またまた学校
「ラビル、朝だぞ」
セルリアンの声がする。
今日はとてもよく眠れた……。
っと。
「セルリアンはいつもこんな寝心地のいい場所で眠ってるんだな」
フカフカのベッドと言うものはとてもよく眠れた。
昨日はあの小さな檻で寝させられたから余計にそう感じるのかも?
うーん、と伸びをしてから、昨日の夜セルリアンと一緒に眠ったことを思い出した。
な‼オレ昨日……。
昔は毎晩体を寄せあって眠っていたのだから…と自分を納得させようとしたが、いやいや、やはり今のセルリアンと一緒に眠ると言うことは……。
しかも、セルリアンにキスした後で……。
何もなかったよな?
昨日は疲れて爆睡だったし。
「ラビル、今日も学校に行くが、昨日と同じくお前はあの教室から一歩も出るな。そして、今日から私があの部屋でお前とずっと一緒にいる。昨日、シブロとゾーラにお前を任せたことに後悔してた」
まだベッドから起きないオレをもうとっくに着替えたセルリアンが、オレの顔をのぞき込み、目をじっと見つめる。
うっ。そんなに見られると鼓動が高鳴る。
オレのドキマギとした表情を見て、セルリアンは嬉しそうな顔をして、
「お前が現れてお前と過ごすうちに、ますますお前のことを好きになっていく。もう片時もお前を離したくない」
オレの頬に触れるセルリアンの手の熱が伝わってくる。
「おいおい、早くオレっちを出してくれよ」
瓶の中の小人の声にセルリアンは舌打ちをしてから白い壁にかかっている時計を見た。
「取り合えず学校に行かないとだな。ラビル、用意しろ」
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「と言うことだ。小人の事はシュバルツお前に任せたぞ」
学園に向かいながら、セルリアンは昨日の部屋での一部始終を黒狐に話し、瓶を渡した。
「それで、お前が契約書を書かせると決輪を出したのなら、また私のとこに持ってきてくれ。私にその小人の処分は決められない……」
黒狐は黙ったまま瓶を受け取り、鞄にしまった。
「甘いわねぇ、セルリアンちゃん。その小人の100年と自分の1000年を重ね合わせちゃったのかしらぁ?」
金狐の言葉にセルリアンは明らかに表情を変え、何か言いたかったのだろうが、うまい言葉が見付からず助けを求めるような視線をオレに送った。
だけど……、オレには何て言っていいのか分からず、言葉を探してると、変わりに黒狐が答えた。
「ゾーラ、誰のお陰で命があると思ってる?口の聞き方には注意するんだな」
邪魔そうな前髪の間に見える黒狐の目は、野生の獣の目そのものだった。
はいはい、と言うように肩をすくめてそれからゾーラは無言で歩いていた。