渡り廊下近くの小さな池
私達の小学校は、1クラス30名程度。学年別では、1クラスか? 2クラス。
1年生から6年生まで、全校生徒で300名位の規模であった。
校門から入ると、すぐ近くの校舎には、1~3年生が使う下駄箱がある。その下駄箱から、1.2.3年生用の教室があり、私の嫌いな職員室、校長室、優しい先生の居た保健室、人体模型のあった大好きな理科室、……等々。生徒達、みんなが使う教室が並んでいた。
(現代では考えられ無いかもしれないが、当時、確か? 私が入学したクラスは、1-1等の表記ではなく、1年松組という表記であったと思う、そんな田舎の話である)
渡り廊下を通ると、別棟に、4~6年生が使う教室があった。木造ではあったが、3階建ての校舎である。そして、上級生のための下駄箱もそこにあった。
教育には欠かせない? 動物の世話係り? の大半も上級生の務めであり、ウサギ小屋や、野鳥? 小屋……等々。
そして、ホテイアオイなどの水草、金魚、鮒……、の小さな池もあった。
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校庭の隅を目立たない様に、上級生用の校舎へ向かう。俯きながら……、ずっと、ずっと…。
ちゃ子にとっては、
「学校行ってくる」と言って、自分の家を出てからの学校への道、
そして、正門から遠い自分の校舎までの道のりが一番辛かったと思う。
1時間目が始まろうかとする、そんなギリギリの時間まで教室には入ってこない。
(無理もないだろう……、虐められる空白の時間、自由時間が少しでも少ない方が幸せだったのだと思う)
今日も笑顔はない。俯きながら、淡々と先生の(授業)言葉を聞く、顔を挙げる事も無く、どちらかと言えば、クラスメートの動向を気にしていた。
そんなある日、ちゃ子の瞳は、クラスのみんなに向けてられていた。
そう、その瞳は、……。
ちゃ子が、いつもと違う? と思ったのは、「私だけ? 」だったのであろうか……?。
(おそらく半数以上のクラスメートは、いじめられている友達に対して、『決して嫌いじゃない、むしろ好き、いい友達だよ』と、思っていたと思う。『いじめ』など、つまらない事、『 嫌 』だったと思う。
ただ、その矛先が、自分自身へ向う事のほうが怖く、当たり障りのない様に振舞っていたのだと思う)
私は幼心にも、ちゃ子に対して意識過剰になると反って、うわさを煽ると感じていたのかもしれない。あまり意識もしないように努めていたが……、
ちゃ子が、上履きを履いていない。靴下のままだった。
私は、直感的に、これも『いじめ』? と思った。
靴下だけで授業を受け、クラスの皆には無視され、なかには、罵声を浴びせる子もいた。
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そして、帰る時私は、偶然にも、いや意図的? だったのかもしれないが、下駄箱でちゃ子にあった。
「どうしたんだよ?、今日、上履き、履いてもいなかったし、洗濯でもして、忘れてきたのか? 」
その言葉に、ちゃ子は、堪っていた感情が一気に溢れたのか、
「ありがとう…、……。
でも、……、私と話ちゃ、ダメなの!!……、ありがとう…、でもごめんなさい……、ありがとう」 と。
ちゃ子の方が、私の迷惑に成らない様に、自ら去って行った。
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そして、渡り廊下近くのその池の中には、ちゃ子の上履きが浮いていた。
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