何だったのだろうか?
突如現れた自称セルリアンの元カレ、ブレットはさきほどまでイタチの姿をしていた少年達と戯れ始めた。
だが、銀狐の結界が破られたのは事実であり、この男の底知れぬ妖気が気にかかる。
と言うかこいつは一体何なんだ?
この部屋にいる全員がブレットの言動に固唾を呑んで見守っていたが、九十九神の一言が話を進めた。
「いつまでこの茶番は続くのだ?元カノの再会と言うだけでこんなにも学園を乱れさせるなんて、お前も随分下等な妖怪じゃのー」
普段から人間味の無い表情をしている九十九神だからたったそれだけの事に恐怖を感じてしまう。
しかし、ブレットはそれに全く臆する事無く弟達の頭をポンポンと叩いて、『ヒュー』と口笛を吹き立ち上がった。
「お?九十九神か…この学園にはそんなモノもいるのか。なるほどどうりで結界が強い訳だ。だが、生ぬるいな。おれちんが本気出したらこんなの結界のうちに入らねーよ」
「勘違いするなよ、我とこ奴等は仲間ではない。私ならばもっと強い結界が作れるし、お前など造作も無くこの場から消す事ができる」
閉じた扇子をブレットの喉元にぐいと突き付け少しづつ下にずらしていくと扇子がカチャと言う音と共に何かに引っ掛かったらしく動きを止めた。
ブレットのつけている、透き通るようなネオンブルー色をした花型ネックレスのチェーンに引っ掛かったのだ。
あのペンダントって?
それはオレのつけているペンダントと全く同じだった。
獣猫から奪ってきた何でも願いを叶えてくれる魔法の花の花びら…。
何故アイツもソレを持っている?
オレの視線に気付いたらしく、ブレットはイヤらしく口角を上げた。
「ああ、思い出した。お前、確か伝説の盗賊天狐だよな!昔、セルリアンから聞いた事あったわ」