古代ギリシャの線文字A(5.日本語訳)(その2)
7/17 「9.ザクロスの大甕」の末尾、また双斧⇒TENMA(天馬)を踏まえ、「10.クノッソスのコップ」の「(2)精密な解釈」を調整しました。
7/16 「9.ザクロスの大甕」を改訂。
7/14 「8.クノッソスのコップ」の双斧記号に、TENMA(天馬)を応用し、全面改訂。
7/12 「8.クノッソスのコップ」の冒頭、柱書を更新。
7.金の針(アギオス・ニコラオス博物館。GORILA IV. 146-147, 162)
これは約15センチの金の針であり、枝の太い部分に文字が刻まれている。「Minoan Golden Needle, Sven Buchholz」で検索可能。「KA-NI」の文字列があり、「蟹」と解釈すれば、身を掻き出す道具だろう。句読点の様な、短い縦棒[・]が4か所あり、「い」、「や」、「し」、「の」で補いながら次のとおり。
(1)素朴な解釈
(左から右へ)末尾の記号には曖昧さがあるので、DE/MAと読み換える。
A-MA-WA-SI-[・]-KA-NI-JA-MI-[・]-I-JA-[・]-QA-KI-SE-NU-TI-[・]-A-TA-DE/MA
あまわし(の) かにやみ(し)いや(し)かきせぬち(や)あたで/あたま
海ワシ氏 カニ病みで 卑しい。掻きせぬ地は 後で/頭。
海ワシ/アマワ氏はカニを病的に好み、卑しい。掻き出していない場所は、後でと/自分の頭。
海ワシと人の名前がかけてあり、アマワ氏は、蟹肉を食べる際、金の道具を使う金持ちと揶揄している。おそらく彼は、全ての小作人等から情け容赦なく地代、賃料や税金を取り立てる習性があり「未徴収の所は後で」との姿勢。「かきせぬち」は「書きせぬ地」(納入が未記録の土地)とも解釈され、金の針が、帳簿の記録用の「筆ペン」に見える。
末尾を「頭」に読み換えれば、アマワ氏への悪口になり、金の針で耳をかくべき旨示唆する。
(右から左へ)
MA/DE-TA-A-[・]-TI-NU-SE-KI-QA-[・]-JA-I-[・]-MI-JA-NI-KA-[・]-SI-WA-MA-A
またあ(の)親戚か(い)。ヤイ、「(の)みや」に(訪問)か(い)? しまわないと。
(2)QA-QA
良く見ると記号QA(AB16)の下に点があり、これを繰り返しの記号と見做せば、次のとおり。
(ア)左から右へ
A-MA-WA-SI-[・]-KA-NI-JA-MI-[・]-I-JA-[・]-QA-QA-KI-SE-NU-TI-[・]-A-TA-DE/MA
あまわし(の)かにやみ(し)いや(や)かか きせぬち(や)あたで
忌まわしい、カニにはまり、いやだ。「母の来ないうちに、後で」
(イ)右から左へ
MA/DE-TA-A-[・]-TI-NU-SE-KI-QA-QA-[・]-JA-I-[・]-MI-JA-NI-KA-[・]-SI-WA-MA-A
ま た あ の しぬせき かか(の)やい(の)みやにか(い)しわまあ
またあの義理の母の「ヤイの!」が、「飲み屋」に(訪問)かい? しまわないと。
(3)精密な解釈
文字列には、線文字A・Bの共通文字(原型)から逸脱した記号があるので、左から右へ、「・」を除き、①から⑱までの番号を付して、次の通り読み換える。
① 左端(及び⑯)の記号。Aの変形: 中央の縦棒が上下に分離しているので、 ANO/ ASI/ SINO/ SINIJA。
② MAが二重になった記号:MAMA/MANI/MARA。
③ WAの変形:四角形を支える足がずれているので、WA-(I/YA/SI/NO)。
④ SI。
⑤ KA、但し中央の縦棒が上下に分離している: KA/KANI。
⑨ 中央より。Iの変形:右下に支線が出ているので、SEI/REI。
⑩ 中央、右寄り。JAの変形: 2連の太鼓にも似ているので、JA/BA。
以上を踏まえて解読すると、次の通り。
(ア)左から右へ
ANO-MAMA-WA-SI-[・]-KA-NI-JA-MI-[・]-SEI-JABA-[・]-QAQA-KI-SE-NU-TI-[・]-ASI-TA-MA/DE
あのまま わし(の)かにや かにやみ(の)せい、やば。かか きせぬち あしたまで
