神松友香
「神松に直接コンタクトを取ろうかどうするべきか……。しかし、直線話しに言ったところで話すだろうか?間接的に人に聞いた方がいいのだろううか?」
などと言ってたくせに、さすがセルリアンだよな……。
セルリアンって猪突猛進なとこあるよな……。
放課後になった途端に、シブロが神松友香を理事室に連れて来た。
理事室には、オレとセルリアンとシブロの三人がいた。
神松友香は、目が隠れるほど長い前髪。
きちっと縛っている三つ編み。
他の生徒より長いスカートの女子生徒だった。
間違いなく、先日、オレたちの様子を遠くから見ていた女子生徒だった。
「あの……。あの……。何かご用でしょうか?」
神松はこの状況を飲み込めず、どうしていいか全く分からないようでそれだけを聞くのがやっとのようだった。
セルリアンは無言で、スマホのデータをプリントアウトしたものを机に広げて見せた。
机の落書き、ゴミや汚物を入れられた下駄箱。
「これって……」
一体誰が?と言うように、神松は目を瞬かせた。
しかし、すぐに。
「私は……。何もされてません」
きっぱりとした口調だったが、瞳は何か言いたそうに動いていた。
「神松……。私は、お前を救おうとか偽善的なことを言っているのではない。ただ、私の学園にこんな卑劣なことがあるのが許せないだけだ」
え?
こんな言い方でいいのか?
横柄なセルリアンの言い方。
人を救うのではなく、自分のためだと言い切るセルリアン。
しかし、セルリアンの瞳は優しかった。
瞳は、昔、オレと共に過ごしていたあの頃から変わっていない、優しい瞳。
「でも、私は本当に……」
「じゃ、昨日の朝、何で私たちを見てたんだ。本当は助けて欲しかったんじゃないのか?自分のこと気付いて欲しかったんじゃないのか?」
どうしても、いじめのことを話したくない。
それは、本心ではないこと。
セルリアンはちゃんと見抜いてた。
「うっえ、うっえ」
嗚咽を始めて、彼女は泣き出した。
しゃがみこんで、声を出して泣き始めた。
きっと今までずっと一人で我慢していたのだろう?
とめどなく溢れる涙。
「大丈夫。私が大丈夫と言ったら絶対大丈夫だから話してみろ」
そして、セルリアンも腰を落とし、彼女の肩に手を置いた。
神松友香は泣き止むどころか、余計に涙が止まらなくなったようで、オレも腰を落とし、彼女の目の高さに合わせ、
「大丈夫か?」
声を掛けた。
しかし、神松友香と目が合った瞬間、首にビリっと言う衝撃が走った。
「イテテ、イテ」
まさか……。
首を押さえて、セルリアンを見ると、ニヤっと笑うセルリアンがいた。
やっぱり‼
このワッカに仕掛けされてる‼
「だから、他の女を見るなと言ったろう、ラビル」
セルリアンが……怖い。