雪山の探索
休憩を終えて、俺たちは再びこの雪山に戻ってきていた。相変わらず雪が降っていて、視界が悪い。
「とりあえず、元気は満タンだし、進もうよ」
セガハナの提案を受け入れて、皆が彼女についていった。
雪山なだけあって、急に地面が途切れていたり、登れないような急な斜面があったりで、遠回りせざるをえない状況で、頂上に着くまでに時間がかかりそうだった。高所に行けば行くほど雪が酷くなっていて、さらにその上敵まで出てくるのだから、時間は更にかかっていた。
「休憩したのに、もう疲れてきたよ」
ユーハが肩を落としてそう言っていた。
「俺が運ぼうか」
タケシシがそんな提案をする。どうやら先ほどの休憩時間の間にかなり仲良くなっているようだった。
「いやいや、さすがにそれはないよ。私はそこまで子供じゃないって!」
それから、彼女たちの会話を聞きながら、俺たちは頂上を目指した。
そろそろ頂上付近かもしれない。理由としては、斜面の傾斜が急な場所が多く、緩いと言っても登るのが大変になっているから、降雪量がかなりの量ということ。しかし、敵は一向に出てこなくなった。もしかすると頂上付近には敵がいないのかもしれない。ボスだけ出現する、そんなフィールドなのだろう。
「あ」
セガハナが何かを見つけたのか、そんな音を発した。
「もしかして、あれボスじゃない?」
彼女が指し示す方向には大きな影があった。雪の中でもわかるほどだから近いのだろう。
「行ってみよう」
彼女がそう言ってその影に近づいていくので、俺たちはそれに続いた。
その影に近づくにつれて、その黒い影に色がついていく。グレーの体毛に、筋肉で太くなった身体。その顔はゴリラのようだが、怒っているような顔をしていた。そいつは腕を振り上げたり、何かを避けるような動作をしていた。
「セガハナ、戦闘中かもしれない。気を付けていこう」
彼女は頷いた。
果たして、そこには着物の剣士がいた。手に持っているのは、少し反った形の刃が付いた剣だ。つまり、刀のようなものなのだろう。その剣士はゴリラみたいな敵を圧倒していた。敵の攻撃を余裕をもって避け、その隙をついて、攻撃を何度も当てる。敵の体力が見えていたなら、その減りの速さは相当なものだと思う。剣士は俺たちの方に一瞬視線を向けたが、特に何もせずに戦闘に戻る。ダメージを負わせ続けて、敵が攻撃パターンを変え、その両腕をむやみやたらと振り回す。足を上げて、雪を蹴り上げる。しかし、そんなことは些事だとでも言うように、その余裕のある姿勢を崩すことはなかった。時間も経たないうちに、ゴリラは消滅した。
剣士は倒したゴリラに一瞥もくれず、俺たちの方に歩いてきた。そして、先頭を歩いていたセガハナの前に立った。
「君たちが一番早いチームだね。でも、残念ながら僕がこのフィールドのエリアボスを倒しちゃったけどね。でも、君たちが戦うほどでもなかったかも。なんたって、僕一人でも倒せたし」
嫌味のように剣士は言う。近くで見るとどうやら女性のように見える。顔は中性的だから、いまいち各省が持てないのだが。
「まぁ、僕は次のフィールドに行くよ。多分、β版ではそこが最後のフィールドだろうからね。それじゃ、さよなら」
彼女は手をひらひらと振って、雪の中に消えていった。
「何なんでしょうかね、あれ! 全く常識ってものがないんじゃないでしょうか。あまりに失礼でしょう!」デアンカが彼女に怒っていた。
彼も最初に出会ったときはあんな感じだった気がするが、まぁ、今はそんな印象を一つも受けないし、突っ込みはしないでおこう。
「今のがエリアボスってことは頂上が最終フィールドってこと?」
セガハナはすでに彼の事は考えていなかった。
「そうなら、早く行こう!」
彼女は誰の返事を聞くことなく走り出した。全く本当に負けず嫌いだな。そう思いながらも、俺たちは彼女の走っていった方向に走り出した。
次のフィールドは案外近くにあった。それはそうか。頂上付近でエリアボスが出たのだから、少し上に行けば、頂上なのは当たり前なのだろう。
最終フィールドの雪山の頂上は大した広さを持っていなかった。そのせいで、俺たちは衝撃的な場面を見てしまった。
エリアボスは翼をもたないドラゴンだった。赤い鱗を全身に張り付けて、何者の攻撃も通さないような強固さがありそうで、顔は威圧的な目と大きな口が特徴的だ。そして、そのドラゴンの尾は長く、ひと振りすれば、このフィールド全体を薙ぐことだってできるだろう。
そして、その紅いドラゴンと戦っているのは、先ほど会った剣士だった。剣士の刀はほとんどダメージを負わせているようには見えない。それどころか、剣士が押されてるという印象がある。彼女自身は攻撃を躱してはいるが攻撃に転ずることができていない。よく見ると刀の刃の部分がボロボロになっているようだ。あれではドラゴンどころかコボルトにも大した傷を負わせられない。
そして、その勝負にはあっけなく勝敗がついてしまった。ドラゴンの爪の攻撃を躱すため、剣士は上に横に飛んでしまった。彼女が飛んだのはドラゴンの口の前だ。これぞ好機と言わんばかりに、ドラゴンは口を大きく開けて、剣士をその大顎でかみ砕いた。彼女の体力は一瞬にしてゼロとなり、その場から消えたのだ。あの剣捌きでも全く歯が立たなかったということなのだろう。それはあまりに強すぎる気がする。しかし、この程度で諦めるものはこのメンバーの中にはいない。
「さぁ、皆! 私たちの番だよ! ラストボス、倒しちゃおー!」
「「「「おー!」」」」
その声に反応しているのか、ドラゴンの顔はこちらに向いた。
続く




