白銀の世界
扉の先を進んでレンガの道の先には扉があった。今回のものは何かの鍵がかかっているわけではなく、素手で押すだけでよさそうだ。
「私は触らないからね」
ユーハは巨人のダンジョンでのことがあったからか、両手を胸の位置まで挙げてそう言っていた。まぁ、仕方ない。
「じゃ、開けるよ」
セガハナが俺たちを見て、その扉に手を掛け力を込めて押した。
扉の外は一面の白が支配していた。それに空から白いふわふわしたものが降ってきていた。
「おぉ、綺麗な景色ですね!」
デアンカが待ちきれなくなって、外に出た。俺たちもそれに続いて外に出た。
「確かにすごいね。クリスマスとかだったら、ロマンティックなんだけど」セガハナは笑っていた。
「少し視界が悪くなる。気を付けないといけない」
「そう言う野暮は言うもんじゃない」
俺も含めて、皆がはしゃいでいた。しばらくその場所で雪を堪能した後、先に進むことにした。
それにしても敵がどこから来るのか全く分からないというこの状況は少し怖い。視界がほとんど見えないというほど雪が降っているわけではないのだが、それでも戦闘を行う上で視界が少しでも遮られるというのは困る。この場所は早く抜けたい。このフィールドのボスはどこにいるのか、それにまた一向にボスではなくても敵が出てこない。俺たちが巨人を倒した後に他のプレイヤーがこのフィールドまで来たのか。しかし、そんなはずはない。と思う。なぜなら巨人の内部に行かなくては、あの扉を開けないはずだ。それ以外の方法がないとは言い切れないが、そんないくつもフィールドをクリアできる要素を詰め込んでいるとは考えにくい。何せこのゲームはβ版だ。それなのにいくつも攻略方法を作っているとは思えない。というわけでもしかすると他の何か罠や仕掛けがこのフィールドにはあるのだろう。もしかすると扉を出てすぐには敵が出てこないのかもしれない。とにかくもう少し歩いてみるしかない。
「雪って綺麗だと思ってたけど、こうずっと続くと飽きるし歩きづらいんだね。現実で雪が降る地域は大変なのかもね」セガハナが雪を踏みしめながらそう言った。
「ああ、確かに辛い。特に雪かきしなくてはいけないのだがそれが特に大変なんだ」
どうやらタケシシは雪が降る地方の出身らしい。
そんな雑談を交えて、俺たちは白に染まっている世界を歩いていた。
あの扉からどれくらい離れただろうか。結構歩いたと思うのだが、それでも枯れた木ぐらいしか見当たらない。それ以外はすべて雪だ。さすがにおかしいと思ったのか、それぞれが何かを考えているように眉を寄せていた。やはり、何か仕掛けがあるのだろう。
「あー、もう。いい加減なんか起きないと詰まんないよ! ゲームじゃない!」
ユーハがしびれを切らして、大声を上げた。
そのとき、俺たちの前を何かが通った。枯れ木を渡るようにして、何かが横切ったのだ。
「今、なんかいたよね。ララも見たでしょ」
「ああ、結構な速度で俺たちの前を横切ったと思う」
それぞれ視線を合わせた。
「追いかけようよ! もうあれがこのフィールドの何かに関係してるんだよ!」
ユーハは退屈していたせいか、今の奴を追いかけることしか考えていないようだった。俺はそれに賛成した。今はあれぐらいしか、次のフィールドに行けるような手掛かりがないのだ。
「よし、じゃ、行こう。私もあれを追いかけるのが良いと思うし」
セガハナがそう声をかけて、今の生物(?)を追いかけることにした。
「そうは言っても、あの速度で移動してたら、すぐには追い付けそうもないぞ」
追いかけながら、あれに追いつく手段を考える。すぐに思いついたのは、このメンバーであれの行く手を遮って追い込むことだが、そうするにしても、あいつを見つけないことには始まらない。
「とにかく追いかけるんだよ」
「そうは言っても、今の敵がそのまま直進しているとは限りません。このまま追いかけても上手くいかないと思うんですが」
デアンカが大きな盾を大きく揺らしながらそう言っていた。確かにその通りだ。
「そうかな。じゃ、もう少し走って見つからなかったら他に案がないか考えよう」
その言葉通り少しだけ走ったが、手掛かりとしては木に積もっていた雪が少し落ちているという程度、つまり、どこをどう通ったのかというのはわかるが、しかし、それでも奴の方が足が速く追い付けないということだ。
「どうしようか。他の敵が見つからないのも変だと思うんだけど」
「そう言われてもどうすることも出来なさそうなのだが。あれは早すぎて追い付けない」
皆も同じような結論にたどり着いているらしい。
「仕方ない。とりあえず、もしかしたら他のイベントがあるのかもしれないから次のフィールドに向かうように進もう」
セガハナがの提案に皆が頷いた。
続きます




