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ソリアナの最後の転生 だからのんびり楽しく旅ぐらしがしたい…だけどなぜかいつも波瀾万丈  作者: 青山心為
第一章

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6 魔女の歩く家 中編

 今日は、春先にしてはぽかぽかと暖かく、とてもいいお天気でした。家族で話し合っているうち、気がつけば正午を過ぎていました。ヴェルデ家では、朝七時に起床して、朝食が午前八時、午後二時ごろにお茶の時間、夕食が午後七時、午後十一時に就寝というリズムで生活していました。


 朝食を食べ終わったこの時間は、掃除や洗濯などの家事や、畑や動物たちの世話など、家族みんなで家のことをする時間でした。それらが終わった後に、意識の力の探究などそれぞれの興味のあることを学びました。子どもたちが小さいころは、父さんと母さんが読み書きや計算など基礎的なことを教えていましたが、今ではみんな大きくなって、両親と一緒に意識の力の探究ができるようになっていました。



「さて、少し頭を休めようよ。これから庭の魔女の家を見に行ってみようと思うんだけど、誰か一緒に見に行かないか?」


 父さんの話を聞いて魔女の歩く家に興味を持ったプラート兄さんは、実際に魔女の家を見に行ってみることにしました。今まではただの物置き小屋だと思っていたので、しっかりと意識を向けて見たことがありませんでした。


「オレ、魔女の家に入りたい!」

「あたしも!」

「私たちも行くわ」

「私も見に行くわ!」

「……俺も見に行くよ」


 シプロ兄さん、メーラ姉さん、シエナ姉さんとレゼダ姉さん、ソリアナ、そして考え込んでいたサレント兄さんも、全員が魔女の家を見に行くことに賛成しました。


「じゃあ、私とエルムも一緒に行こう。久しぶりに魔女の歩く家の様子を見てみようか」

「そうね。魔女の家のこと、みんなに教えてあげなくちゃね」


 父さんと母さんも加わって、家族全員で魔女の家の様子を見に行くことになりました。子どもたちはみんな、どんな仕組みになっているのか、ニワトリの足はどこにあるのか、中はどのくらいの広さなのか、いろいろなことが気になって仕方ありません。にぎやかに話しながら庭へと出ました。



 庭の隅にある物置き小屋は、とても古ぼけていて少し傾いでいました。壁と屋根は板で葺かれていて、どこにでもある普通の小屋に見えます。三角屋根の破風の下にドアがひとつ、左右の屋根の下に鎧戸のついた窓がひとつずつあり、よく見ると屋根の奥の方には小さな煙突がついていました。


「これが魔女の家で、ニワトリの足で歩くなんて!早く目が覚めるといいなあ」


 プラートは、感心して魔女の家をしげしげと眺めました。子どもたちはみんな目を輝かせて、それぞれに小屋のあちこちを観察しました。サレントは、メモを片手に黙々と小屋の様子を描き写していました。


「この魔女の歩く家は、私のお母様ヴィオラ・ポールポラのそのまたお母様、ブラン家のソフィアお祖母様から受け継いだものなの。実はね、ブラン家は、古の三賢女から続く魔女の家系なのよ。この魔女の歩く家は、古の三賢女の時代のとても古いものらしいの」


 古の三賢女は、この世界の神話や昔話によく出てくる、大昔の人々を大いなる知恵で導いたとされる女性たちでした。ミモレットは少女、ミュリエルは母、マキシーンは老女、彼女たちはとても賢く、三人の魔女、魔女の礎とも呼ばれていました。子どもたちも、彼女たちの出てくる神話や物語を読んでおり、その存在は知っていました。


 古の三賢女は、世界の根源の叡智の力によって、人間の意識にある思い込みや信念体形のフィルターを通すことなく、実際にそこにあるものをありのままに観ることができました。物事の最善の方法を見出すことや、人々の意識、魂の状態を観ることもできました。


 また、人間の意識の一側面である”自分”という個としての自我、エゴの考えていることを、その外側から眺めることもできました。彼女たちには、人々の心理を読み解き、物事を明るい方へと導くことができました。そしてそれらの知識から、人々が生きていくために役立つ知恵がたくさん生まれました。


 彼女たちに教えを請うた女性たちもまた魔女と呼ばれました。弟子となり知恵を身に着けた人々も、とても賢い人たちでした。魔女たちはひとりずつ責任を持つ土地が決まっており、その土地と知識は一対一で弟子に引き継がれました。


 彼女たちの役割は、人生の困難を和らげること、人生が危ういときに人々を助けることでした。人の魂がこの世界に生まれてくるとき、そして、人の魂がこの世界から旅立つときに人々を助けるという役割もありました。


「母さんのお祖母ちゃんの家は古の三賢女の家系なの?すごいわ!このお家にミュリエルたちが住んでいたのかもしれないわね」


 母さんの話を聞いたソリアナは、憧れの三賢女をとても身近に感じていました。ソリアナ、メーラ、レゼダ、シエナは、魔女の家のことはそっちのけになり、母さんの三賢女の話に聞き入っていました。ヴェルデ家の女の子たちは三賢女のお話が大好きでした。



 女の子たちが三賢女の話に夢中になっている中、シプロは、魔女の家がぴったりと地面に設置してあるのを見て不思議そうにしていました。どんな風なのか知りたかったニワトリの足が、ちらりとも見えないからです。


「父さん、ニワトリの足はどこにあるの?」


「今は足をたたんで座っているんだよ。立ち上がると、床が私の腰くらいの高さになるんだ」


「そんなに高くなるのか!早く見てみたいなあ」


「さあ、中も見てみるかい?」


 父さんは、ドアを開けて魔女の家の中へ入りました。プラートとシプロも父さんについて中へと入っていきました。サレントは魔女の家の外観を描き終わると、三人の後からドアをくぐりました。


 入ってすぐの右側には、スコップやシャベル、じょうろなどの畑の道具を置く棚があります。父さんは奥へと進んで窓を開け、いつもは閉めっぱなしの鎧戸も開きました。


 魔女の家の中は、窓から差し込む光に明るく照らされ、思ったよりも心地のよい空間でした。左右の窓の下に、折り畳み式のベッドがひとつずつ設置してあります。真ん中には小さなテーブルがひとつと丸イスが二脚、奥には小振りの暖炉もありました。


 子どもたちは、物置小屋の窓が開いたところを始めて見ました。そう、これはただの物置きではなく、魔女の歩く家なのです!みんなワクワクとした気持ちが止まらず、あちこちを見て回っています。女の子たちも、ドアや窓から家の中を覗き始めました。


「父さん、魔女の家に歩いてもらうときはどうやって頼むの?」


 シエナが何の気なしに尋ねました。


「魔女の家に歩いてほしい方向を指で示して、そちらに歩いてもらえるように頼むだけだよ」



 父さんの話を聞いていたソリアナは、くるりと振り返ると、自分の正面を指さしながら魔女の家に話しかけました。


「魔女のお家さん、こっちに歩いてください!」


 するとどうでしょう。家の下に畳まれていたニワトリの足がすっくと立ちあがり、ソリアナの示した方向へゆっくりと歩き始めました。窓から覗いていたシエナは、驚いて草の上に尻もちをついてしまいました。家の中にいた男の子たちもみな、びっくりした顔をしてドアから外を眺めています。


 魔女の歩く家は、久しぶりに目を覚ましたのでした。

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