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大博打

いつも読んでくださってありがとうございます。

感想、ご指摘など励みになりますので、一言でもよろしくお願いいたします‼


何と!送り出したのに路銀を持たせないアイリスさん。

私がウィルならぶちギレてますね。

ないなら稼ぐしかないのです。お金は大事だよねって話。アイリス嬢はドSです。

「ああ、旅と行っても女魔術師を見つけずに帰ればまた牢屋行き。これじゃ追放と変わらない」

 リリーはまた美女の姿になり慰めた。

「でも、見つければ報酬はいくらでも、というのですから悪い話じゃないでしょう?」

それでも男の気は晴れなかった。

「見つけるまでは一文無しだ。この荷物の中に、金が入ってないなんて。今夜の宿はどうすりゃいいんだ」


 ここは見知らぬ村で、顔の聞く宿屋もない。ウィルが途方にくれていると、一人の村の子供が走りよってきた。

「ねえ、お兄さんたちも魔術師の人?」

 ウィルは一瞬戸惑ったが、気を取り直して答えた。

「ああ。俺は修業のために旅をしている、ウィル・ヤンセンだ」

隣をみれば、既にリリーはウィルと年格好の似た青年に姿を変えていた。ご丁寧に杖まで持っている。

「僕はヘンリー・ザックだ」

 純朴そうな子供は二人を憧れの目で見た。ウィルは気恥ずかしかったが、顔に表さないように耐えた。


「二人とも、今日ある魔術大会のために来たんでしょ?」

「大会?ああ、そうだ」

 ウィルは怪しまれないよう話を合わせた。子供は目を輝かせた。

「会場はあっちだよ、僕が案内してあげる!」

「いや、大丈夫だ、俺たちは……」

 しかしリリーはウィルの言葉を遮り、言った。

「頼む。道に迷って困ってたんだ」

道すがら、子供は楽しげに話した。

「今日は年に一度のお祭りなんだ。よその村からもお兄さんたちみたいにたくさんの魔術師たちが来るんだよ。誰が一番強いか決めるんだ」



 二人が案内された先は、神殿の横にもうけられた簡単な闘技場のような場所だった。

「おい、どうするんだ、こんなところまで来て。絶対にボロが出る」

 ウィルはリリー(今はヘンリーと呼ぶべきか)を肘で小突いた。ヘンリーは澄ましがおで答えた。

「でも見てくださいよ、勝てば報酬が出るみたいです」

ヘンリーが指差した立て看板には、優勝者に金貨1000枚を授与すると書かれていた。今夜の宿代には余りあるくらいの金額である。

「よし、出るぞ。受付はどこだ?」

「そう来なくっちゃ」

 ヘンリーは笑いながら頷いた。

村の子供は受付まで二人を案内した。

「こっちだよ!ついてきて」


「ウィル・ヤンセンだ。大会に参加したいんだが」

「分かりました。ヤンセンさん、身分証を見せてください」

「ヤンセン先生、はい、これです」

 隣にいたヘンリーは荷物から手帳のようなものを取り出して受付の女に渡した。女が開くと中には確かにウィル・ヤンセンの文字とそれらしい紋章が描かれていた。

「はい、結構です」

 ウィルの受付が済むと、女はヘンリーにも手帳を出すよう促したが彼は首を振った。

「いえ、僕はヤンセン先生の弟子でまだ見習いですから。付き添って構いませんか?」

「ええ。付き添いは二人までです」

 上手いな、とウィルは感心した。


 こうして滞りなく受付を済ませて二人は闘技場の席に腰を下ろした。ウィルは小声で尋ねた。

「あの身分証はなんだ?」

「魔術師はそれぞれの宗派ごとの免許制なのですよ」

「しかし、俺は免許など受けていないぞ」

「アイリス様のお手にかかればそんなものどうとでもなります」

ヘンリーが先程の手帳を取り出して開くと、さっきとは違った紋章が現れた。その横にはヘンリー・ザックと書かれている。

「アイリスさんは魔術師なのか?」

ウィルは尋ねた。

「いいえ、その、何というか……ですが、魔術に造詣が深いのは確かです」

「詳しくは言えない、ということか」

「そんなことより、ほら!始まりましたよ」


 昼の空に魔術を駆使した花火が上がり、歓声が湧いた。

「それでは皆さんお待ちかね、バレル村主催の魔術大会が始まります!北、ドント・ムンク師!」

 呼ばれた老人は観客に手を振った。

「南、ガイル・フランク師!」

 屈強な大男が雄叫びを上げ、歓声が大きくなった。

「世の中にはこんな強そうな奴がいるんだな。うちの村では魔術師なんて殆ど見たこともなかったよ」

ウィルは驚嘆した。


 司会は声を張り上げた。

「皆さんお分かりと思いますが、説明いたします!魔術が外に漏れないようこの土俵には結界が張ってあります。この結界から相手を弾き出すか、相手を降伏させれば負けです!」

「ほう、単純だな」

 ウィルは老人と大男を見比べながら言った。

「これではすぐに勝負がつくだろう」

 ヘンリーは笑いながら答えた。

「まあ、ご覧なさい。面白いことになりますから」


「始め!」

 その声とともに、大男が老人に向かって突進した。しかし老人は眉ひとつ動かさずに杖を一振りした。すると大男がみるみるネズミほどの小ささになった。老人は小さくなった大男を悠然とつまみ上げると、結界の外に放り出した。観客の笑い声が会場に満ちた。

「いいぞ、ドント老師!」

 歓声に答え、老師は深々と礼をした。


「何だ、今のは」

 ウィルはまぶたを擦った。

「大男の方はおそらく変身術かなにかで自分の体を大きくしていたのでしょう。ご老人はその呪文を反転させて彼を小さくしたんです」

「そんなことができるのか」

ウィルは感嘆した。


 その後も試合は順調に進んだ。召喚術を駆使して魔物を呼び出して戦うもの、攻撃術で炎や氷を繰り出すものなど、色々な魔術に観客は喜び、時に罵倒し、大盛り上がりだった。

そしてとうとうウィルの番が来た。

「北、ハンメル・メジャー師!」

 金髪で美しい顔の魔術師が現れ、黄色い歓声が上がった。

「南、ウィル・ヤンセン師!」

 まばらな歓声が上がった。新顔だからか、客席がざわついている。金髪の魔術師は客席に手を振りながら、ウィルにしか聞こえないような声で言った。

「新顔だな。二度とここに来られないように魔術師としての矜持ごとボロボロにしてやるぜ」

 ウィルは言い返した。

「矜持なんてどうでもいい。俺は今夜の宿代を稼ぐために来た」

「哀れな奴だな。そんなものお前の手になんか入らねえよ」

 二人は睨み合った。


「両者いいですか? では、始め!」

 こうして険悪な雰囲気の中、戦いの幕は開いた。

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