打ってないのに響くってどういうこと!?
それは、何気ないやりとりだった
「あの」
「ああ、それならメールしておいた」
「それさ」
「わかってる、トラブった時の対策も準備してるよ」
「この場合」
「相手からNOの反応が来ることが予想される、だろう? わかってて進めてるならいいじゃないか」
一度や二度なら偶然か、ですむ。
だがしかし、毎回となると話は違う。
だから仕返しをしてみた。
「これ」
「終わってるよ」
「さっきの」
「うん、予防線張ってあるよ」
「ところで」
「飯でも行くか?」
ははは、いつも無表情なのに今ちょっと眉が上がった。
これができるのはお前だけじゃないんだぞって、気付いたかな?
「行くか」
「よし、じゃあおすすめの店があるからそこに行こう」
「気取った店は好きじゃない」
「知ってる」
その日の昼飯は、職場の近くにあるちょっとボリューミーで美味いと評判の定食屋に行く事にした。
定食屋にも無事入れて、お互いメニューを眺める
「俺、唐揚げ定食。お あんたー」
「あんたじゃない、七瀬だ」
「おお、俺は八木な」
「知ってるよ有名人」
「話が早くて助かる。じゃあ七瀬はどれにする?」
「カツ丼」
「お前そういうの好きなんだ、なんか意外」
「お前じゃなくて七瀬」
「悪い悪い、じゃあ頼むか」
店員を呼んで注文したところで、気になってたことをきいてみた
「なあ、なんで俺が考えてることがわかるんだ? 魔法使いなのか?」
「そんなんじゃないし、それはお前だって同じだろう?」
「お前じゃなくて八木な。いやそうなんだけどさ、こんなことまで察してくれるなんて、お前は俺のなんなんだ!? って思っちまったわけよ」
「俺は別に、あんたならこうするだろな、が見えやすかったからその通り動いただけだよ」
「それがすごいって言ってるの! だって俺相手にだよ? いつも周りから、八木さんって何考えてるのかわからないって言われまくってる俺のことがわかるって、それ相当だぞ」
「そうか? とてもわかりやすいと思うが。それを言ったらあんただって、何で普段大して関わりもない俺のことがわかるんだ?」
「わかりやすいよ、お前」
「・・・・・・そんなこと初めて言われた」
「理解したというよりは、こうじゃないかなぁと仮説を立てたから試してみたらドンピシャだった、それだけ」
「そんなことしてもし外したらどうするんだ?」
「別に。仮説が違ったな、でおしまい。いつもはそうなんだよ。ちょっと期待するけど、大概外す。なのにお前外れなかったからびっくりした」
「それは褒め言葉と受け取っておこうか」
「おう、最上級の褒め言葉だ。素直に喜べ」
「お前に言われても別に」
「お前じゃなくて八木」
「ああ・・・・・・」
なんて話してたら定食が運ばれてきた。
唐揚げは揚げたてアツアツであっという間にペロリと平らげた。
七瀬も、見た目は痩せ気味だが食いっぷりは悪くなく、こんもり盛られたカツ丼がみるみる減っていった。
腹が満たされたところで、もう少しだけ会話する。
「そうだ、あとで」
「資料だろ? もう机に置いておいた」
「お前、やっぱすげーわ」
「前から見てたしお前のやりそうなことくらいわかるよ」
「ん? 前から?」
「社内でもトップクラスの仕事ができる人、だろ? どんな奴かくらい観察するさ」
「俺は別に・・・・・・がんばって手に入れたポジションじゃねぇよ」
「ああ、見てればわかる。あんたは、察するのが上手い」
「ご名答。なんとなく相手の欲しい言葉とかがわかるんだよね。それを汲み取ってたらこんな結果になった」
「いいじゃないか、評価に繋がってるんだから」
「まぁ、そうなんだけどさ。でもこれって実力っていっていいのかどうなのか」
「お前の武器だよ、胸を張っていい」
「そうか。何故かお前が言うと説得力あるな」
「・・・・・・俺も同じだから」
「は?」
「俺もそれができると言っている。お前みたいに上手く使えてはいないが」
「なるほど!! そりゃ俺の行動もわかるわけだ。ようやく合致したわ」
「驚かないのか」
「何故? 昼前のやりとりで見せてくれたでしょ? それで十分」
「ああ、そうだな」
昼飯の時間も終わりに近づいたので、会計をすませて社に戻ることにした。




