セルリアンの力
「ここが私の家だ」
あれから、見たことの無い色々なとこに連れて行かれて、最終的に連れて行かれたとこは……。
何だこの建物は?
今日は見たことない大きな建物をたくさん見て、だいぶ目がこの世界に慣れてきたと思っていたのだが……。
これが家?
オレたちが住んでいた場所は洞窟の中の小さな小さな薄暗く、いつも水滴が落ちてくるような汚ない場所だった。
だが、しかし、今目の前にある建物は、空まで届くのでは無いかと思うぐらいのどこまでもどこまでも高く、小綺麗な建物だった。
「ラビル」
セルリアンがオレの胸にかかっている、ネオンブルーの花びら型のネックレスに触れた。
「お前はこの願いの叶う花を私が欲しいと言ったから、『獣猫』のアジトからこれを盗んできたのだろう?」
「……」
これが? あの花の花びらなのか?
確かにあの花はこんな風に透き通ったネオンブルーの色をした花だった。
だが、オレが手に握りしめたのはただの普通の花びらだったはずだ。
こんな石のように固いものでは無かった。
「その挙げ句、命を落とすとか、お前バカなのか?」
命を落とす……。
え?オレ死んだの?
じゃ、今ここにいるのは?
「あれからどれぐらいの時が流れたか分かるか?」
オレは首を横に振った。
セルリアンは深く息を吐いてから、オレから目を反らし、その目はどこか遠い彼方を見ているようだった。
「1000年だ」
1000年‼
「あれからそんなに経ったのか……」
「そう、気が遠くなるほどの長い時間だった。そんな中、私がどんな思いで過ごしていたか分かるか?1000年、私はずっと一人でお前に逢えるのを待っていた。お前がまた私の前に現れると信じて、色々な人間に成り代わり待っていた……」
1000年……。
どうして?
オレは1000年後のこの世界に飛ばされた?
オレの願いは、ただもう一度セルリアンに逢いたかった、ただそれだけなのに。
「私には不老不死の力があるらしい。それに気付いたのはだいぶ前のことだが…。そして、人間界に来て気付いたこと、それは……」
いきなり、首を捕まれ強引に目を合わせられる。
「三回回ってワン」
何だ?
セルリアンの言葉を聞いた途端、体が勝手に動き出した。
抗いたくても体が言うことを聞かず、三回回って、
「ワン。」
その瞬間解放された。
「今のは?」
「そう。……。どうも、私は他の生き物を自由に動かせることができるらしい。その力に気付いたのは800年ほど前だったが……」
セルリアンにそんな力があったのか?
思えば、セルリアンは治癒の力以外にも不思議な力があったことを思い出した。
昔、狼の群れにセルリアンが囲まれた事があったのだが、あの時、オレが助けるよりも早くセルリアンは、何かをして狼たちを蹴散らしたことがあった。
少し不思議に思ったが。
あの時のオレは、狼たちはオレの存在に気付いたのだろう? と軽い気持ちで思っていたが、あの時の力はきっとセルリアンの能力だったのだろう。
オレはセルリアンの次の言葉を黙って待っていた。