あのままワシのカニや。カニ病みのせいで、ヤバ。母来せぬ地で、明日まで(お預けだ)。
(イ)右から左へ
DE-TA-ANO-[・]-TI-NU-SE-KI-QAQA-[・]-BA-REI-[・]-MI-JA-NI-KANI-[・]-SI-WANO-MAMA-SINIJA
でたあの しぬせき かか(や) ばれい(の)みやに かんにん(や)し わのまま しにや
出た、あの親戚、義理の母や、無礼。「飲み屋」に堪忍や。シワのまま、死にや。
(4)読み換え
(ア)記号① 及び ⑯を双斧と見做し、TENMA (天馬)と読み換える。
(a)左から右へ
TENMA-MARA-WA-SI-[・]-KA-NI-JA-MI-[・]-SEI-JABA-[・]-QAQA-KI-SE-NU-TI-[・]- TENMA -TA-MA/DE
まんてん らんまん わし(の)かにやみ(の)せい、やば。かか きせぬち(や) てんまたんで
満点、爛漫、ワシのカニ病みのせいで、ヤバ。母来せぬうちや。天馬、待たんで。
(b)右から左へ
DE-TA-TENMA-[・]-TI-NU-SE-KI-QAQA-[・]-BA-REI-[・]-MI-JA-NI-KANI-[ ]-SI-WANO-MAMA-TENMA
でたてんま(の) しぬせき かか(や) ばれい(の)みやに カニ(の)あし わのまま まてん
出た、天馬の親戚、義理の母や、無礼。「飲み屋」にカニの足。我が儘、待てん/満点。
(イ) 記号⑬ (SE)につき、上部の縦棒3本をKAWAとし、下の「丁」形を2(I/YA/SI/NO)として、KAWA-2(I/YA/SI/NO)と読み換える。
(a)左から右へ
TENMA-MARA-WA-SI-[・]-KA-NI-JA-MI-[・]-SEI-JABA-[・]-QAQA-KI-KAWA-2(I/YA/SI/NO)-NU-TI-[・]- TENMA -TA-MA/DE
まんてん らんまん わし(の)かにやみ(の)せい、やば。かか きかわやのぬち(や) てんまたんで
満点、爛漫、ワシのカニ病みのせいで、ヤバ。母来て、厠の主や。天馬、待たんで。
(b)右から左へ
DE-TA-TENMA-[ ]-TI-NU-KAWA-2(I/YA/SI/NO)-KI-QAQA-[・]-BA-REI-[・]-MI-JA-NI-KANI-[ ]-SI-WANO-MAMA-TENMA
でたてんま(や) しぬわかいのき かか(や) ばれい(の)みやに カニ(や)し わのまま まてん
出た、天馬や、死ぬ。若い/和解の気。母や、無礼、「飲み屋」にカニの足。我が儘で、待てん。
8.クノッソスのコップ(KN Zc6)(Arthur Evans卿の1909年の著書「Scripta Minoa」29頁図より)
日向数男偏「新装版 古代文字」(グラフィック社。2014年)、95頁の図5。
内側にインクで書かれた文字列が3つの同心円状に並び、中心部の文字列は、目をつむり杯あおる男性の顔(眉と目尻)の漫画を兼ねる。英語Wikipedia で「Linear A」を検索すると、文字列が上部右側に掲載されている。時計回り、反時計回りの双方向で解読を試みた。
(1)時計回り
(ア)外側の同心円
(a)音価
最初の記号(6時とする):SA(*31)を目の形に仕立て、中に瞳を入れた記号なので、SAME-α。
2番目の記号(7時):2つのSA記号を垂直に交差させ、2つの間にV形のTI(*37)、また十字形のRO(*02)を成立させた記号と見做し、SA-TI-SA-RO。
5番目の記号(10時):(A/TENMA)-α。因みに点+MA+縦棒(α)で、TENMA-α。
7番目の記号(12時の位置):ROに短い支線、または、PA(*03)の一部が欠けたもの。
10番目の記号(3時の位置):2本の平行棒で、HASIと見做し、HASI-α。あるいは、NE。
(b)解読
SAME-α SATISARO (α?) QI (A/TENMA)-α KU-RU (RO-α)/(PA-NASI)
NA-TI KU-RU-ZO (HASI-α)/NE
さあ飲め。さあさ、散ろう。死期、天馬の来る話。チッ、なぐるぞ。恥や!
