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1. どうしてこうなった


 読もうとしてくださり有難うございます。

 一応諸注意です。

 設定は緩くけっこう適当に書いているので、軽く読み流す程度でお楽しみ下さい。

 さくさく進めたいのでそこまで長くならないと思います。


 それでもいいよ!という方はどうぞお付き合いお願いします。



 

 

 金曜日の夜、一週間の仕事終わりとあり、安い居酒屋はとてもよく混んでいた。

 酒が入りテンションが上がってガヤガヤと楽しそうな喧騒の中、私達の座ってるテーブルは、酒を頼んだにも関わらず重く淀んだ空気の漂っていた。

 注文された料理を持ってきた明るい笑顔の店員さんがやけに浮いて見えた。

 テーブルに置かれたビールとカシオレを手に取ると、対面に座る同僚の教師である佐々木先生とグラスを交わした。


「おつかれさまです」

「おつかれさまです…」


 遠慮がちにグラスを鳴らし、お互い静かにゴクゴクと酒を飲む。

 乾杯なんて言わない。何もめでたくないからだ。

 グラスを傾け中身を半分程減らすと、疲れを吐き出すように大きなため息を吐いた。


「つかれた…」

「黒田先生、三者面談お疲れさまです」

「佐々木先生もお疲れ様です」


 お互い苦笑をしつつ、小さくお辞儀をした。


「後藤先生のクラスの三者面談はどうでしたか?」

「もう最悪ですよ!なんなのよ最近のモンペは!『転けたら危ないから外で走らせないで下さい』とか『娘の服が汚れるから図工の授業やらせないで下さい』とか訳わかんないんだけど!だったら汚れて良いような服着て来い!!」

