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理事長室にて

「ここが、理事室だ。ラビル、お前は隣の部屋にある特別学習室があるからそこでここでの暮らしを学んでおけ」

セルリアンと共に入った部屋は、これまたキレイに整えられた殺風景な部屋だった。

セルリアンは、そこの一番奥の机で山積みになっていた書類に目を通してから深々とため息を吐いた。

「新しい部の申請とか、顧問が役にたたないとか、下らないことばかり……。私は昨日眠ってないので頭が働かん。黒嶺、お前に全て任せる。私はそこのソファーで仮眠することにする」

そう、部屋に入ってきたのはオレたち二人だけじゃなかった。

何故かオレを毛嫌いしてる感じの黒狐も一緒だった。

「畏まりました。午前中に仕上げておきますので、セルリアンさまは安心してお休みください」

そう言って備え付けられているクローゼットから、黒いブランケットを取り出し、既に横になっていたセルリアンに掛けた。


「あ、そうそう、ラビルお前がこの世界で困らないように、ここでの暮らしを教える教育係は学習室にいるから、今日一日で完璧にここの世界で暮らせるようにしとけよ」

教育係?

オレにそんなものがつくのか?

「今日一日でしっかり学んで、少なくともセルリアンさまの迷惑になるような行動だけは起こさないように」

書類に目を通しながら、冷たい声で言う黒狐に少しイラっとしたが、それよりも……。

「セルリアン、お前はこの黒狐と二人きりでここにいるのか?」

オレには他の女を見るなとか色々言ってきたくせに、自分は黒狐と二人きり。

おまけに、無防備に眠るとか……。

セルリアンからの返事が無い変わりに、黒狐が冷たい声を出す。

「嫉妬か?天狐。お前がいない間、セルリアンさまと共に過ごしてきたのはこのオレだぞ。今さら、何を言ってる?」

セルリアンはもう爆睡してしまったようで、変わりに黒狐が続ける。

「分かるか?セルリアンさまはお疲れなんだ。そんなお疲れのセルリアンさまにこれ以上負担をかけるな」

マジ何なんだ、こいつ?

「お前はさっさと勉強してこい」 

吐き捨てるように言う黒狐にさすがに頭にきて、オレは黒狐の胸ぐらを掴んだ。

「セルリアンさまがこの1000年、どんな想いでお前を待っていたのか分かるか? お前のいない1000年、セルリアンさまのお側でセルリアンさまを守っていたのはこのオレだ。そんなお前には何も言う資格なんてない」

セルリアンの過ごした1000年。

オレには想像もつかない。

どうして。そんなことになってしまったのかも分からない。

だけど。

オレは爆睡しているセルリアンの左頬の傷に軽く触れてみた。

「……。オレはセルリアンと1000年共に過ごしてきた訳じゃないが、もし、オレが1000年セルリアンの側にいることができたら全力でセルリアンを守り、こんなケガもさせない。セルリアンが望むことの全てを叶えてやってた」

どうして、こんなにも長い間彼女を一人にしてしまったのだろう?

「軽々しくその傷に触れるな」

黒狐はオレの手をはね、侮蔑した。

「天狐、今のお前じゃ何を言っても説得力がない。今のお前ができることはセルリアンさまに迷惑をかけないようにすることただそれだけだ」


今のオレにできること。

この世界でセルリアンと共に暮らすには、悔しいが黒狐の言う通りここの世界に順応するしかない。







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