一人じゃなかった
「セルリアンに出会えたからオレちんはここにいる。だけど、いつも思ってる。本当にこんな風に当たり前に立ってていいのか?と。おれちんのした事は決して許される事じゃ無い。血に染まったこの手はいつまで経ってもあの日の事を忘れさせてくれない」
ブレットは自分の手の平をぎゅっと握りながら言い、セルリアンをじっと見つめた、セルリアンはと言うとどこに向けていいのか分からなかった視線を窓の外に見遣った。
セルリアンが視線を外すのさえ珍しい事なのに更に口をつぐむと言う事も滅多に無い事だったので、しばらく誰も口を開かず、沈黙の室内の中、強い日差しの太陽がジリジリと音を立て窓に降り注いでいた。
ブレットの切実な言葉を聞きながらオレは初めて見るセルリアンの表情に余計に不安心が湧いてきた。
セルリアンはキュット唇を噛み、憂いを帯びた瞳から哀しみが伝わってきた。
精神も何もかもボロボロになってしまい一人きりになったブレット。
セルリアンはそのようになったモノを放っておけるような女性では無い。
ブレットの側に寄り添うセルリアンの姿が想像できる。
九十九の言っている元カレと言う単語。
今はそんな事考えてる場合では無いのに。
ブレットは更に語気を強め続けた。
「死して償えるのかと問われたらそんな事は無いと応える。では、おれちんに与えられた贖罪は?どうしたらこの罪から救われる事ができるか?」
分からない、分からないままただ生きていた。
「おれちんが落ち着くまでずっと側にいてくれたのはセルリアンだった」
その内眠っていた黒小イタチが目を覚まし、残りの2匹と遊び始めた。人間の姿になったもののうちのホアンと同じで尻尾が隠しきれていない。小イタチの一匹がスンスンと鼻を動かしてセルリアンに近付いた。
「オレこの匂い好き!」
子供らしく無邪気な声でキャキャと笑った。
その小イタチに刺激されたのか。
「え?本当?うちもかぎたい!」
「僕もクンクンしたい!」
と、教卓で寝そべっていた2匹のイタチ達もぴょんぴょんとセルリアンの足元に潜り込み同じくスンスンし始めた。
「おい、やめろ、くすぐったい」
言葉とは裏腹に柔らかい表情で小イタチの頭を撫でた。
「お前達がブレットを支えてくれていたんだな」
「僕達ね、ブレットから貴女の話しずっと聞いてたから会いたかった」
「ブレットを助けてくれてありがとう」
セルリアンは女の子の姿をした白小イタチを抱えあげオデコにキスをした。
白イタチは驚いたように大きなグリーンの目をパチパチさせていた。
「ブレット、お前はもう一人じゃないんだな」
セルリアンの言葉にブレットの瞳から涙が溢れ落ちた。