デジャブ 2
イテ、何だか身体中のあちこちが痛くて目が覚めた。
特に……、ケツに半端ない痛みを感じた。
とても高い場所から落とされた、そんな感覚だった。
どこからか川のせせらぎが聞こえてくる。
心地よいわたり風。
ここは……どこだ?
オレは今までセルリアンの部屋にいたはずだ。
セルリアン?セルリアンはどこだ?
オレは腰を上げて、辺りを見回した。
鬱蒼とした木々に囲まれた寂れた荒れ地。
だけど、空気がとてもキレイで、懐かしい?いや、懐かしいと言うまで時間は経っていない。
ここは……、この場所をオレはよく知っている。
そう、ここはオレが育って来た場所だから。
え?何故?今ここに?
軽いパニックに襲われる。
確かにほんの数ヵ月前まではここにいた。
しかし……。
「ラビル?」
セルリアン。
セルリアンのいつもより少し高い声に気付き、振り返る。
な!
そこにいたのは紛れもなくセルリアンだが……。
「セルリアン?」
セルリアンの姿が、オレと過ごしていた頃の小さな小さな幼女に戻っていた。
ああ、オレのセルリアン。
いつもの白いワンピースを着た幼いセルリアンがつぶらな大きな瞳でオレを見上げてる。
そんなセルリアンを見ていたら泣きそうになってしまった。
今までの奇妙な生活が夢だったのか?
そうだ、きっとそうだ、セルリアンはオレの大切なセルリアンはこんなにも無垢な少女だったのだから。
「泣いてる場合か?」
しかし、現実は残酷(少し言い過ぎた)で、上から目線のセルリアンの言葉で現実に返った。
「泣きたいのはこっちだ。こんな子供の姿じゃ、お前と愛し合うことができないからな」
小さな小さなセルリアンは舌ったらずで話す女の子だった。
それが、こんな的確に言葉を話している。
「セルリアンなのか?どっちのセルリアンなんだ?」
改めて聞かなくても分かっているのに、確かめてしまう。
「お前はバカなのか?……、まぁ、状況が飲み込めないのは私も同じだが……どうしたものか?元の世界に返ることができるのだろうか?」
珍しくセルリアンが取り乱してる。
「どうして1000年前に戻ってしまったのか?……、あの部屋にはシュバルツもいたはずなのに、シュバルツはどこだ?」
一人でぶつぶつと言いながら、同じ所を行ったり来たりしていた。
「セールリアン、何してるの?」
これまた可愛い子供の声が頭上から聞こえてきた。
見上げると、木の枝に腰掛けている、男の子とも女の子とも受け取れる子供が足を小さく揺らしながら、こちらを見ていた。
その子供の姿を見たセルリアンの顔が一瞬凍りつく。
「セルリアン、さっきから一人で何ぶつぶつ言ってるの?」
子供は小首を傾けて、言葉を続けた。
「一人……?」
セルリアンがぎょっとした表情で何かを確かめるようにオレの服の裾を掴んだ。
そして、ほっと胸を撫で下ろしてから、
「ラビル、私たちは彼に呼ばれたらしい」
彼と言う言葉を聞いて、ようやく子供が男の子だと言うことが判明した。
「彼こそ、蒼紫だ」
蒼紫?1000年前のセルリアンの友達。彼に呼ばれた?
まだ頭の整理が追い付かない。
「しかし、何故蒼紫にお前の姿が写っていないのか……?」
セルリアンの独り言は続いていた。




