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依頼

セルリアンたちの住むマンションの横には、小さな小さなお社があった。

そこに暮らしているのが……。


「そう、僕ホアン。」

お社の中は、ひんやりしていて気持ちが良かった。

ホアンとセルリアンとオレの三人はお社の中で、各々好きな体制で座っている中で、小狐が自己紹介を初めていた。

「僕はね、ここで様々な人の依頼を聞くのが仕事なの。依頼を受けたら、セルリアンさまに報告するのが僕の役割り。ねっ、セルリアンさま」

ホアンは、セルリアンに体をくっつけた。

その仕草は、大好きなご主人様に尻尾をブンブンと振り続ける仔犬のようだった。

「依頼って何だよ?」

「そう来ると思った。」

ホアンは今度オレの側に近付き、ニコッと人懐っこい笑顔を見せた。

「人々の悩み、苦情、何でも引き受けるよ。いわゆる何でも屋さ」

「……」

「ちなみに、今日の依頼は、このマンションの住人、二階に住む亀井ユリカちゃん10才の女の子からの依頼だよ」

ホアンは、お社の中央に置いてあるホワイトボードに文字……、いや、文字らしきものを書き始めた。

「ユリカちゃんのママはとてもお洒落でたくさんの宝石を持っていて、ユリカちゃんはいつも羨ましく思っていました。そして、いけないと分かっていながら、一番大きな石のついていた指輪を一つ自分の部屋に持っていってしまったのです。いつか返そう必ず返そうと思って毎日毎日自分の指にはめて眺めるのがユリカちゃんの楽しみでした」

一つの物語のように語るホアンの話を聞いていたら、眠くなってきた。

一日中寝てたはずのセルリアンも眠そうにうとうとしていた。

おいおい、いつもこんなので依頼なんか務まるのか?

と思っていたのが伝わったのか、セルリアンがホアンの話の腰を折った。


「ホアン、お前の話はいつも長すぎて毎回飽きるわ。どうせ、その指輪を無くしたから探して欲しいとかそんな内容でしょう?」

途中で話を中断されたホアンは不満気に唇を尖らせた。

「確かに。その指輪を見付けて欲しいと言うのも依頼の一つだけど、ユリカちゃんはその指輪を取られたと言っているのです。しかも、ユリカちゃんは、その犯人を見ていると断言しているのです。その犯人は……」

ホアンはそこで言葉を止め、じっとセルリアンの顔を見た。

「誰だか分かりますか?勘のいいセルリアンさまならお分かりですよね? ヒントは、ユリカちゃんはその指輪をいつも机の上のアクセサリートレイに置いていて、いつも部屋には鍵をかけているのにも関わらず、その者は指輪をとることができた。ユリカちゃんはその犯人の姿をはっきりと見たのに、驚いて捕まえることができなかった。さぁ、一体犯人は誰でしょう?」 

さっき、途中で話を止められたの相当面白く無かったのだろう。

ホアンは意地悪そうな笑顔を見せた。

セルリアンはしばらく、空を見ていて、にやりと笑った。


「盗人小人だ」

ホアンは、深いため息を吐いた。

ちぇ、つまんないの。

と、ホアンの心の声が聞こえてきそうだった。


「さすが、セルリアンだな。勘が鋭いぜ」


オレたち三人しかいないと思っていたお社に男の子の声がした。




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