女の幽霊
引き受けるも何も……。
セルリアンがこんな状態で、依頼なんて……。
一抹の不安を感じてしまったのだ。
「お願いします。依頼引き受けましょう」
セルリアンがみんなの返事を促した。
「困っている人がいたのなら助けたいと思うのが人ですよね?」
そして、真剣な眼差しでオレを見た。
この言葉を聞いてはっとした。
ここに来てから、疑問に思っていたことがあった。
そもそもセルリアンは何故このような依頼を受けることにしたのだろう?
いつからこのようなことをするようになったのだろう?
いつの日だったか、セルリアンに聞いてみたことがあったが、その時ははぐらかされてしまった。
けど……。
今の言葉がセルリアンの本心なのであるならば……。
「セルリアン、依頼を引き受けよう」
オレが言うと、セルリアンは満面の笑顔を見せた。
その姿に一瞬ときめいてしまった。
ああ、やっぱりセルリアンは可愛い。
そして、セルリアンはセルリアンだった。
「そんな状態で最後まで依頼達成できるのか?」
赤狐はテーブルの上にあったブドウを口に入れた。
「幽霊だとしたら、祟りかな?何か恨みでもあってこのマンションに住み着いたのか?怖い怖い」
「女の恨みとかやばいよな。女は執念深いから。セルリアン見てたら分かるよな」
「ああ、天狐がちょっとでも他の女なんて見ただけで、『その目えぐりとってやる!』だもんな」
セルリアンの口調を真似して笑い出す二人。
セルリアンがいつもと違って大人しいからと調子にのった二人は言いたい放題だった。
そして、部屋の住みに置いてある檻を指差し、笑い出した。
「あの檻だって、自分がいない時に天狐を閉じ込めておくものだろう?天狐もよく大人しく従うよな、って、イテ」
赤狐はオレに殴られた頭を抑えた。
「子供に何すんだよ!」
「都合のいい時だけ子供になんなよ」
「前にも言ったろう、昔の力が残ってない今のお前ならオレ余裕で勝てるんだぜ」
「はぁ!お前倒すぐらい今のままで充分」
「やるか?」
「やるのか?」
赤狐の態度にムカつきが抑え切れず、ついムキになってしまう。
「ケンカはダメです」
小狐が間に入り、めっと大きな目で見上げた。
「そうですよ、ケンカは良くないですよ、今は依頼のことを考えましょう。みんなで力を合わせて依頼を片付けましょう」
みんなで力を合わせて……、いつものセルリアンからは想像つかない言葉だった。