違和感
「セルリアンが僕の家に来てくれるなんて本当久しぶりだね」
セルリアンが自分の家に入った途端に、蒼紫は大喜びで落ち着かず跳び跳ねるようにしてセルリアンの横にいた。
初めて蒼紫を見た時は、やけに落ち着いてる子供だと思ったけど、こんな姿見ると、普通の子供だな、と思ってしまった。
風通しのいい部屋の中央に敷かれている呉座にちょこんと座っている幼いセルリアンも愛らしく、今さらながら懐かしい気持ちでいっぱいになる。
セルリアンの目の前に出された、草に包まれている和菓子を頬いっぱい口に詰め込む姿も可愛くて可愛くて…。
今のセルリアンも可愛いけど、やはりオレにとってこの幼いセルリアンは特別な存在だった。
でも…。
あの時のオレは…。
素直に自分の気持ち伝えることしたことなかったな。
オレがのたれ死のうか、誰も興味を示さなかったあの時。
むしろ、オレなんか死んでくれた方が助かると思われていた。
仲間なんて呼べる者誰もいなかった。
そんな中で、彼女だけがいつもオレの側にいてくれた。
『ずっといっちょにいようね』
彼女の笑顔だけがオレの癒しだった。
彼女だけがオレの支えだった。
オレは…彼女のために生きていたんだ…。
彼女が大好きだった。
そんな当たり前のことに改めて気付かされるなんて…。
指先に温もりを感じる。
我に返ると、セルリアンがオレの右手をぎゅっと握っていた。
『どうした?』
つぶらな瞳が訴えかけている。
きっと、傍目にも分かるほどひどい表情をしていたのだろう。
「ちょっと、廁借りるぞ」
セルリアンはオレの手を取り、外に出た。
蒼紫たちの目の届かないところに来るとセルリアンはすぐにオレに抱きついてきた。
いつもだったら、オレの胸の辺りに見えるセルリアンの頭がオレの腰辺りにある。
そうだ、これがオレの見ていた景色だった。
「何を考えていた?」
セルリアンがオレを見上げる。
「思い詰めた顔してたから、どうしたのかと…」
じっとオレを見詰める紫色の瞳。
強く吹く風が彼女の紫色の髪をさらう。
くっ。と笑いがこみ上げてきた。
「ど、どうした?」
そうだ、セルリアンはいつでも些細な変化でも見逃さなかった。
いつでもオレを見てくれていたから。
「セルリアン…、オレは…お前が」
「セルリアン、その人から離れて」
オレの言葉が途中でかき消される。
「雪菜?お前、ラビルの姿が見えるのか?」
その言葉には答えず、雪菜はオレの目の前に立ち、じっとオレを見た。
「妖狐、あなたは蒼紫の邪魔になる。蒼紫の作ってくれたこの世界の邪魔になる」
蒼紫の作ってくれたこの世界…?
何を言っている?
気が付くと風は止んでいた。




