違和感
「セルリアンが僕の家に来るなんて久しぶりで本当に嬉しい」
セルリアンの手をぎゅっと握りながらキラキラした目で見上げていた。
幸せそうな蒼紫とは逆に、セルリアンと蒼紫が目を合わせる度に不愉快そうに唇を噛み締める雪菜がいた。
「雪菜ちゃんだっけ?蒼紫とは幼馴染みたいな関係なのかな?」
ここに来てから自分の姿はセルリアン以外に見えていないし、自分の声もセルリアンにしか聞こえていないと分かっていたが、やはり誰からも反応が無いと面白くない。
「こんな可愛い幼馴染みいるなんて蒼紫幸せだろうなー」
ボソッと出た何の気無く出た一言。
言ってしまってから、はっとした。
案の定、セルリアンがつかつかとオレの前に来て、ぐいと服の裾をぐいと掴んだ。
「今すぐにお前の目に何も写らなくしてやってもいいんだぞ。お前の目に写るのは私だけで充分だ、それ以外何も写すな」
小さくなってもセルリアンから感じる気迫は全く変わらない。
美しい鬼のような形相でオレを見上げる瞳からは鬼気迫る物を感じる。
「セルリアン?」
急に手を離された蒼紫は驚いた顔でセルリアンを見ていた。
「何でもない、行こう」
再び、セルリアンは蒼紫の手を握り歩を進めた。
ふと、誰かの視線を感じ視線をずらすと、何とも言えない顔でオレを見ている雪菜と目が合った。
…目が合った気がした。
一瞬のことだから、はっきりとは分からない。
雪菜は慌てたように視線を下に落とした。
この村に来たときも感じた。
蒼紫の母親もオレの姿を見たと強く感じた。
ただの気のせいだと思っていたが…。
この村の住人にはオレの姿が見えていると言うのか?
見えていると言うのなら、何故、見えていないふりをしているのだ?