(イ)内側の同心円
内側の同心円も、6時の位置から読み始める。10時に位置するKIの記号は、左上にKU/MEが織り込まれ、KI-(KU/ME)。4時の位置の記号は、JAの欠けた物。5時の記号は、I(*28)の右側に鏃と短い支線を加えたもの。
KURU (RO-α)/(PA-NASI) TI KI-(KU/ME) DA/SA DI-α (A/TENMA)-α
α NU JAKAKE I-α-ZO
苦労の話、チッ。聞くさ。惨事/賛辞や。天馬の、死ぬ賭けや。いやぞ。
(ウ)中心部
全体として、片目をつむる人の顔に見える。左側の曖昧な4本の縦棒は、RAとTIの合成。右側は、SEとIの合成記号。すると、
RATI SEI
埒 せい(何とかしろ)
(エ)まとめ
さあ飲め。さあさ、散ろう。死期に天馬来る話。チッ、なぐるぞ。恥や!
苦労の話、チッ。聞くさ。惨事/賛辞や。天馬の死ぬ賭けや。いやぞ。埒せい。
(2)反時計回り
(外側の同心円) 3時の位置から読み始める。
(HASI-α)/NE KU-RU-ZO NA-TI (RO-α)/(PA-NASI) KU-RU (A/TENMA)-α QI (α?) SATISARO SAME-α
ねえ、来るぞ。なし、話しろ。狂うや、天馬、来し。さあさ散ろう。覚めや!
(内側の同心円) 5時の位置から読み始める。
I-α-ZO JAKAKE NU α (A/TENMA)-α DI-α DA/SA
KI-(KU/ME) TI (RO-α)/(PA-NASI) KURU
いやぞ。矢かけぬや。天馬や意地だ。効くめい。散ろうや、狂う。
(中心部) 右から左へ。
SEI TI α
聖地や
(3)まとめ
以上を繋げば、次の通り。
さあ飲め。さあさ、散ろう。死期に天馬来る話。チッ、なぐるぞ。恥や!
苦労の話、チッ。聞くさ。惨事/賛辞や。天馬の死ぬ賭けや。いやぞ。埒せい。
ねえ、来るぞ。なし、話しろ。狂うや、天馬、来し。さあさ散ろう。覚めや!
いやぞ。矢かけぬや。天馬や、意地だ。効くまい。散ろうや、狂う。
聖地や!