「私のクラスも『どうしてうちの子を学級委員にしないんですか!?』って怒られちゃいましたよ…」

「けど他にやりたい子がいたら多数決で決めるじゃないですか!」

「そうなんですけど、『担任の貴女がちゃんと教育しないからいけないのよ!』って怒るんですよ…」


 激昂する私とは対照的に、佐々木先生は魂が抜けるんじゃないかってくらい深い溜め息を吐いた。同じ27歳のはずなのに、三十路越えをしているような老け込み具合に見える。

 本来ならフェレットっぽい癒し系女子なのに。容姿が可愛いから、余計なやっかみにあうようだ。可哀想に…。

 それを思うと、余計に怒りがむくむくと湧いてきた。


「教育に関して何でもかんでも教師に投げるんじゃないっつーの!!」


 ダンッ!とグラスをテーブルに起くと、周りから視線が集まり、私達はすみませんと頭を下げた。


「それに子どもも親の力を笠に着て言う事を聞かなかったりしますし…」

「校長とかも余計な問題を起こしたくないから、保護者のご機嫌をとってばかりであまりこちらの話を聞いてくれませんよね…」

「ほんと、難しい職業についちゃいましたね…」

「辛くない職業の方が少ないとは分かってるんですけどね…」


 はぁ、とやはりお互い溜め息しか出ず、現実逃避と言わんばかりに関係ない話で盛り上がったのだった。





 * * *


 佐々木先生と別れ、お酒により思考が少しふわふわしながら一人家路に着く。

 こんな時に彼氏が車で迎えに来てくれたらなぁ…。

 彼氏はいたが、お互い仕事が忙しくなったせいもあるのか、徐々に向こうからの連絡や誘いが徐々に途絶え自然消滅。仕方ないといえばそうだけどせちがない。

 その事を思い出し溜め息を吐いた時、カップルがいちゃつきながら私の側を通り過ぎる。

 爆発しろとは言わない。ちょっとそこのゴミ捨て場に突っ込んできてほしい。そして出来れば明日回収されてくれ。



 すっかり荒んだ心で街灯下にあるゴミ捨て場を見ると、ガサゴソと物音が聞こえた。

 何だろう?と不思議に思いそちらに目を向けると、ゴミ袋がガサゴソ動いていた。

 不気味だけど人間好奇心には勝てないもの。動くゴミ袋の方へそろり、そろりと近付くと、黒い物体がゴミ袋から顔を出した。


「…猫?」


 ゴミ袋の山から黒猫が出ようとしていたが、途中で力尽きてぱたりと倒れた。

 猫好きなわけではないが、弱った猫を放っておくほど嫌いな訳じゃない。

 私はゴミ捨て場に駆け寄り、ゴミ袋を移動させ猫をゴミ山から救い出した。


「大丈夫?」

「…………」


 返事が返ってくる事はないと知りつつも一応聞いてみる。撫でてみるも反応はない。だけどちゃんと小さく鼓動もあるので、きっと死んでいる訳ではない。

 家で体を温めれば少しは回復するだろうか?

 そっと体を持ち上げて家に持ち帰ろうとした時、黒猫はうっすら目を開いた。

 光に透けて見えた瞳は、鮮血ように鮮やかな赤だった。そんな瞳の猫は初めてだ。

 黒猫は私と目が合うと、目を細め、口が裂けるのではないかと思えるほどに不気味に口角を上げた。そう、まるで不思議の国のアリスのチシャ猫のように。



 【捕まえた】


「え!?」


 突如全ての音が遮断され、私の頭の中に言葉が響き、全てを支配された。


「え?!何?!何なの!?」


 【後は全てお前に任せる】


 黒猫の目が白目に変わった瞬間、ものすごい勢いで額に頭突きされ、私は意識がホワイトアウトした。





 * * *


【ん…】


 デコ痛ったー…。あー、頭がクラクラする…。


 顔を顰めていると、周りでざわざわした声が聞こえる。

 何なんだろうとゆっくり目を覚ますと、周りには神父のような人と騎士の様な人が沢山いた。

 そしてその表情は何か恐ろしいものでも見ているかのようだった。

 少し不安になりながらも取り敢えずいつまでも寝そべっている訳にもいかない。

 重い体を起こして立ち上がった時、違和感を感じた。


 少し視界が高い。それに床に触った感覚が、いつもと違う。

 地面を見ると、足元にはキラキラとした淡い光に包まれ、黒い毛に覆われた猫の様な足が見えた。びっくりして後ろに下がるとその手も跳ねる。

 えぇ?!何で!??


 じっと止まって見ると、鋭い爪の生えた猫の足も止まる。自分の手を動かすと、爪が地面に当たり音を立て、弾力のある掌には冷たい地面の感覚があった。


 ま、まさか…これ‥私の手ぇ!??一体どうなってるんだ!!!

 私が身体を確認しようと大きく動くと、周りが騒ぐ。


「暴れ出したぞ!」

「陛下!危険ですのでお下がり下さい!!」

「う、うむ!」

「聖獣様の前ですぞ!静粛になされよ!!」


 何だなんだ!危ないとか陛下とか聖獣とか!!

 訳も分からず睨むように周りを見渡すと、怯えたり逆に威嚇していたり動揺していたりと様々だった。そのせいか、私もすぐに冷静さを取り戻し始めた。


 …どうやら周りは私が怖いらしい。

 私も驚いてるよ!何故急に黒い虎の様な生物にならなきゃいけないんだ!


 私は特に何も……した。しました。黒猫助けました。ゴミ捨て場に居た黒猫を助けたらいきなり周りが暗くなって頭突きされたんだ。そして気が付けばこんな事に…。


 あんのクソ猫!!助けてやった礼がこれか!!こういうのは恩を仇で返すって言うんだぞ!因みにテストに出るからな!今度出す予定だったんだ!


 色々と思い出してイライラしていると、思わず手に力が入り、地面に鋭い爪を立ててしまった。その様子を見て、神官の様な人は慌てて跪いた。


「お鎮まり下さい!偉大で聖なる先導者で在らせられる聖獣・黒虎様!!」


【聖なる先導者?聖獣?黒虎?…私が?】


 口を開けば、頭に直接聞こえるような低い声が聞こえた。

 巨大化したので、その分私の声も低くなっで、まるで男のようだ。


「貴方以外誰がおりましょう!溢れ出る輝き、吸い込まれるような深い宵闇の色をした艶やかな毛に包まれた力強くも品やかな御身体。そして暗闇に輝く綺羅星の如く美しい真紅の瞳。奇跡の様な存在です!貴方様にお会いする事が出来て、感激の極みにございます!!」


