セルリアンの異常
「私としたことが、客人にお茶も出さずに申し訳ございません。まだ片付けの途中で多少散らかっておりますが、どうぞ、お座りください」
オレが連れて来た黒狐を見て、セルリアンが慌てたように部屋に案内した。
そんなセルリアンを見て。
ここにまたしても、狐のくせに狐につままれた顔をしてる顔をしてる奴がいた。
「な、言っただろう?」
黒狐の動揺っぷりは半端無かった。
セルリアンさまがどうしてこのようなことに……?
などと呟き、セルリアンに進められた椅子にも座らず、テーブルの周りをぐるぐると歩いてた。
「天狐、お前が何かしたんじゃないだろうな」
オレに向かってこんなこと言う始末。
いやいや、何かってなんだよ?
何かすればこうなるものなのか?
「コーヒーをどうぞ」
セルリアンが差し出してくれたコーヒーカップを黒狐は……。
「あ、ありがとうございます。い、いただきます」
そう言って受け取ろうとしたものの、動揺が大きすぎて床に落としてしまった。
「あ」
カップのかけらを慌てて片付けようとしたものの、セルリアンと指が触れて。
「あ、あ、あ、すみ、すみません」
どう言う訳か顔を真っ赤にしてあたふたとしどろもどろになる黒狐。
「大丈夫ですか?お怪我なさったのではないですか?」
更に、セルリアンが黒狐の指に触れると……。
顔は真っ赤なまま、目は白目になり、錯覚ではあるが、黒狐の肉体から魂が抜け出たのが見えた気がした。
「おい、大丈夫か?」
さすがにオレの方が驚いてしまい、今にも後に倒れてしまいそうな黒狐を支えた。
「う……ぎゃ……こ……」
取り乱した黒狐が言葉にならない言葉を発していた。
こんな黒狐も見たことなく……。
セルリアンもおかしい今黒狐もおかしくなってしまったら、どうしていいか分からなくなる。
「おい、黒狐……どうしたんだよ?」
いつもの冷静沈着な黒狐の姿は見る影も無かった。
「シュバルツさまはどうなさったのでしょうか?ベッドで休んでいただいた方がいいのではないでしょうか?」
こんなことセルリアンなら絶対に言うことはあり得ない。
『私とラビルのベッドに寝るだと!お前命が欲しくないと見えた』
こう言うのがいつものセルリアンだ。
一体セルリアンに何があったのか?