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ソリアナの最後の転生 だからのんびり楽しく旅ぐらしがしたい…だけどなぜかいつも波瀾万丈  作者: 青山心為
第一章

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7 魔女の歩く家 後編

「魔女の家が歩いた!!!」


 男の子たちは開いたままのドアから顔を出し、興奮した様子で流れていく風景を見ていました。女の子たちは驚きすぎて言葉が出ません。魔女の家の下から生えているがっしりとした巨大なニワトリの足が前へと進んでいく様子を、瞬きもせずに見つめていました。


 魔女の家はゆっくりと、でも確実に、一歩ずつ前へと進み続けていました。ニワトリの足は軽々と魔女の家を前へと運びながら、滑らかに歩を進めていました。思ったほどの揺れもなく、これなら移動中も家の中で快適に過ごすことができそうです。



「魔女の家よ、止まってくれ!」


 みんなと一緒に魔女の家が歩くところを眺めていた父さんは、ハッとして我に返ると、魔女の家に止まるよう指示を出しました。ソリアナの指さした森の方へと進んでいた魔女の家は、さっきまで建っていた場所から五歩ほど進んだところで立ち止まりました。


「魔女の家よ、元いた場所まで戻ってくれ」


 父さんがもう一度指示すると、魔女の家は元の場所へと戻り、静かに動きを止めました。歩くのを止めても、ニワトリの足は座りませんでした。長いこと物置小屋として使われていた魔女の家ですが、今では二本足の高床式倉庫のように堂々と立っていました。魔女の歩く家は、どうやら完全に目が覚めたようです。


 父さんは、魔女の家の狭い玄関ポーチの床下から小さな階段を取り出すと、ドアの前に設置しました。それは、ほとんど梯子と言ってもいいような簡単な作りの、狭くて急な細い階段でした。立ち上がった魔女の家の床の高さは大人の腰ほどもありました。これからはみな、この階段を使って出入りすることになります。


「この階段を使うのも久しぶりだなあ。みんな、気を付けて降りてくるんだよ」


 魔女の家の中にいた子どもたちは、慣れない様子で慎重に階段を下りて外へ出ました。サレントは嬉々として、魔女の家のニワトリの足や細い階段の様子をメモにスケッチし始めました。床下をのぞき込んで、階段の収納してあった場所も丁寧に確認しメモにまとめています。シプロも一緒になって、床下から生えているニワトリの足をじっくりと眺めていました。


 母さんは階段を上って魔女の家の中に入り、鎧戸と窓を閉めました。最後にドアを閉めて外へ出て来た母さんは、満面の笑顔で言いました。


「この階段をまた使える日が来るなんて、本当に嬉しいわね。それにしても、久しぶりに上ってみたけど、こんなに急で狭い階段だったのね。すっかり忘れていたわ」



 階段を上り下りする家族の様子を見ていたシエナは、毎日畑の世話をするたびに狭い階段を上って道具を取りに行くのは大変そうだと考えていました。そこで、畑の道具の棚を魔女の家から出して、畑の近くの使いやすい場所に移してほしいと父さんにお願いしました。


「そうだなあ。魔女の家が目覚めたからには、もう物置きにはできないな。もっと畑に近いところに道具棚を移動させるのはいいアイデアかもしれないね」


「それじゃあ、勝手口の横の、あのあたりに置くのはどうかしら?あそこに道具の棚があると便利になって、とてもうれしいわ」


 実はシエナは、家の勝手口の階段の真横にあるスペースに畑の道具の棚があったら便利でいいなあと、ずいぶん前から考えていました。物置きだった魔女の家が目覚めて立ち上がったおかげで、畑の棚を便利なところに移したいという夢も叶うことになりそうです。


「それじゃあ、あの場所に棚を移動しよう。ふむ。雨除けの囲いも必要だな。プラート、サレント、シプロ、お茶の時間の後で棚を動かすのを手伝っておくれ」


「うん!みんなでやればあっという間だよ」


 プラートは笑顔で答えました。父さんたちの話を聞いて、サレントはメモのページを新しくしました。棚を置く場所を確認すると、手早く雨除けの囲いの設計を始めました。その隣にいるシプロも、腰に手を当てて張りきっています。


 母さんは、マージナルへの旅以来、本当に久しぶりに魔女の家の中に入りました。畑の道具の棚のあたり以外は使われていなかったため、家の中は埃っぽく、窓のガラスもすっかり曇っていました。長い間使われていなかったため、折り畳みベッドや、テーブルやイスなどの家具が傷んでいないかどうかも気になるところです。


「シエナ、レゼダ、メーラ、ソリアナ、お茶を飲んだら、私たちで魔女の家をきれいに掃除しましょう。部屋中埃だらけでひどいものだったわ。これからまたこの家に人が住めるように清潔にしなくちゃ」


 母さんは生き生きとした表情で女の子たちに話しかけました。シエナは笑顔で肯くと、お茶の準備をしに勝手口からキッチンへと戻っていきました。レゼダとメーラとソリアナは、まだ目を輝かせて魔女の家を眺めていました。


「スプルース、この際だから、梯子をもう少しなだらかにしたらどうかしら?それから、手が空いたときで構わないから、折り畳みベッドとテーブルとイスがまだ使えるかどうか確認してもらえる?」


「そうだな。またいつでも旅に出られるように、中も外もピカピカにしておくよ。さあみんな、続きはお茶を飲みながら話し合うことにしよう」


 父さんも母さんも、魔女の家が目覚めて本当に嬉しそうでした。ヴェルデ家の面々は、それぞれに魔女の家のことを話しながら勝手口へと歩いていきました。これからしばらくの間は、家族全員、魔女の家を整備することに忙しくなりそうです。


 シエナは、魔女の家が目覚めたお祝いにとっておきの紅茶をいれました。そして、今日のお茶の時間のお供は、みんなが大好きなバターをきかせたソルトクッキーです。ゆっくりと香りのいい紅茶を飲みながら、魔女の家のことについてそれぞれに話し合いました。




 ヴェルデ家の一番重要な役割は、癒しを行うために意識を愛の状態にしておくことでした。そのためには、自分自身の魂からの要求を満たし、喜びや幸せを感じる状態にすることが必要でした。魔女の家が目覚めたことは、ヴェルデ家の人々にとって喜びとなり、愛の状態でいることの大きな助けとなりました。


 このようにしてヴェルデ家の人々は、日々の生活の中で、楽しいこと、やりがいを感じること、幸せを感じることを見つけるのがとても上手でした。誰かの楽しみとなることに協力すること、自分自身の夢や希望を叶えるために手伝ってもらうこと、そういったことも自然に行われていました。ヴェルデ家では、みんなの意識がどんなときも愛の状態にあり、ごく自然に癒しの力を発揮していたのでした。


 父さんと母さんは、そんな子どもたちの様子をとても誇らしく思っていました。そして、そろそろ子どもたちをマージナルの街や村へと連れていき、実際に体験させてあげようと考えていました。でもその前に、人々のネガティブな意識の状態とその影響について、しっかり伝えておく必要がありました。


 そのためには、ソリアナの光のガイドさんに教えてもらうのが一番の近道ではないかと、父さんは思っていました。またスプルース自身も、意識の力のことについてまだまだ知らないことがあります。家族みんなで学ばせてもらえたなら、こんなに素晴らしいことはありません。


「ソリアナ、光のガイドさんと話せるかな?ちょっと考えていたんだが、ソリアナだけでなく私たち家族も一緒に、光のガイドさんから教えてもらえないだろうか?」

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