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魔術とペテン

いつもありがとうございます!

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 こうしてウィルは順調に、そして不純に勝ち進んだ。決勝戦で歴戦のムンク老師を幻術にかけて土俵から追い出した所で、あまりにも呆気なくウィルの優勝は決まった。


「よし、これで賞金も貰ったし、今夜は飲み明かすぞ」

「そうはさせないぜ」


 初戦でドラゴンを召喚した金髪の美男、ハンメルが立ち塞がった。

「あんな卑怯な勝ち方をされて黙っていられるか。どんな手を使ったのか白状しろ。このイカサマ野郎」

 ウィルが答える前に、ヘンリーはいつの間にか美女のリリーの姿になり、媚びた笑みを浮かべた。

「あの、出来るだけ穏便に解決していただけませんこと? 私からもお願いしますわ」

「ほう、いい女じゃねぇか。でもそれは出来ない相談だな。後で可愛がってやるからそこで待ってろ」

「そいつでいいなら持っていってくれて構わないぞ。今夜の宿ももう取れたからな」

「そんな、ウィル様」

 リリーは悲しげな表情を作った。


「俺は確かにキレイな勝ち方なんてしてないが、今回は宿代が稼げから文句はないぞ。大体魔術なんて、俺みたいな凡人が努力してたどり着いたものを一編に吹き飛ばしてしまう、イカサマみたいなものだろ?」

「何だと? 俺がいつイカサマを働いたって言うんだ。お前みたいな奴に負けたなんて、もう面子が台無しだ」

 ハンメルはウィルを睨み付けた。ウィルは言った。

「一応聞くが、お前は金が欲しい訳じゃないんだな?」

「ああ、1000枚なんてはした金、そもそも興味はない。お前にやってもいいくらいだ」

「まあ、ハンメルさんはお金持ちでいらっしゃるのね!」

 リリーは感嘆したが、ウィルの冷たい視線に気付き、赤い舌をぺろり、と出した。

「賞金は要らないが名誉を回復したい、と言うんだな? じゃあ話は簡単だ」

 ウィルはぼそぼそと何事かを呟いた。そして突然大きな声で叫んだ。

「皆さん! 先程の大会で優勝したのはハンメルですが、彼は俺を憐れんで賞金をくれました。なんて素晴らしいことでしょう」

 そのとたん、村人が急にハンメルの元に集まりはじめた。

「先程の勝負、素晴らしかったですわ、サインください!」

「賞金を貧乏魔術師にやるなんて、心が広いんだなあ、流石だ」

 ハンメルは唖然とした。

「おい、何をした。またイカサマか?」

「まあ、そうだな」


 ウィルは事も無げに言った。

「村人に幻術をかけたんだ。これでお前の望み通りになったし、金は俺のものだ。じゃあな」

 そしてリリーに声をかけた。

「お前はそいつと一緒がいいんだろ、可愛がってもらえよ」

「そんな、待ってくださいウィル様!」


 そんな彼らの一部始終を物陰から一人の老人が見つめていた。

「幻術使いか、面白い奴じゃ」

 そして老人は杖を一振りし、音も無く虚空に消えた。



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