「天馬を見たので、死期が近い」として、被害妄想で騒ぐ人物を落ち着かせるため、一緒に酒をあおる話である。「聖地や!」は、アルコールの効果だろう。
9.ザクロスの大甕(ZA Zb 3)(GORILA IV : 112-113)
これは、クレタ島東部沿岸に近いザクロスの高台から発掘された高さ約170cmの大きな土器の甕(Pithos)で、中央部が腹の様に膨らんでいる。最上部の周囲が、太い縄の模様で飾られ、その下に線文字Aが、上下2段に刻まれている。GORILA (4.Autres Documents, Texte112) に掲載の文字列(模写)と、J.G.P. Bestによるネット論文 「Zakro Pithos Inscription, Again」に掲載の文字列(模写)を照合しつつ、双方向から読めば、次の通り。
(1)上段
(ア)音価
左端の記号(AB131a)は、線文字B の類推からワインの記号で、その隣は、22。これらを除き、左から右へ、①~⑩の番号を付す。変則的な記号につき、複音節の合成記号と捉えれば、次の通り。
①DIとNAとの合成記号で、NADI。
②DI-α。
③SEとI の合成記号。⑩も同じ。
⑤ 中央寄り、右から6つ目の記号: ANA/(TENMA-α)。
⑥ SAの上部にTI、中に「目」を織り込んだ記号:SATI-(ME/MA)。
⑦上部がKURU。下部の「がTI。上部の短い斜線が加わり、KURUTI-α。
⑨ Aの上部に短い横棒があるので、A-αかANA。双斧とすれば、TENMA-α。
(イ)解読
(左から右へ)
記号(AB131a)22 NADI DI-α KA SEI [・] ANA/(TENMA-α) (ME/MA)-SATI
TIKURU-α NE [・] [(A/TENMA)-α)]/ANA SEI
〇ワイン 22単位 汝、次男。加勢し、待てんや。冷めし乳、来るやね。幸せ!
〇ワイン22単位。次男、爺や、風邪や、天馬。優しめ/寂しい、父、狂うやね。苦しいのね。寝んや。天馬のせい!
(折り返して、右から左へ)
SEI [(A/TENMA)-α)]/ANA [・] NE TIKURU-α (ME/MA)-SATI ANA/(TENMA-α) [・]
SEI KA DI-α NADI 22 記号(AB131a)
天馬や、死ねん。来る地の幸、待てんや、魔のせいか。次男、汝、22歳。
(2)下段
(ア)音価
左から右へ、①~⑭の番号を付せば、変則的な記号につき、次の通り。
① 双斧の記号で、[(A/TENMA)-α)]/ANA。⑦も同じ。
③ Iの通常、3本の「羽飾り」が4本なので、(YO/SI)-I。
④ 線文字A(301)の中に点で、(TO/TORI/TOMARIKI)-α。またはAU-α。
⑤ クラゲの様な記号。DEMA。またはDE-α。
⑧ 底部に短い横棒があるので、(RE/MITE/ SATE)-α。
⑨ 肺/ 本の様な記号。上部の「両耳」とPI(*39)で、MAPI。
⑩ RE、またはMITE/ SATE。
⑫ 、⑬ 両方TIだが、⑬と合わせれば、TITI/ [TI-(NI/RA)]。
⑭ 右端。KUに2つの「目」を合わせ、KUMENI。また形状から、ARI。
(イ)解読
(左から右へ)
[(A/TENMA)-α)]/ANA [・] TA (YO/SI)-I [(TO/TORI/TOMARIKI)-α]/(AU-α) DEMA/(DE-α) KA
[(A/TENMA)-α)]/ANA (RE/MITE/ SATE)-α MAPI RE/ MITE/ SATE NA [・] TITI/ [TI-(NI/RA)] KUMENI/ARI
天馬、退いた。良い取り巻きや。まだか、天馬。去ってや、暇でなし。乳くみに/父、あり。
(右から左へ)
KUMENI/ARI TITI/ [TI-(NI/RA)] [・] NA RE/ MITE/ SATE
MAPI (RE/MITE/ SATE)-α [(A/TENMA)-α)]/ANA KA
DEMA/(DE-α) [(TO/TORI/TOMARIKI)-α]/(AU-α) (YO/SI)-I
TA [(A/TENMA)-α)]/ANA
憎めん父や、なんてさ。暇、見てや。「天馬や」か。死んで、会おうや。酔った。天馬、待てんや。
(3)総合
以上を合わせ、整理すれば、次の通り。
ワイン 22単位 汝、次男。加勢して! 待てんや。冷めし乳、来るやね。幸せ! 乳くみに父、あり。
ワイン22単位。「次男、爺や、風邪や。天馬!」。寂しい父、狂うやね。苦しいのね。寝んや。「天馬のせい!」。
「天馬や、死ねん。来る地の幸、待てんや、魔のせいか」。「次男、汝、22歳」。「天馬、退いた。良い取り巻きや。まだか、天馬」。「去ってや、暇でなし」。
憎めん父や、なんてさ。暇、見てや。「天馬や」か。死んで、会おうや。酔った。天馬、待てんや!
