いじめ
「なぁ、セルリアン、このワッカが昨日より重くなった気がするんだが気のせいか?」
学習室にて、オレはソファーに腰掛け、窓の外を見ているセルリアンに話し掛けた。
気のせいかもしれないが、昨日よりワッカが重くなった気がする。
まさかとは思うが……。
「爆睡しているラビルも本当に可愛いぞ」
な‼やはり何かしたのでは無いか?
慌てて、ワッカに触れてみたが目立った違和感は無い。
しかし、このワッカに何かを仕掛けられたと言う疑念は消えない。
「それはそうと……。シブロ、頼んでいた映像持ってきたか?」
部屋の隅で、鉢植えの花に水をあげていたシブロは首を縦に動かして、ズボンのポケットから、スマホを取り出し、セルリアンの前に持ってきた。
今まであまり目立たなかったシブロだが、昨日の会話から察するに、彼は科学的専門知識の持ち主らしい。
画面には、どこかの教室が写っており、更に一つの勉強机が写っていた。
「これはひどいな」
アップにした勉強机には、サインペンで、たくさんの落書きがしてあった。
『死ね』『消えろ』『ブス』とか、そんな汚い言葉が書かれていた。
「あと、こっちも。」
シブロは画面をスクロールして、もう一枚の写真を見せた。
下駄箱が写っていた写真を、これまたアップにすると、一つだけ、めちゃめちゃに荒らされた下駄箱があった。
あまりにもひどすぎて、ゴミ箱のような下駄箱だった。
「神松はここまでひどいいじめを受けているのに、誰一人として神松を助ける奴はいないのか? 教師たちも黙認なのか?」
セルリアンはイライラした様子で、拳で窓を叩いた。
「みんな面倒なことに関わりあいたくないんだろう。みんな自分のことで精一杯で、自分さえ良ければいい世の中なんだろう」
シブロの言葉にもセルリアンのイライラは消えない。
「彼女が何をしたと言うんだ?首謀者は誰だ?」
それから……。
セルリアンは。
「しかも、今回はこのいじめ解決だけじゃ終らない予感がするんだよな」
そう言って、テーブルの引き出しから飴を探し口に放り投げた。
セルリアン、昨日からそんなこと言ってたな。
何か気かがりなことがあるのだろうか?
「今、シュバルツとゾーラが彼女の様子を伺っている。続きは放課後話そう。今日中に首謀者を見つけ出す」
シブロはセルリアンの話を聞きながら、また鉢植えの花に水を上げ始めた。
そして、目があったオレに一言。
「首輪の調子はどうだい? ラビル」