サルビリャの至宝
いつも読んでくださりありがとうございます!
サルビリャの愉快な仲間たちです。
ムンク老師に案内されて、二人は城の中を進んだ。やはり初めて来た気がしないな、とウィルは思った。銀の燭台、壁の肖像画、そして豪華なシャンデリアはさすがに一国の主の城に相応しかっく、見覚えのある品などあろうはずもなかったのだが。
ヘンリーはいつの間にか美女のリリーの姿になり、赤い豪華なドレスを身にまとっていた。手を頬に当て、うっとりして呟く。
「ウィル様、やはり王様ってお金持ちなんですね」
「リリー、落ち着け。ここの物は王の私物だ。俺の金貨をくすねるのとは訳が違う。絶対に何にも手を出すなよ」
「おぬしの部屋はここじゃ。好きに使うが良い。そこの使い魔と同室でよいかな?」
「えぇ?」
「はい」
リリーは小さく不満の声を上げたが、ウィルは構わず答えた。
「お前が一人部屋なんて持ったら何をするかわからないからな」
二人のやり取りを聞いてムンク老師はカラカラと笑った。
「使い魔の調教にはわしも苦労したものじゃ。とくにそこの者のような狐は扱いが難しい。『サルビリャの至宝』に招かれたものには、国王陛下が謁見なされる。しばしここでごゆるりとなされよ」
「お前、狐だったのか」
リリーはばれたか、というように肩をすくめた。
部屋はこざっぱりとしていたが質素ではなかった。大きなベッドが二つ、壁際には暖炉、隣には柘植の鏡台があり、部屋の真ん中には黒い大理石のテーブル。座り心地のよいソファーに腰掛けると、ウィルはやっとくつろげた。
「国王はやはり幻術使いを求めていたのか。イリヤの言っていたことは正しかったんだな」
しばらくするとメイド服の女中がウィルを呼び、謁見の準備が整ったことを伝えた。先ほどと同じ謁見室に通されると、今度こそ国王陛下らしき威厳のある人物が玉座に座っていた。ウィルを見つめる目は柔和だが鋭い光をたたえている。ムンク師の姿は見当たらなかったが、国王陛下は二人の従者を連れていた。
「この度は『サルビリャの至宝』に加えていただき光栄です」
ウィルが敬礼すると、若き国王は軽く手を上げた。
「そなたは幻術使いだそうだな、ウィル・ヤンセンよ。ムンク老師から話は聞いておる。ここにいる二人、とムンク氏、そしてそなたを加えた八人が『サルビリャの至宝』だ」
「ソニヤ・ベルツだ。先程は失礼した」
王の左席に控えていた黒髪の女魔術師が一礼した。
「デニス・レピストと申す。お見知りおきを」
こちらは王の右席の男で、尖った耳と端正な顔立ちは、おそらくエルフの血が入っているのだろうと思わせた。赤い長髪を後ろに束ねて流している。
「さて、お手並み拝見、と言いたいところだが幻術使いの技は検証が難しい」
王は少し考えたあと、言った。
「早速だが仕事にかかってもらおう」