次男が子供の頃、乳を汲んでくれた父が、年配になり、風邪をひくと「天馬、お迎えだ!」と騒いだ想い出。その父もいなくなり、今や自分が酒を飲み、「天馬、待てん」と騒ぐようになった。
(注)次男の授乳の場合、母親の授乳負担の軽減のため、牛乳等が用いられたのだろう。
大甕を牝牛等の乳房に見立てている。また下段の文字列の右端近くで、乳房形の記号が連なるが、文字列を上下逆さに見れば、すぐ下にバケツ状の容器が現れ、乳しぼりの漫画となる。
10.クノッソスのコップ/杯(KN Zc7)(GORILA IV : 122-125)
これは、ぐい飲みの様な形の焼き物で、内側に線文字Aが旋回する様に2段にわたり墨で記され、器を覗き込んだ時に、上下正しく読める。「Knossos cup KN Zc7」で検索すると、ネット上データベース、SigLAなどに行き着く。
器の底には小さな「針の穴」が複数あり、醸し出す模様が人面(顔の左側)に見えるが、女性とも、口ヒゲの男性とも解釈可能。また杯の淵の方から、内側を旋回する様に、やや濃い線が刻まれている。
以下、文字列が、常にUの字になる様に、器を見る事とする。
(1)単純な解釈
A(*08)に関し、上部中央に点がある場合、NAとした。底寄りの文字列では、右端寄りのZAは角が生えており、ZAMA/MAZA。また淵寄りの文字列で、SAとRAの下の点は、強調記号として濁点や「ん」とした。
句読点の様な、短い縦棒[・]は、文の冒頭や最後ではサイレントと見做した。底寄りのDU(*51)の左隣の[・]は、DUの象る牛の頭部と合わせ、縦棒2本に見えるので、NI。
(ア)時計回り
(a)底寄り
[・]-RA-ZAMA-NA-[・]-RE-RA-DU-[・]-TI-RI-NU-KA-NA
らざまな (し)れ ら ず(に)ち り ぬ か な
成果なし 知られずに散ってゆく 悲しさ
「らざまな」は、レーズンを連想させ、またペルシャ語でREZAが満足を意味するので「成果」と解釈した。GORILAでは、ZAをZU、RIをZAと読んでいる。
(b)淵寄り
[・]-NE-NA-A-RA-SA-JA
(し) ね な あ らざん や
根を荒らされてしまった故に。
器を花に見立てれば「根」はオシベやメシベと見られ、本来の位置に針穴だけなので「花の目的を遂げずに散っていく」と解釈できる。この場合に想定されるのはミノア人の栽培したサフランの花であり「人間が香料としてオシベとメシベを摘んでしまい、実をつける事が出来ない」との深い嘆きだろう。
(イ) 反時計回り
(a)底寄り
NA-KA-NU-RI-TI-[NI]-DU-RA-RE-[・]-NA-MAZA-RA-[・]
なかぬりしに つられ(の) なまざら(し)
中を塗らないかと 誘われたので 打ち明けよう
(b)淵寄り
JA-SA-RA-A-NA-NE-[・] WI-PI-[・]
や さ ら あ な ね(の) ウィピし
やせた姉御の (署名)ウィピ氏
(ウ)まとめ
当初は、サフランの花の嘆き、と読めるが、反対方向に読んだ内容と合わせると、自分の境遇をサフランの花になぞらえた嘆きの詩が浮上する。
「打ち明けよう」について、器の底の性別不詳の横顔があり、署名者「ウィピ」は、戦傷者、受刑者か宦官だろう。すると淵の方から旋回する線は、身体の傷を表す。宦官は、古代のアッシリアやローマでも知られていた由。
