学校?
『ラビルはどうしていつもケガばかりして帰って来るの?』
暗い洞窟の中、セルリアンはいつもオレの帰りを待っていた。
オレの帰りがどんなに遅くても、いつも眠らないでオレの帰りを待っていた。
小さな手でオレの傷に優しく触れて、オレの手当てをしてくれていたセルリアン。
オレはセルリアンの事が他の誰よりも何よりも大好きだった。
だから、あの洞窟の中、いつもと逆で、オレがセルリアンを待つことになったとしたら、オレは絶対に眠らないでセルリアンを待っていようと思った。
そして、セルリアンがいつも言うように、
『おかえり』
って言ってあげようと思った。
******
「おい、朝だぞ。起きろ」
遠くから、セルリアンの声がする。
でも、オレの知ってるセルリアンはこんな喋り方じゃない。
まだ眠っていたがったが、目が覚めてしまい、四つん這いのまま伸びをした。
手足に当たる冷たい感触。
その瞬間、自分が檻の中にいることに気付く。
何故、俺が閉じ込められているんだ?
しかも、目の前の景色はオレの知らない場所。
「よく眠れたか?」
セルリアンの今までと違う姿を見て、自分がこの辺鄙な世界に来た事を思い出した。
「……。ああ」
よほど疲れていたのだろう。
セルリアンに起こされるまでぐっすりだった。
「それは良かった。今日は時間無いから、これ食べながらそれに着替えろ」
セルリアンは檻の鍵を開け、テーブルの上に置いてある握り飯を指差した。
セルリアンは昨日の手鏡を見ながら、髪をとかしていた。
「セルリアン?」
「何だ?」
「ケガしてる?」
セルリアンの白い頬に昨日は無かった結構深い切り傷があったので触れてみる。
「たいしたことない。それより早く用意しろ」
セルリアンの治癒の力は自分では使えないので、自分のケガを負った場合、治るまで普通の人間と同じぐらいかかる。
セルリアンの傷も心配だったが……。
そう言えば…。結局昨日何も食ってなかったな。
握り飯を口に頬張った。
うまい…。めちゃめちゃうまい。
テーブルの上にあった10個はあったと思う握り飯をあっと言う間に平らげてしまった。
「おい、早く着替えろって言ってるだろう?」
セルリアンは窓にかかっている、またしても見たことの無いグレーの服を指差した。
これに着替える?
半ば戸惑いながらも、着替え始めた。
「これでいいか?」
一応着替え終わり、セルリアンに確認してみると、こっちを振り返ったセルリアンの顔が真っ赤になった。
「…、うちの学生服がこんなに似合うなんて思わなかった……。おい、これから学校へ行くが、私以外の女を見たり見られたりするなよ」
昨日からセルリアンの注文が多すぎるな……。
と思いながらも、この世界でセルリアンに見捨てられたらオレきっとやっていけない……。
「あと、このネクタイで完璧。よし、行こう」
セルリアンは慣れた手つきでオレの首にネクタイと言うものを回した。