セルリアンのお部屋
「ここが私の部屋だ」
セルリアンに案内されて、入った部屋はあまり物が置いていない、ただただ広い部屋だった。
この部屋に来る前に乗った小さな箱の感覚が気持ち悪かったせいもあり、取り合えずオレはその場に座り込んだ。
「何をしている? 早くこっちに来い」
セルリアンは部屋から外の景色を見下ろしていた。
ここでも不思議な現象が……。
空には星が無いのに、見下ろす景色に星がたくさんある。
星なのか?
色鮮やかな明りがキラキラと外を覆いつくしている。
「キレイだな」
オレの言葉にセルリアンは頷いた。
「いつかこの景色をお前と見たいとずっと思ってた。今日やっと夢が叶った。そうだ、そうだ」
セルリアンは何かを思い出したように、オレから離れて、今日手に入れた丸いワッカを持ってきた。
「ちょっとここに座れ」
セルリアンに言われるままに、オレは背もたれのある茶色の椅子に腰かけた。
やたらとフカフカして座り心地が良かった。
セルリアンは、オレの首にそのワッカを回した。
革のイヤな匂いが鼻をついた。
ぎゅっと首を締め付けられる感じがして、
「うっ」
と、小さく声が出てしまった。
「きつくしすぎたか?悪い。」
何だ? これは一体何だ?
「よし、できた。見てみろ似合うぞ」
セルリアンに渡された、手鏡で自分の姿を写してみると、首にぴったりと赤い丸いものがフィットしていた。
「これは何だ?」
「お前が2度と私から離れないようにするものだ。これから、私はちょっと出てくるから、お前は部屋で待ってろ」
「出てくるって? どこに?」
さすがに一人にされるのは心細くなり聞いてしまう。
「大丈夫だ、すぐに戻ってくる。ちょっと片付けなきゃならないことができてな。まぁ、私が行くまでも無いとは思うが、今夜のは久々に大仕事になりそうだから」
オレはまだ不安な顔をしていたのだろう。
セルリアンが、よしよしと言うようにオレの頭を撫でて言った。
「私はこの先何があってもお前から離れたりしない。だから、お前も自分の部屋で大人しく待ってろ」
自分の部屋?
ここの部屋では無くて?
不思議に思っていると、セルリアンが指差した先には、人一人がギリギリ入れる檻のようなものがあった。
「いつかお前に逢えると信じて、お前のために特注で作らせたサークルだ。私がいない間ここから一歩も外に出るな。分かったな?」
こんな広い部屋に置いてあるせいか、その檻はとても小さく見える。
しかし、有無を言わせないセルリアンの言葉と、もう2度と離れないと約束の直後にオレに拒否権は無いと察し、オレは大人しくその中に入り、セルリアンが鍵を掛ける様を黙って見ていた。
オレ、ここでやっていけるのかな?
心細い気持ちでいっぱいだった。