ここはどこだ?
「ねぇ、ママ見てー、この人の格好とってもおかしいよぉー」
「カケル、見ちゃダメよ」
「ホームレスかな?」
「ホームレスにしちゃー、キレイな顔してるな。女みてーにキレーな顔した兄ちゃんだなー」
たくさんの声がする。
何か騒がしいな。
目を開けたオレが見た世界は……。
見たことの無い格好をした、人間たちがオレの事を見下ろしていた。
は?オレは?どこに?
「ママー、この人、死んで無かったよ」
一人の子供がオレを指差して笑っていた。
あ? 何だ、こいつ?
「おい、ガキ、食っちまうぞ」
ギッと睨みつけ、威嚇してみせた。
しかし、
「へーんなの」
オレを囲ってる全ての人間たちに大笑いされた。
おい、オレはそれなりに名を馳せてきた盗賊妖狐だぞ。
いつの間に雨止んだんだ?
と言うか、体が重い。
あー、怪我してたからか?
かなりひどい傷を負わされたからな……。
ん? オレ、どこにも怪我してない。
ガバっと立ち上がり、体の隅々までくまなく見てみる。
尻尾が無い!
慌てて頭に触れると、耳も無い。
二足歩行でいる時も、尻尾と耳が消えることは無かったのに。
「おい、ガキ、ここはどこだ?」
「お兄さん、大丈夫?ここはトーキョーだよ」
トーキョー?
知らない言葉だ。
と言うか、オレは、もう死んだと思うぐらいの深い傷を負わされたいたのに。
ふと、首に見たことのないネックレスがついていることに気付いた。
どこまでも透き通るようなネオンブルーの花びら型の石。
何だ? これ?
くそ、取れねー。
オレの服装は変わらない、黒のシャツの上に真っ白の戦闘服。
髪の長さも変わらない。
腰までの銀色の髪の毛。
意味が分からない。
それなのに……。
オレは全神経を集中させて、天狐に戻ろうとしたが……、いつまでたっても姿が変わらない。
オレは……。一体……。
次の瞬間。
嗅ぎ覚えのある匂いを感じた。
これは……。間違いなくセルリアンの匂いだ。
セルリアン。
オレはその匂いの元に行こうと走り出した。
走り……出した。
暑い、イテ。
何だこの地面、両手に熱が伝わって、あまりの暑さに手を地面から離してしまった。
手が赤い……。
「ママー、あの人4本足で走ってた」
「だから、見ちゃダメだって言ってるでしょう」
明らかな悪口を言われていたが、今のオレはそれどころじゃ無かった。
ここは一体どこなんだ?
オレの体はどうなっちまったんだ?