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蒼紫

「そんな訳ない……、蒼紫から連絡なんて……くる訳がないんだ……」

スマホに向かって何度も何度も同じ言葉を呟くセルリアン。


蒼紫(あおし)って誰だよ?」


スマホを握りしめ凍りついた表情のままのセルリアンだったが、オレの言葉は届いたらしく、こちらを見てぎこちない笑顔を見せた。


「ラビル……、それはとてもとても昔の話だ、お前と別れてから……の話だ……」


セルリアンは、エアコンの風が当たらない場所に移動してから話始めた。


-------------------------------------------------------------


ラビルを失ってしばらく過ぎた時のことだった。

その頃は精神的にだいぶ落ち着いてきて、普通に生活を送れるようになっていた。

考えてみたら……。

ラビルに会う前の私は一人で暮らしていたんだから、きっと平気。

でも……。

心にぽっかりと空いた穴はとても大きくほぼ一日中、ラビルと暮らしていた洞窟から外に出ることは無かった。

ラビルは必ず戻ってくる。

ここで待っていれば必ず……。


その時。

カタカタ。

イヤな音がしたと思ったと同時に地面が揺れ始めた。

地震……?

出なきゃ……。

ラビルと過ごした大切なこの場所を出ると言うのは私にとって死にも値すること……。

それでも……。

生きていればきっと会える。


私は洞窟の入り口に向かって走っていた。

だけど……。

土砂が崩れていく、間に合わない、入り口が塞がっていく……。

お願い、もう少し生きさせて……。

ああ、私の願いは届かない……、このまま私は閉じ込められるのね……。

大きな岩が最後の光を消そうとしたその瞬間。


「お姉ちゃん、大丈夫だよ、そのまま走って」


よく通る男の子の声がした。


え?


目を開けると、大きな岩は入り口を塞ぐことなく、空中で止まっていた。


「は、早く、お姉ちゃん……」


洞窟の入り口の前にいる髷を結った一人の男の子は額に汗をかき、岩に向かい両手を広げていた。


私は男の子に向かい走った。


私が彼の横に立った瞬間、岩は落ち完璧に洞窟は塞がった。


はぁと、深く息を吐き男の子は膝をついた。


「大丈夫?」

私は男の子に視線を合わせた。  


私より小さな小さな男の子。

蒼い目をぎゅっと閉じたり開いたりしていた。

茶色の薄い着物を羽織った男の子。


「久々に疲れた……でも、お姉ちゃんが無事で良かった。僕、蒼紫、この下の村に住んでる。お姉ちゃんはここで何してたの?」

一気に捲し立て、好奇心旺盛な瞳でこちらの答えを待っていた。














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