表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/16

魔術の心得

魔術修業、はじめました。


いつも読んでくださってありがとうございます!

今後ともよろしくお願いいたします!

「うーむ、どうしたものかのう」


 豪華すぎる朝食を終えた後、男は生まれて初めて習う魔術に苦戦していた。魔術師を探すのだから少しは心得が合った方がいいというアイリスの判断である。


 男の目の前で頭を抱える小さな老人は、かつては青き炎とも呼ばれた高名な魔術師だそうだ。周りには男が悪戦苦闘した魔法の残骸が無惨に転がっている。

「召喚は今一つ」

 老人が男が出したネズミのしっぽを杖でつつくと、しっぽはポン、と白い煙をあげて消えた。

「攻撃はてんでだめ」

 老人は無傷のスプーンをコツン、と指で弾いた。

「魔法薬は論外」

 男がかき混ぜる鍋の中には得体のしれない緑色の液体が渦巻いている。男はふてくされた。

「俺には向いてない、そんなこと最初から分かってました。いい奴だけどつまらない平凡な人生が似合いそうな男、そう散々言われてきたんですから。アイリスさんもどうかしてる。あなたみたいな本職の魔術師に頼めばいいんだ。どうせ今だって物陰から眺めて滑稽な俺を笑ってるんだろう」

「おう、中々言うな、おぬし。善良で悩みなど無さそうな顔をしておるのに」

 老人は少し驚いたようで、男はさらに落ち込んだ。


「あなたがその女魔術師を探したらいいじゃないですか」

「わしが? それは無茶というものだ。あんな性悪女、扱いきれん。それに魔術勝負であの女に敵うものなどおらぬ」

 老人は少し考えると言った。

「そうだな、おぬしが多少上達したとしてもどうにもならぬ。それならいっそのことこれにかけるか」

「何です」

 男は投げやりに言った。

「幻術じゃ」

「何ですかそれは」

 老人はニタリと笑った。

「聞いたことがないか。それもそうじゃろう。とても古い魔術でなあ。今の世の中、召喚や攻撃ばかりもてはやされておる。何せ見た目が派手じゃしな、無理もない。しかし魔術というのは人の心を惑わし、己の思うように他人を誘導したいという願いから生まれた物じゃ。わしの若いころは」

 延々と続く話を男は遮った。

「一体どうすればいいんです」

「おう、すまんの。年よりは話がくどくていかん」

 老人は腰を下ろした。

「用意するものは何もない。至極簡単じゃ。わしを欺いてこの杖を手放させてみるがいい」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