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再び九十九神

一ヶ月ちょい振りの学園に来て早々こんな慌ただしくなると思っていなかった。

特別室まで走る最中、『イテ』『今何か通りすぎなかったか?』などなど生徒達が立ち止まり、頬や剥き出しになった腕を抑えたりさすったりしている姿が目に入った。


「なぁ、セルリアン。これって(あやかし)の仕業なのか?」


それ以外他に何があるのだろう?

明白な応えが見えているのにこんなアホみたいな言葉しか出てこなかった。


「ああ。しかも…私の学園を大々的に…荒らすとは!こんな…無礼モノはきっとアイツしかいない」


前を走るセルリアンは息を切らしながらだったが目星があるのかハッキリとした口調で言い切ったかと思いきや急にモゴモゴと言葉を続けた。


「だが…何故今頃になって…?」


理事長室の隣の特別室には白衣を羽織った銀狐が分厚い虫眼鏡のような物を手にして先程神松から預かった九十九神の宿ったバッジを覗き込み叩いたり音を聞いたりしていたが、やがてふぅーとタメ息を吐いて、


「そうか。そんなに外に出たいのか…いいだろう、久しぶりに外に出るがいい」


そう言うとバッジを天井高く上げ、入ってきたオレ達に離れろともう一方の手で合図した。


「出てこい、九十九神」


銀狐の右手から発せられた銀色の御力(オーラ)に包み込まれたバッジがみるみるうちに神々しいオレンジ色の光に飲み込まれる。

オレンジ色の光はゆらりゆらりとオレ達の周りを舞いながら徐々に人の形を作っていった。

やがて、数ヶ月振りに姿を現したのは巫女の姿をした九十九神は腰までの藍色の髪の毛をはためかせ赤色のくっきりとした瞳でじっと銀狐を見た。


「私がいない間に随分不穏な空気に包まれた様だな。セルリアン、そなたは一体何をしておったのじゃ?」


胸元から取り出した茜色の扇子を口元に充て宙をふわっーと舞いながらセルリアンの前に降りると、いつも強気なセルリアンはビクッと肩を震わせオレの後に隠れ服の裾をぎゅっと掴んだ。

暴君王女セルリアンの唯一苦手なモノが巫女であるから、こんな風に言われて何も言い返せないのはいつもの彼女らしかぬ事である。


「お主の学園であろう?」


何も言えないセルリアンの変わりに銀狐が言い返した。


「九十九神。お前が今もこうしてこの世にいられるのはセルリアンさまのお陰だと言う事を忘れるなよ」


ふぅん、と鼻を鳴らしたものの別に不快には思わなかったらしく、窓際に置かれていた灰色のイスにストンと音を立てて座り辺りを見回し、人さし指にオレンジの灯りを灯してみるもののすぐに消えてしまうのを見て『なるほど』と静かに言った。


「この部屋には特殊な結界が張られおって低級な妖はこの部屋に入る事もできぬはずじゃな。で、お主等が聞きたいのはこの学園に入り込んでいる妖の事じゃろ?」


「ああ」


「しかし、そんなのお主等の方が分かっているのではないか?私は妖の気配をお主等に教えたにすぎん」


「……ほほぅ。九十九神とは性根の腐った神と言う名前だけの生き物のようだな。とんだ腰ぬけときたもんだ」


ふんと今度は力強く鼻を鳴らすと立ち上り、またオレの前に立ち言った。


「セルリアン。今回の妖はお前がよく知っているモノでは無いのか?」



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