なお鳥越憲三郎は、中国雲南省の佤族に関し、高床式・屋根の千木等、家の特徴から弥生人(倭人)に通じると捉えて調査し、子供を名付ける際には、男女の区別を示す冠詞があり、例えば名前が「レン」ならば、男は「アイ・レン」、女なら「イェ・レン」とする旨紹介している。特にミャンマーとの国境近くの布朗族の場合、男に「アイ」、女には「ヰ」。然るに杯の署名「ウィピ」の「ウィ」は「ヰ」に相当するので、肖像はヒゲの女性か。
(注)鳥越憲三郎、若林弘子「弥生文化の源流考-雲南省佤族の精査と新発見」(大修館書店。1998年)
(2)精密な解釈
(ア)底寄り
(a) 音価
各記号に、反時計回りに(左から右へ)、①から⑪の番号を付す。変則的な記号に付き、次の通り。(中央寄りの「丑」記号DUが、⑥)
① 双斧と見做し、ANA/(TENMA-α)。
② このKAは、縦線が上部から突き出ており、突出部分をαとする。
③ NUと読んだ記号。「橋」に似ているので、読み換えとして、HASI-NI。
④ RI(AB53)の下半分が消去されたものと捉え、(KESI/KIE)-RI。
⑤ TI(AB37)の左右から「角」が出ているので、MAを読み加え、TIMA。
⑥ DU(AB51)の左隣の[・]は、DUの象る牛の頭部(左側)と合わせ、縦棒2本にも見えるのでα/NI。
⑨ 記号①と同様。双斧と見做し、ANA/(TENMA-α)。
⑩ ZAMAと読んだ記号。(右側に2本、左側に1本)角が生えているので、ZAMA-I/YA/SI/NO)。あるいはZA-I-(NI/RA)。
(b)時計回り
[・] RA (ZAMA-α)/ [ZA-I-(NI/RA)] ANA/(TENMA-α) [・] RE RA DU [α/NI] TIMA
(KESI/KIE)-RI NU/ HASINI KA- α ANA/(TENMA-α)
⇒ [ I ] RA ZAMAYA/ ZAINI ANA/TENMAYA [SI] RE RA DU [α/NI] MATI (KESI/KIE)-RI NU KAI
ANA/TENMAYA
(い)らん 罪人。あな、知られず(に)混じり、消えぬかい。あな、天馬、待てんや。
(c) 反時計回り
ANA/(TENMA-α) KA- α NU/ HASINI (KESI/KIE)-RI TIMA [α/NI] DU RA RE [・]
ANA/(TENMA-α) (ZAMA-α)]/ [ZA-I-(NI/RA)] RA [・]
〇 ああ、中の死人は、消えり。町につられし。あなや混ざらん。
〇 ああ、中の塗り、消し(て)。暇につられんや。あな天馬、待てんや、罪人いらんや。
(イ) 淵寄り
(a) 音価
各記号に、反時計回りに(左から右へ)、①から⑥の番号を付す。変則的な記号につき、次の通り。
① (MASU/ SIKAKU)+α とする。左端にあるので、適宜HASIを読み加える。
② SA(AB31)が分解した形であり、SA-RAN。あるいはSA-BETU。
③ RA(AB60)の下半分が消去されたものと捉え、(KIE/KESI) -RA。
④ 双斧と見做し、ANA/(TENMA-α)。
⑥ NEの中央が、ヘビの様にくねっているので、NE/ NEMI/ KUNE。
(b)時計回り
[・] NE/ NEMI/KUNE NA ANA/(TENMA-α) (KIE/KESI) -RA SARAN / SABETU
(MASU/ SIKAKU)+α
眠な。あな、天馬や。消えらん。去らん。差別、増すし。
(c) 反時計回り
HASI -(MASU/ SIKAKU)+α SARAN/ SABETU (KIE/KESI) -RA ANA/(TENMA-α) NA