【……はあ?】


 こんな詩的な褒め言葉は初めてだ。もともと黒虎じゃないし。

 十人並な外見のためそこまで褒められた事が無く、滅多に聞くことがない褒め言葉も、あまりに自分の事とはかけ離れていたので他人事の様に受け止めた。

 それに自分でも今の容姿を見たことないからあまりよく分からない。まず状況を把握したいので、感激して興奮している神官らしき人に尋ねた。


【すみません、私…】


「黒虎様!」


【は、はい!】


「すみませんなどと畏れ多い!我等人間に謙らないで下さい!貴方様唯一無二の気高き存在!お気遣いは無用です!」


【しかし、初対面の方にいきなり…】


「お気に為さらずに!」


 やたら熱心な神官は反論する余地も与えなかった。面倒だから普通に喋ろうか?けど親しくない人には自然と敬語が出てしまう。善処しよう。


【えーと、それじゃあまず状況を…】


「おい、貴様!」


 状況説明を求めようとしたところ、高慢な声が再びそれを邪魔をした。さっきから喋ろうとすると遮られてばかりだ。

 それよりいきなり人を貴様呼ばわりとは何様だ。声のした方へ顔を向けると、脂肪をたっぷり蓄えた金髪の青年がいた。


 顔がかなりぽっちゃりと丸々としていて、そのお腹には何を入れてるの?というくはいお腹はぼて腹だった。まさに肉まん、豚まん、中華まんという名前がよく似合う。

 しかも服装がかぼちゃパンツに白タイツだからコントの衣装にしか見えない。ふざけているのかこいつは。


 いきなりのおかしな展開に苛立っているのに、このふざけた王子コスプレ野郎に神経が逆撫でされて余計に苛立った。


「黒虎!返事をせんか!」


【…何?】


「何ではない!余は国王ぞ!敬意を払え!」


 さっき敬語使わなくていいって言われたんだけど。

 ふんぞり返る自称国王を黙って見つめた後に、視線を神官に移した。すると神官は少し怯えたように必死で謝った。


「も、もも申し訳ありません黒虎様!こちらに在らせますは、我等の国・グリオール王国の国王、サイク・ギル・グリオール様でございます!」

「ふん!」


 この頭悪そうで傲慢な奴が国王か。この国も大変だなぁ。こういうのは相手にまともに話してたら埒が空かない。よし、無視しよう。


 国王を無視して黙って神官に視線を戻せば、神官はビクリ!と怯えながらも、申し訳なさそうに説明を再開してくれた。


「…この度貴方様にお越し戴いたのは、この国を救して戴きたくここへ召喚いたしました!」


【救済?】


「はい!」


【自分達でやって。私にそんな力はないから】


「それは困ります!貴方様が居なければこの国は滅んでしまいます!!」


【滅ぶって…。一応ここに王様がいるじゃない。王様に頼んでよ】


「えー‥陛下はその、王に成られて日が浅い為、あまり政に慣れておらず…」

「もう一年もやっておるぞ!」


 何故か神官を押しのけ、国王は胸を張って言った。

 何故こいつは大した事もしてないのにこんなに自信満々でいられるんだ?

 大体フォローしてくれている家臣が可哀想だ。神官の被ってる帽子の中が見たい。きっと禿げ散らかしてる。

 それはさておき、バカ国王の相手をしても話が進まないので再びバカ国王の事は無視して神官に伝えた。


【私は今まで政治統治に関わった事がないから何も助ける事は出来ないと思うよ】


「そのような事などない!」


 無視しようとした矢先に早速王は声を荒げた。ウザい。バカ国王は神官から古くて分厚い本を奪って広げた。神官は顔が真っ青になってる。

 それって重要な文献なんじゃないの?

