またまた始まる学園生活
「イテ」
校舎内に入ってすぐ右腕に鋭い痛みを一瞬感じたものの、見てみても何の傷痕も無く、あれ?気のせいだったのかな?と奇妙な感覚に襲われた。
「どうした、ラビル?」
少しは機嫌を元に戻したらしいセルリアンがオレを見上げた。
「いや、何でもない。違和感を感じたんだが気のせいだったようだ」
「違和感?」
セルリアンは眉を潜めて辺りを伺うように見渡した。
そして、一点を集中して見つめ細い指先で空を掴んだものの、ちっと小さく舌打ちの音と同時にブザー音のような耳障りな音が鳴り響いた。
「逃げられたか、ん?何だこの音は?シブロまさかそのバッジか?」
先程神松から預かった銀狐特製、九十九神の宿ったバッジが奇妙な音と共にブルブルとバイブレーションしていた。
「九十九神が何かを知らせようとしてる、悪いが先に行く」
ぎゅっとバッジを握りしめ他者の答えを待たずに校内へと走り出した。
きっと理事長室と言う名の妖狐達が自由に使っている特別室に向かったのだろう。
「あんなに熱血なシブロ久々に見るぅ。てか、私は走れないわよぉ」
履いているヒールの高さを強調するように地面にカツカツと音を立てるゾーラ。
「マッドサディエストの血でも騒いだのかしらん?」
マッドサディエスト?
そんな仄めかすような事あったか?
確かに科学に関しては詳しく特別室で実験やらしているようだが。
しかし、考えてみると自分は銀狐について知らない事ばかりだと言う事に気が付いた。
黒狐はクールな気取り屋、セルリアンに全く頭が上がらず何故かオレの事をとても嫌っている。
金狐は元は犯罪組織『獣猫』の一員であり、今もいつか裏切るのでは無いかと内心ヒヤヒヤしているものの、取り合えず今のとこそんな兆候は無い、ただのオカマ狐。
赤狐小狐に関しては。…。…。うん、ただのガキだな。
「イテ」
今度は右頬に痛みを感じたので触れてみると、指に僅かな血がついていた。
その指をセルリアンが自分の唇につけ、ペロリと舐め、また舌打ちをしながら言った。
「私の愛するラビルの顔に傷をつけるとはいい度胸じゃないか!ちっ。私の学園にまたしてもふとどきものが入ってきたな。私達も早くシブロのところへ向かうぞ」
ようやく始まった学校。
これは新学期早々また賑やかな日々が待っているようだな。
夏休み明けで気だるそうにしている生徒と楽しそうに歩いている学生徒達の間を縫うようにして銀狐の後を追った。




