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「わーい、金色のスマホー」

まだ陽の明るい帰り道、ゾーラは手に入れたスマホを喜んでいた。

「私とラビルの携帯だけで良かったのに、何でお前らも買ってるんだ?特にシュバルツお前はテレパス使えるんだから携帯なんて必要ないだろう?」

嬉しそうに携帯の入っている箱をじっと見つめていた黒狐は、セルリアンの声にはっとして顔を上げた。

「す、すみません、つい自分まで買ってしまい申し訳ありません」

その黒狐の様子を見て、クスクスと笑い出す金狐。

「セルリアンとオソロで嬉しいなーって顔に書いてあるのにぃ、肝心のセルリアンに怒られて可愛そうなシュバルツゥー」

からかうような口調で、黒狐の先を歩く金狐。

何か言いたそうに口を開きかけた黒狐に畳み掛けるように金狐がしゃべる。

「そう言えば、あんた、あの人間の女の子とはどうなったの?何だっけ?神松……何とかって子、あれから会ってないの?」

金狐のあれからと言うのは、花火大会の日のことだろう。

「ねぇねぇ、あの後何も無かったのぉー?正直に話してみなさいよぉー」

「……、オレ、あんたのそう言うとこ本当大嫌い」

「はぁ?私だってあんたみたいな男大嫌いなんだけどぉ」

口では絶対に金狐に勝てる訳のない黒狐は金狐の言葉を一切無視することに決めたらしく、それからしばらく一言も言葉を発しなかった。

「今日も一日終わるな……」

セルリアンが空いてるオレの手を握った。

「せっかくのラビルと二人のデートが……、せっかくラビルとオソロのスマホが……」

小さな声でぶつぶつと言うセルリアンが可愛かった。

「あいつ等のせいで台無しだ」

「でも、まぁ、金狐はともかく黒狐はセルリアンの側にずっといてくれたんだろう?オレがいなかった時もセルリアンのこと守ってくれてたんだろう?」

セルリアンは少し考えてから答えた。

「私、昔の記憶が曖昧なとこがあるんだ。ラビルお前と過ごしていた時間のことは今でもはっきりと覚えているのだが、お前と出会う前の記憶が曖昧だし、お前が離れてからの記憶がところどころ消えている」

え?

オレと初めて出会った時のセルリアンは、両親を亡くしたと泣いていた。

しかし、その詳しいことは何も語っていなかった。

「まぁ、1000年以上も生きていればいちいち覚えていられないよな」

なんて言ってていたけど、セルリアン自身引っ掛かるとこがあるのだろう、何とも言えない表情をしていた。

そんなセルリアンの顔見てたら、

「昔のことってふと思い出す時ってあるし、そんなに気にすることないんじゃない?今はたくさん仲間もいるしオレもいる、大切なのは今だよ、な」

自然にそんな言葉が出てた。

すると、セルリアンは嬉しそうにオレを見上げた。

「ラビル愛してるぞ」

そして、背伸びをして頬にキスをしてきた。


背後でストンと音がした。

振り返ると、黒狐が蒼白な顔をして視線を落としていた。

買ったばかりのスマホを落としていたのだ。

あーあ……。

それを見てまた嬉しそうな金狐。


いつもならキスの邪魔をしたことをめちゃめちゃ怒るのに、一緒になって笑っているセルリアンがいた。


「ラビル、ラビルの言ってた言葉はこう言うことだよな。今を大切に、戻らない今をラビルと楽しく生きていたい」

大切な仲間と大好きな人の笑顔。

かけがえのない時間を生きていたい。
















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