NE/ NEMI/ KUNE [・] (末尾)WI-PI- SIYA
恥かくしのう。差別、消えらん。天馬や、泣くねい。 (署名)ウィピ氏や
(ウ)まとめ
以上、精密に読んだ結果を合わせ、調整すれば、次の通り。
ああ、中の塗り、消して。暇につられんや。あな天馬、待てんや。罪人いらんや。
いらん 罪人。あな、知られず(に)混じり、消えぬかい。あな、天馬、待てんや。
ああ、中の死人は、消えり。町につられし。あなや混ざらん。
眠な。あな、天馬や。消えらん。去らん。差別、増すし。
恥かくしのう。差別、消えらん。天馬や、泣くねい。 (署名)ウィピ氏や
単純な解釈を敷衍しており、宮刑になった人物の嘆きの詩と判明する。
11. ファイストス出土の長方形の粘土板(PH15)(GORILA I: 304-305)「MA-TE-RE」
主たる記号が4つあるが、西洋の研究者は左から4つ目が読めず、MA-TE-RE-?-[・] としがちである。左端のMAを除き、全て合成記号なので書き出せば、MA-ZO/TE/RO-TE/RE-SA/MA-「・」。
左から2つ目の記号に関し、上の三角屋根をインダス文字風に解釈して ZOをRIと読めば、MA-RI/TE/RO-TE/RE-SA/MA-「・」。すると次の通り。
〇 左から、MA-TE-RE-SAMA-(YA)(まてれさまや)。
〇 折り返して左へ、MASA-RE-TERI (まされてり)。
〇 再び左から、MA-RO-TERE-SAMA-(SI)(まろてれさまし)。
繋げれば「マテレ様や、優れてり。我を照れ覚まし」(マテレ様は優れておられ、我を照らし、目を開いて下さる)。太陽神信仰ならば、語感から女神と推定される。左端のMAをアマと読めば「アマテレ様」となり、アマテラスに通じるか。
12.「特別展 古代ギリシャ - 時空を超えた旅-」(展覧会図録。2016年)より、「線文字Aの粘土板」(展示品 40番。イラクリオン考古学博物館所蔵)
長さ8.9センチの長方形の粘土板で、線文字Aが一列に刻まれている。合成記号が多いところ、左から右へ1から10の番号を付して分析すれば、次の通り。なお5番と10番、それぞれの右隣に、句読点の様な短い縦棒が刻まれている。
1.単純に考えれば、JE。合成記号とすれば、SA-NO。
2.分かりにくいが、Iの右下に短い縦棒と捉えて、I-SI。
3.「一」に類似する、矢の様な、短い横棒でYA/SI。
4.素直に読めば、PU。合成記号なら、DE-SE。
5.馬の頭を思わせるUを書き、その外側に三角形を書いた様な記号で、U-RI。
6.大きな「×」の中央に円を描いた形。KAの外側に矢が4本と見做して、KA-SI-YA。
7.縦長の目の中に、短い縦棒が7本。インダス文字の読み方を参考に、SI-SAN-ME。
8.DE。
9.目の中にTIでMA-TI。
10.NU。
左から右へ、JE/SANO ISI YA PU URI。KASIYA SISANME DE MATI NU (家/砂の 石 やぶ/安 売り。貸し家 資産め で 待ちぬ)。解釈すれば「砂岩の家。安売りあるいは貸し家として。資産を愛でながらお待ちします」。粘土板の素材が砂岩にも似ているので、整合的か。
右から左へ読む際、5番と10番、それぞれの右隣の短い縦棒を、NO、SI、と読み込む。すると、SI NU MA DE SISANME KASIYA NO URI DESE SI ISI JEとなり「死ぬまで資産め。貸し家の売りですし、石の家」。不動産の広告である。