 しかし王は全く気にしていない。


「この本に記されておるのだ。『グリオール王国が危機に瀕した時、宵闇の使者である黒虎が国を救いに来る』…とな」


【何それ?】


「この国に古より伝わる言い伝えだ」


【ただの迷信じゃない?古い文献にはよくあることよ】


「しかし今お前はここにいる!つまりお前がこの国を救うのだ!さぁ!救え!!」


【そんな事言われても…。私は、元いた世界では只の小学生教師のだから今回の事で貴方方に協力出来る力はないの。だから早く元いた世界に返して。今すぐに】


「駄目だ!救うまで返さん!」


 きっぱりと言い切る王に腹が立った。


【だからさっきから無理だって言ってるじゃない】


「貴様は聖獣だ!きっと出来る!早く何とかせよ!」


【そんなの無茶振りよ!】


「あの、黒虎様…」


【何!?】


 言い合いをしていると小さく悲鳴をあげた神官が、申し訳なさそうに縮こまっていた。


「た、たた大変申し上げにくいのですが、黒虎様は今は元の世界に戻る事は出来ません」


【はぁ?!!何で!?】


「こ、此方の書には続きがありして…『この国の災いが去りゆけば、黒虎はこの国を去るだろう』…と記されております」


【…というと、まさかこの国が安定するまでは、私は元の世界に帰れない…っていうこと?】


「おお、恐らくその通り、かと…」


 私はさっと血の気が引いた。

 嘘でしょ…?こんな所で虎になって過ごせっていうの?

 絶句した私の様子に、神官達は矢つぎ早に頼み込んできた。


「こちらでの生活は私達が最高のもてなしを致します!」

「それに教師とは素晴らしい職業ではないですか!教えを解く事が貴女の務めなのでしたら、私達にもこの国を救う術を何卒御教授してくださいませ!!」


 王を除いた全員が一斉に頭を下げた。こいつら話聞いてねぇ!!!

 自分勝手な言い分しかしないやつらに、私は堪忍袋の尾が切れかけそうなのを必死で繋いで怒りを押し込めたが、どうやら身体はそうでもないらしい。

 私の身体の輝きが乱れると、小さく地鳴りがして灯台がカタカタと揺れ始めた。


「黒虎様!どうぞお鎮まり下さい!!」


【…あなた達は自分達で解決しようとしない訳?いきなり現れた事情も何も知らない者に、国の全てを任せようとする訳?それがどれ位恐ろしい事がわかってるの?】


「大変な無礼だということは重々承知しております。しかし、黒虎様は我らの最後の頼みの綱でございます」

「我が国は災害や飢饉に見舞われ、財政も悪化しており、他国に借金もあるので…」

「これ以上民を苦しめたくはありません。我らにはもう、後が無いのです…」


 神官や家臣たちの泣きそうな切ない声に、流石に大人気ないと気付いた。

 つまり、国王が使い物にならないからこうなったのね。


 いい歳したおっさんの涙は、見ていてとても綺麗なものではない。美青年とはかけ離れていてハゲ散らかしていたり、目の下の隈は濃かったり、顔には深い皺が刻まれている。だけど、何となくここ最近の自分と重なった。

 言う事聞かない生徒に、無理難題を押し付けてくる保護者、自分の保身ばかり考える校長。

 どうしようもなくても、働かなくちゃいけないんだよな…。

 この国に使える彼等や国民にとっては正に生命の危機とも言える。

 彼等は一体、どんな気持ちで聖獣を呼ぶ儀式をしたんだろうか…。


 彼等の心情を考えると怒りが徐々に収まってきて、オーラが整い地鳴りも収まった。

 彼らの事を許した訳ではないけど、帰る事が無理ならばこちらで生活するしかない、か…。

 仕方ない、腹を括ろう。

 正直かなり腹は立っているけど、どうしようもないなら、なるようになるしかない。悩むよりも目標に向かって努力した方が早い。

 そう自分に言い聞かせて、渋々だが了承の意を伝えた。


【…私がどの程度役立てるかは分からないけど、自分の世界に帰れるまではお手伝うわ】


「あ、有難う御座います!!」

「ふん、当然だ。早く救え」

「陛下!!」


 何でこいつは国が大変なのにこんな態度でいられるんですかね?

 大体こいつが元凶だっていうのに!

