盗人小人
「その日、ユリカちゃんは……」
ホアンがユリカちゃんに聞いた通りに話始めた。
---------私の最近の悩みは、ママの大切な指輪を自分の部屋に隠していること。
きっと、ママにバレたらすごく怒られるって分かってるけど、もう少しもう少しだけ自分の近くに置いておきたいの。
明日、うん、明日には返そう。
だから、今日は机の上のアクセサリートレイに置いてる指輪をなるべくベッドの近くに置いてみた。
電気を消したらきっと見えないけど、カーテンを開けて眠れば、月明かりに輝いている指輪が見えるから。
そして、私は眠った。
どのぐらい眠っていたんだろう?
トイレに行きたくて、目が覚めてしまった。
でも……。
夜中のトイレは怖くて行きたくない……。
布団の中でもじもじしてたら、机の上で何かが動いているのが見えた。
何だろう?
虫? 虫にしては大きすぎる。
ねずみ? ねずみにしては形がおかしい。
そっと目をこらして見てみる。
「あ」
思わず声を上げてしまった。
すると、そのガサガサ動いていた物体はこっちを見た。
目が合った。確かに目が合った。
まるっきり人の姿をしているその物体と目が合った。
人間? いや、こんな小さな人間がいるはずがない。
小人?
でも、絵本とかで見る小人とは何か違う。
可愛くない‼
可愛くないと言うか恐怖さえ感じる。
怖くて目が反らせない。
その小人は、ママの指輪を抱えてにやっと笑ったの。
ダメ、その指輪に触らないで。
それは、ママの大切な指輪なの。
明日には返すって決めてたの。
お願い、元の場所に戻して。
だけど、そんな願いは空しく、小人はその指輪を抱えて姿を消してしまった……。
「と言うことです。皆さん、分かりましたか?」
ホアンが話終わる頃には、セルリアンは、完全に飽きてオレの肩に凭れかかってコクりコクりと今にも眠ってしまいそうだった。
「セルリアン?」
オレが声を掛けると、半開きの目のままオレを見上げた。
トクン、胸がドキドキした。
セルリアンはやっぱり可愛かった。
「ああ、ラビル。消えてなくて良かった。大好きだ。次、お前が私の前から消えたらきっと私は生きていけない。だから、その前にお前を殺して私も死のう」
相変わらずセルリアンの言ってる意味がよく分からない。
愛の告白だと言うことは分かるが、素直に喜ぶことのできない愛の告白で…。
と言うか恐怖を感じる愛の告白なんて初めてだ。
それでも、自分の命を捨ててまでオレのことを好きと言うことだろう。
ゴホンと赤狐が咳払いをして話始めた。
「取り合えず、この小人を誘き出すために、盗まれた指輪と全く同じ指輪を用意した。そして、ユリカちゃんの部屋と同じような作りの部屋を、マンションの一室に用意したので、そこのベッドでホアンに眠ったふりをしてもらう。その間、オレと天狐とセルリアンはクローゼットに隠れて様子を伺う」
「そんなんで、小人現れるのか?」
「以前捕獲した盗人小人も、同じようなパターンで現れた、今回も間違いなく現れるはず。」
本当か? 本当なのか?
しかも、このセルリアンが何でこんな依頼を引き受けるのか?
まだまだ分からない事が多すぎる。