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ソリアナの最後の転生 だからのんびり楽しく旅ぐらしがしたい…だけどなぜかいつも波瀾万丈  作者: 青山心為
第一章

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5 魔女の歩く家 前編

 父さんは、レゼダの疑問に笑顔で答えました。


「迷いの森はね、実は、マージナルから外へ出ようとするときにだけ道に迷うようになっているんだよ。とても古くて広い森だが、マージナルに向かおうとする場合には道に迷うことはないんだ」


 スプルースとエルムがこの家を建てて森で暮らし始めたとき、マージナルから森を抜けて外へ出ようとすると道に迷ってしまって進めない、という意識の力による設定に気がつきました。そして二人は自らの意識の力で、この家の周辺にだけ、マージナルから森に入っても道に迷うことがないように設定をし直したのでした。


「この森で道に迷うのは、マージナルから出ようとするときだけなのね……。だったら、私たちはもう、森を越えて外に出られないんじゃないの?」


「それはいい質問だね、メーラ」


 父さんは、何故だかちょっとやんちゃな表情になり、ちらっと窓の外を見ました。父さんの視線の先、庭の隅には、物置きとして使っているとても古い小屋が建っていました。


「庭の隅に古い小屋があるだろう?あれは(いにしえ)の魔女の住んでいた家でね、なんと、ニワトリの足が生えていて歩くんだ!あれで、私とエルムはランドラからここまで来たんだよ。あの冒険は楽しかったよなあ!」


「そうね、あの魔女の歩く家でここまでくる旅は、本当に楽しかったわね」


 父さんと母さんは、顔を見合わせて懐かしそうに笑い合いました。あの古い小屋が実は魔女の家で、しかもニワトリの足があって歩くことができると聞いた子どもたちは、そんな面白いものが家の庭にあったなんて!と一斉に驚いていました。


「あの魔女の家にはね、私たち人間のような”意識”がないの。だから、あの歩く家なら、道に迷うことなく森を抜けてランドラに戻ることができるわよ」


 メーラも他の子どもたちも、魔女の歩く家でランドラに戻れると聞いて、心の底から安心しました。特に、レゼダとシプロは魔女の家に興味深々でした。


「私、あの小屋が歩くところを見てみたいわ」

「オレは魔女の家で移動してみたいな!」


 子どもたちはそれぞれ、興奮しながら魔女の歩く家の話をしています。父さんは頭をかくと、何とも申し訳なさそうな表情で言いました。


「魔女の家が歩くところをみんなに見せてやりたいんだが……。ランドラからここまで歩いてきたことで相当疲れてしまったみたいで、あれから二十年、庭の隅に座りこんだきりずっと眠ったように動かないんだよ。そろそろ起きてくれるといいなあと思っているんだがね」


 子どもたちはちょっと残念に思いましたが、疲れて休んでいる魔女の家が早く元気になるよう祈りながら、歩くところが見られる日を楽しみに待つことにしました。自分たちの家の庭には魔女の歩く家がある!そう思うだけで楽しいワクワクとした気持ちが湧きあがってくるのでした。




 ソリアナのところに光のガイドさんが現れて最後の転生だと言われ、前世の記憶を思い出し、いろいろなことを教えてもらったこと。そして、ヴェルデ家の家族全員が前世の記憶を持っていること。

 マージナルは国ではなく、ネガティブな意識の人々を収容している場所であること。父さんと母さんは魔女の歩く家でランドラからマージナルへ来たこと。

 ヴェルデ家はランドラの癒しの家系で、マージナルの人々のネガティブな意識を癒していること。庭の隅にある魔女の歩く家なら迷いの森を抜けてランドラへ戻れること。


 たくさんのことを聞いた家族会議でした。その内容はとても濃いものでしたが、みんな晴れ晴れとした表情をしていました。何といっても、今まで話せなかった、前世の記憶があるということを家族と共有することができたのは、ソリアナ以外のみんなにとって本当にとても大きなことでした。

 子どもたちは、自分たちのルーツや持っている能力を知ることができ、これからどう生きていきたいかということについてそれぞれに考え始めていました。


 そして、ソリアナには思いついたことがたくさんありました。


「ねえ父さん、癒しの力についてもっと教えて!マージナルの人たちを癒すためにもっと何かできないかしら?意識の力とその使い方も、父さんと母さん、そして光のガイドさんから、これからもっと学んでみたい!そして、あの魔女さんのお家の疲れも癒しの力で癒すことはできないかしら?愛の意識の状態でお家に触ってみたらどうなるかなと思ったのだけど……?」


 ソリアナは父さんと母さんの話を聴いて、マージナルの人々や魔女の歩く家のために、自分に何かできることはないかと考えていました。家族はみんな、温かい目でソリアナを見つめて微笑んでいました。


「意識とその力については、まだまだ分かっていないことの方が多いのだよ。ぜひ、家族全員で、ソリアナの光のガイドさんからいろいろなことを学んでいこう」


 実は父さんも、ソリアナの光のガイドさんと話してみたくてうずうずしていました。そして、ハッとして何かを思い出し付け加えて言いました。


「そうだ!大事なことを伝えておかなくては。女王陛下と契約した、マージナルで癒しを行う期間は二十年だ。私たちはあと一年でランドラへ戻れるぞ。マージナルの人々全員を癒して、ポジティブな意識の状態にすることはとても難しい。これまでいろいろ試してはみたんだが、私たちには現状を維持するだけで精いっぱいだったんだよ。これからの一年は家族全員で力を合わせて、マージナルの人々の意識を癒すことにさらに集中しようと思う。ソリアナのアイデアも試してみよう」


 あと一年でランドラへ戻れるというニュースは、子どもたちを大いに喜ばせました。旅に出たことがない彼らは、魔女の歩く家でのランドラへの旅を思うと楽しみで仕方ありませんでした。そして、いつもは静かに話を聞いているサレント兄さんが、珍しく口を開きました。


「ランドラに戻るまであと一年か。魔女の家が目覚める方法も、みんなで探していかなくてはいけないな。全員で移動するとなるとあの小屋は小さいよな……。意識の力で部屋を増やせるかな?あの魔女の家はどんな仕組みで動いているんだ?この家に足を生やすことはできないだろうか?この家を動かすのに、何かいい方法があるはずだ……」


 サレントの言葉はだんだんひとり言のようになっていき、最後にはメモを取り出して何やら考え始めました。いつものように集中して、誰の声も聞こえなくなってしまいました。家族はみんな、楽しそうに考え事に入り込んだサレントをそっとしておくことにしました。

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