デアンカVS白き大蛇
ついに大蛇が動き出した。体をばねにかなりの速さで飛んでくる。デアンカは両手で持つ大剣をただ、蛇の通るであろう位置に刃を蛇に向けて横に構えた。
彼の予想通り、蛇は大剣に当たった。しかし、彼自身がその勢いに耐えられず、剣ごと後ろに吹き飛ばされた。
「デア、やっぱり私も戦う」
「いや、ここは任せてもらえないでしょうか。セガハナさんとララさんに会ったときに僕は自分の弱さを克服するために戦うと言いました。今、それを試したいんです。どこまで僕が強くなれたのか。皆さんと一緒に戦って、蛇一匹も倒せないようじゃ、成長できたと思えません。なので、ここは僕だけにやらせてください」
彼はその言葉と共に後ろにいた蛇に大剣の切っ先を向けた。
「……わかった。今はデアに任せる。でも、少しでも危ないと思ったら、勝手に助けるからね」
セガハナはそう言うと、もう口は開かなかった。
大蛇は彼の戦意を感じ取ったのか、またも体をばねにして、突撃した。しかし、そう何度も同じ手を食う彼ではなかった。蛇の攻撃を躱し、すれ違いざまに大剣の刃を蛇の体に当てた。彼が力を入れなくても、蛇の突進力だけで、相当な勢いがついている。そのおかげで、刃を当てるだけで、蛇に傷を負わせることができていた。蛇はそれを判っているのかいないのか、地面に着くとすぐに方向転換して、彼に向かってまたもや突撃をかました。その挙動はすでに彼は体験していた。今度は蛇の進路上に立って、大剣と共に高く飛んだ。
「ファレンシュベルト!」
落下と共に大剣を地面に叩きつけるように、振り下ろす。大剣の重さに落下の力が加わり、地面の雪が視界を隠すように舞った。そして、ドスンと音がしてさらに雪が舞う。俺たちの位置から、彼らはもうほとんど見えなくなった。
「どうなったんだ」
タケシシがそう呟いた。俺も同じ心境ではある。彼の技は確実に当たっていたし、あのダメージなら倒していても、不思議ではない。しかし、そう簡単にことは進まなかったようだ。
雪の中からデアンカが吹っ飛んできたのだ。
彼は幸い、足を地面について、着地した。雪で滑りながらも、バランスを取り、何とか体勢を立て直した。雪の中から追撃を狙って、蛇も飛んできた。彼は剣の面を蛇に向けて、防御の姿勢をとる。しかし、完全に防御できる攻撃ではなかった。彼は剣の後を残しながら、後ろに滑っていく。なんとか止まるも、膝をついてしまっていた。
「セガハナ、援護するぞ。これ以上戦わせられないだろう」
「いや、ちょっと待ってあげて。もし次にダメージを負うことがあったら助けるから」
俺は納得はしないものの、彼女の意見に従った。
彼は立ち上がっていた。しかし、蛇は次の攻撃を開始している。大きな尾を彼に向かって、振り下ろそうと近づいている。
「とにかく、勝ちたい。それだけなんだ。成長してるって、少しは強くなってるって。それを見てもらいたいんだ。だから、だからっ!」
彼は大剣を地面に切っ先を滑らせながら、蛇に突撃していった。
もしかして、やけになったのか。
そう思った次の瞬間、彼は尾を振り下ろそうと体勢を変えた蛇の胴を狙って、その剣を横に薙ぐ。その勢いを保ったまま、さらに腕の力で上から下に振り下ろす。そして、地面に着く前に剣を引き、切っ先を蛇に向けて、思いっきり腕を伸ばした。彼の体験は見事、蛇の胴を貫いた。
「クレッツポーケっ」
その一撃に蛇は振り上げた尾を下すことなく散った。
「少しは成長したでしょう!」
消えていく蛇に向かって、決め台詞を叫んでいた。
全員が茫然としていた。彼が最後に逆転の必殺技を放ったのだ。そして、見事大蛇を倒した。疑っていたわけではないのだが、ただ、あの巨大な蛇を一人で倒すことができたというその事実が、今の状態を作り上げていたのだと思う。
俺たちが茫然としているとデアンカが笑顔でこちらに寄ってきた。
「すごいじゃん! まさかほんとに一人で倒しちゃうなんて」
ユーハが傷薬をデアンカに渡しながら、褒め称えていた。
俺たちもそれにつられるように、彼を称賛した。そして、彼はより一層笑顔になる。
ボスを倒して、休憩してから、俺たちは次のフィールドに向かっていた。次のフィールドは案外近くにあった。もしかすると、蛇と戦ったあの場所ではすぐに会えるようになっていたのかもしれない。まぁ、今は倒した後なので、特に気にすることでもない。
次のフィールドは雪山だった。先ほどよりも雪が酷く、視界の悪さは先ほどとは比べ物にならないくらい悪い。
「ひどい雪ですね。こうも視界が悪くては戦うどころの話しではなさそうですが」
「それでも敵は出てくるよ、多分。さっきのフィールドみたいな場所じゃなきゃね」
そう言うと、セガハナは歩き出した。それについていくように俺たちも歩き出した。
先ほどとは打って変わって、俺たちの目の前には次々と敵が現れていた。倒しても倒しても、すぐにスポーンするため、見た目には敵が少なく見えるというのに、大軍と戦っているような感覚に、それぞれが疲れを見せていた。終わりが見えない戦いというのに参っているのだ。それにユーハも敵を倒し続けているためホットドリンクや傷薬の供給ができない。ユーハの代わりに敵を引き受けることができる奴はいないのだ。全員が自分の敵で精いっぱいの状況だ。
それでも、何体も何体も倒しているうちに敵は少なくなっていっているようだった。何かのイベントが発生していたのかもしれない。
「皆、もう少しだと思うから、頑張ろう!」
セガハナの掛け声に皆が頷いて返した。
本当にあと少しだったらしく。俺が三体の敵を倒している間に、他の人の戦闘も終わっていた。
「さすがに疲れた。そもそも一対一の接近戦には向いてないだよね。このアイテム袋は」
いつもは元気なユーハも膝に手をついて、愚痴を零していた。
「一旦町に帰ろうか。少し休憩しよう。ここまでずっと休憩らしい休憩はしてなかったからな」
俺が提案すると、セガハナが少し考えているようだった。確かに今回でクリアまで行こうと話していただけあって、彼女にとって街に戻るというのはあまり取りたくない策なのかもしれないが、俺としては一度ここでしっかりと休憩することによって、皆がうまく動くことができると思ったからなのだ。休憩しないと疲れのせいで、うまく戦えないということになりかねない。それでは早くクリアできるものもできないだろう。
「ううん。じゃ、いったん戻ろう。休憩してからまたここに来よう」
俺たちはゲーナッハハウゼを使って、ここに戻れるようにしてから町に戻ったのだった。
続く