 このバカ国王はクソガキ+モンペ+役立たず校長を足したような存在だ。

 彼等を思い出してふつふつと怒りが湧いてきて地鳴りがまた始まるが、理性でそれをねじ伏せた。


【ではまずは国王】


「な、なんぞ?」


【あなたの態度と考え方を根本的に変えなさい】


「はぁ?何を言っておる。何故余がその様な事をしなければならない。余は王ぞ」


【あなたが王だから言っているの。貴方がきちんと政治を行わなかったから国が乱れて私が呼び出されたのよ?家臣や神官達が必死になって国を建て直そうもしているのに貴方はただ自分勝手な事をしているだけだったんじゃないの?】


「何をしようと余の勝手じゃ」


 バカ国王はフゴォッ!と鼻を鳴らした、豚みたいに鼻を鳴らすな!シリアスが消える!!

 全く悪気のない態度に、私は怒りを押し殺したが、喉が唸るのと声が低くなるのは隠せなかった。

 怒りを察したバカ国王は、少し怯えていたが考えは相変わらずクソだった。ちっ。


【それを改めなければ、死ぬよ?】


「そ、そんな訳なかろう!」


【あるわよ。悪政を行った王の末路なんか高が知れてるわ。大体家臣に裏切られるか、国民によって制圧される。怒りの矛先は当然王に向くわけだから、国民の前で派手な公開処刑されて次の王や指導者の好感度アップとしてのパフォーマンスとして利用されたりするのよ】


「そんな…」


 王は顔を青ざめさせていた。ざまぁ。つーかこれくらい考えろよ。


【今のあんたはその一歩手前。いつ国民にも家臣にも見放されてもおかしくない。多分今日わたしが召喚されなかったら、あんた殺されてたかもしれなかったわよ】


「な、何だと?!」


【当然じゃない。聖獣を呼ぶのに王家の血がいるのに、聖獣を呼べないならただの豚よ。食べられないし、食料や財を大量に消費する分、豚よりもやっかいよ】


「貴様!余を家畜以下呼ばわりとは何たる無礼!」


【そうされたくなかったらまずは人に礼儀を尽くしなさい。そして助けて下さっている家臣に感謝し、きちんと耳を傾けること。いくら私や家臣たちが言った所で最高責任者である貴方が聞かなかったら何の意味もないの】


「…………」


【ただ命令するだけが王じゃない。大きな力を持つことは、その分責任を背負う義務があるの。何故命令するのか、よく考えなさい。それが出来ないと言うのなら…】


「い、言うのなら?」


 王は脂汗をかきながら怯えていた。そして私は最大限の殺気とドスを聞かせた。


【そのすっからかんな頭を噛み砕いて民衆の前に捨ててやる】


「ヒィっ!!!!」


 怯えた王は、すぐに騎士の後ろに隠れた。全く情けない…。


【そうなりたくなかったら、ちゃんと私達の話を聞いて考えて行動すること。いい?】


 王がぶんぶんと勢いよく上下に首を振る姿なんだか間抜けだった。やっぱりバカだな。

 しかしこのバカには利点もある。脅しにも簡単に屈するほどに素直なのだ。それを上手いこと利用すればなんとかなると思う。

 

 今後の計画をぼんやりと立てていると、家臣に泣きながら感謝された。


「本当に!本当に有難う御座います!黒虎様ぁ!!!」


 …暑苦しい。


【言っておくけど、国王がこんなちゃらんぽらんになったのは、あなた達がちゃんと教育しなかったせいもあるんだからね?この王はそこらへんにいるガキと同レベル。もしくはそれ以下。その事を肝に命じて。いい?】


「はい!」

「では黒虎様、いつまでもこの様な場所で話すのもなんですし、城内でこれからの事を話し合いましょう」


【ええ】


 家臣や神官達は嬉々として私を城内へ連れて行ってくれた。バカ国王は顔色が悪かったがそんなの知った事ではない。

 怯えててもいいから、少しでも早く賢くなってくれ。


 これから大変だろうなぁ…。

 どうしてこうなった。そうとしか言えないような何故だか巻き込まれた新生活に、不安しか見出せないのだった。




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