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夏の終わりに

「やっぱり、夏と言えば海かな?でも、今からじゃプールの方がいいかなー?おい、ラビル、お前はどっちがいい?」

既にお出掛け用の花柄ワンピースに着替え終わったセルリアンは鼻歌を歌いながらスマホでデート人気スポットを見ていた。

「よくよく考えてみたら、二人っきりでのデートなんて始めてじゃないか?いつも邪魔が入るからなー」


そう言えば確かに。

こうして一緒に暮らしているのに、オレ達が二人っきりでいられることってなかなか無いもんだなー。


「ラービル、お前も早く用意しろよ」

そう言って、オレの肩にに両手を回して首筋にキスをしてきた。

「あー、愛しいラビル、今すぐにでもお前のこの首を切り落とし、片時も離れたくない、あー、愛してる愛してるぞラビル」

相変わらずセルリアンの過剰な愛情表現にも慣れ初めていると、チャイムが鳴った。


めちゃめちゃイヤな予感がする。

やはり、オレ達二人の時間は誰かしらに邪魔される運命なのかもしれない。


セルリアンもその思いを感じ取ったらしく、人さし指を唇に運び、『シー』と小さく言った。


しかし。


「セルリアンさま、セルリアンさま、急用でございます、ぜひ扉を開けてください」

黒狐がいつものクールボイスで淡々と呼び掛けている。


「シュバルツ、あいつわざと邪魔してるな」

眉を吊り上げ拳を握りしめ、玄関に向かった。


あいつもよく懲りずにセルリアンの怒りを買うよな。

テレパスの力を持っている黒狐なら、セルリアンの考えていること一つ一つ伝わっているはずなのに、それでも尚、セルリアンの怒りを買うようなことをしてくる。

アイツ、頭いいはずなのにな。


思えばこの世界に来て、たくさんの仲間と出会えたな。

1000年前、オレの側にいたのは小さなセルリアンだけだった。

セルリアンが唯一の支えで、セルリアンがいてくれたから生きてこれた。


もし、1000年の間、たった一人きりで生きてきたとしたら、気が狂っていたに違いない。

セルリアンがたった一人でも気を狂わず、オレを探し続けていられたのは黒狐を始めとしたたくさんの妖狐が彼女の側にいたからだろう。

一人で生きていけないなんて、何か人間っぽい考えになってきたなー。


「ラビル、デートは中止になった」

戻ってきたセルリアンの右手には首根っこを捕まれた小狐、そして、左側には、つねられたように赤く腫れ上がった頬をした黒狐がいた。

あーあ、哀れな黒狐。


小狐が一緒と言うことは新たな依頼が入ったのだろう。


「早く話してみろ、さっさと仕事を片付けて、ラビルとデートに行かなくてはならないんだ」













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