二人だけの時間はやっぱり…。
「今日こそは誰にも邪魔されずに、二人だけの時間を過ごせるな」
部屋に戻ったセルリアンは、例のごとくオレの前に立ち、オレの体に触れる。
「愛しい愛しいラビル。どうして、お前はそんなに美しいんだ?その銀の髪も、金色の瞳も、全て全て私の物にしたい。全て、私だけの物にしたい」
そして、オレの胸に顔を寄せて目を閉じた。
「ラビル、鼓動が早くなってるぞ」
からかうように言うセルリアンに何も言い返すことができない。
顔が熱い。セルリアンの言う通り、鼓動が早くなり苦しい。
こんなセリフもいつものセルリアンなのだから、いつも通りつっこみつつ返事すればいいのだが、セルリアンの髪がとてもいい匂いがして……。
ずっと前から大好きなセルリアンの香り……。
セルリアンの側はなんて居心地がいいのだろう。
「愛しているぞ、ラビル」
そして、セルリアンは背伸びをしてオレにキスをしてきた。
時間が止まる感覚。
「せ、セルリアン。オレもセルリアンを……」
愛している、と続けようとしたその時。
「セルリアンさまーーーー」
何の前触れも無く、ホアンの高い声とともに部屋のドアが勢いよく開いた。
まぁ、そうくると思ったけど……。
セルリアンの方は案の定、さっきまでの甘い空気から一転して、こっちまで怒りの空気が伝わってくる。
「ホアン……‼」
セルリアンの髪の毛が逆立つほどの怒りが伝わってくる。
空気が震えるとはこう言うことを言うんだな。
ってそんなこと思ってる場合じゃない。
「お、落ち着け、セルリアン。ホアンが何の用も無くここに来る訳ないだろう。何か、た、大切な用事があるはずだ」
オレはセルリアンの前に立ち、落ち着くように説得してみた。
そんなんで、セルリアンが落ち着く訳無いとは分かっていたが……。
「セルリアンさま。さっき話した女の子がまた来てたから、捕まえたよー」
ホアンはセルリアンの空気に気付いていないのか、ドアの向こう側にいる人物の腕を、くいくいと引っ張る。
引っ張られながら、出てきたのは三つ編みをした、おとなしそうな女の子だった。
少女は、こちらの空気に少し気付き、おどおどした様子でホアンに無言の助けを求めていた。
「彼女は、若松さゆり。お姉ちゃんの事で相談があるんだって」
少女の顔を見ながら、セルリアンは、あれ?と言う顔をして、何度も何度も彼女の顔を見てから、
「お前の顔、どこかで見たことあるぞ」
と言った。
「さすが、セルリアンさま。そうです、彼女のお姉様は、セルリアンさまと同じ学校の生徒です」
オレは今朝、オレたちを遠くから見ていた女の顔を思い出した。
もしかしたら、彼女か?
セルリアンは仕方ないと言うように、ホアンと少女を部屋の中に入れた。