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ソリアナの最後の転生 だからのんびり楽しく旅ぐらしがしたい…だけどなぜかいつも波瀾万丈  作者: 青山心為
第一章

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4 ヴェルデ家の役割

「ひとつずつ順を追って話そう。まず最初に、私とエルムは、迷いの森の向こうにある隣国ランドラで生まれ育ったんだよ」


 父さんは静かに話し始めました。

 迷いの森に阻まれているため、隣国ランドラはマージナルから見ると近くて遠い国でした。父さんと母さんがランドラの生まれで、隣国からマージナルに来たということを初めて知った子どもたちは、みな一様に驚いた顔をしていました。


「そして、これが一番重要なことだ。ヴェルデ家は、ランドラで古くから続く癒し手の家系なんだよ。ヴェルデ家には代々、意識の力を使って人々を癒すことに長けている者が多く、私たちは、自分自身の意識を愛の状態に保つことで周囲の人々を癒しへと導くことができるんだ。愛のエネルギーを保った状態で誰かに触れると、触れられた人の身体の自然治癒力が高まり怪我や病気が治りやすくなる。そして、意識を愛の状態に保った者がその場にいると、同じ場にいる人たちの考えることや感じることが癒されて、自然にポジティブな状態へと変化していくんだよ」


 自分たちが癒しの家系の者だという思いもよらないことを聞いた子どもたちは、これからどんな話が飛び出すのかと、ある者は目を輝かせ、ある者は身を乗り出して、それぞれに父さんの次の言葉を待っていました。


「十九年前、私たちは、ランドラの女王からある依頼を受けてマージナルを訪れることになった。あの時、私たちは二人は二十歳で、成人して結婚したばかりだった。私たちが呼んでいる”マージナル”というこの場所の名前は、私やエルムが前世で使っていた言葉で"辺境”という意味だ。ここは、迷いの森によって世界と切り離された辺境の土地だ……。そしてここからが大切なことなんだが、実は、ここに住む人たちはみんな、ある理由でこの土地に集められているんだよ」


 父さんはひと息つくと、温くなったハーブのお茶で喉を潤しました。そして、母さんが言葉を引き継いで、マージナルのことをさらに教えてくれました。


「マージナルは大昔、優しさや思いやりといった愛の気持ちを理解できない、ネガティブな意識を持つ者たちを集めて隔離しておく場所だったの。彼らは、誰かから愛され心から大切にされるという体験をすることがなかったために、心からリラックスしたり、物事を楽観的に考えたり、何かを信じたり、人と分け合ったりといったことができなくなってしまったの。いつも悪いことが起るのではないかと心配し、恐れていて、どうしても物事をポジティブに考えることができなくなってしまった人たちなのよ」


 子どもたちはマージナルの真実に胸を痛めながら、とても真剣な表情で話に聞き入っていました。


「中には、心が極限まで狭くなってしまって、自分だけよければそれでいいと思っていた人々もいたわ。何かを欲しいと思ったら誰かから奪ってでも手に入れようとするし、自分の思うようにならない者は容赦なく押し除け、力づくで排除して、自分自身を実際よりも強く大きく見せることで自分を守ろうとしていたの。彼らは自分自身の意識の力を信じることができなくて、その力を思うように使うことができなかったわ。だから、意識の力を使って思うように現実を創り出している人々に対して、ひどく嫉妬していたの。そういったネガティブで攻撃性の高い人々は、社会でたくさんの問題を起こしたわ。そこで、彼らを集めてこの土地に隔離することにしたの」

 

 母さんはさらに話を続けました。


「マージナルが作られたとき、神に祈りを捧げることで彼らの問題が改善されるのではないかと考えられて、神殿が造られたの。彼らが心から反省して神に祈り、愛を感じる心を取り戻したら、それぞれの国へと復帰させる計画だったわ。けれど、神に感謝して祈ることを強制しても、一向に愛を感じることができるようになる者は現れなかった。人々の意識の力は弱くなるばかりで、何も楽しめず無気力になって、周囲に合わせているだけの、夢や希望を持てない人々が増えていったの」


 母さんは悲しそうに眉を寄せ、ハーブのお茶を一口飲みました。

 父さんは、母さんの肩に優しく手を置くと、話の続きを引き取りました。


「事態は悪くなる一方だった。ネガティブな意識に影響を受け続けた神殿の神官たちは、優しさや思いやりといった愛の意識の状態から遠ざかり、富や名声や称賛といったものに執着するようになっていったんだ。神殿は神への祈りの場としての役割を果たせなくなってしまったんだよ。守り石は、人々の意識や感情の状態を観察するためのものだった。それが今では、マージナルの人々から富を得ようと、人々が何を考えているかを知って何を流行らせて購入させるかという、神官が彼らをコントロールするための道具として使われるようになってしまった」


 父さんと母さんは視線を合わせ頷き合いました。子どもたちは話の先が気になって仕方がありませんでした。全員が両親へと意識を集中させて、彼らの言葉を待っていました。


「そして、ここからもっと事態は悪化していった。マージナルの人々のネガティブな意識の影響が、森の外へと漏れ始めたんだ。あるとき、ランドラの人々の意識にまでその影響が及ぶようになってしまった。ランドラでは、競争心が強くて人と自分を比較しては勝ちたがる人や、プライドが高くて他の人に厳しく当たる人、自分は特別だ、自分の方が立場が上だと威張る人が増え始めた。そして、怒り、憎しみ、恐怖、悲しみといったネガティブな感情をため込む者が少しずつ増加していったんだ。それらのネガティブな感情が身体に影響を及ぼしたために、深刻な病気になる者が増えていったんだよ」


 病気になった人々は、ヴェルデ家の人々によって癒され、自然治癒力が高まって元気になる人々もいました。しかし、病気はあまりにも急速にランドラ国内に広がっていったのでした。国民の苦難を憂いたランドラの女王は、その原因を調べさせました。程無くして、マージナルの人々のネガティブな意識のエネルギーが影響したために病気が流行っている、ということが判明したのでした。


「ヴェルデ家は女王から依頼を受けて、私たちがマージナルに赴き、癒しを行うことになったんだ。君たちも含めて私たち家族全員は、意識を愛の状態に保つことで、マージナルを癒し続けているんだよ」


 父さんと母さんは、意識がネガティブに偏ってしまったマージナルの人々を癒すため、迷いの森を越えて隣国ランドラからやってきていたのでした。そして、自分たちも癒しを行っていると知ったみんなの心には、誇らしい気持ちが芽生えました。


「自然の植物や動物たちには自我がなくて、常に意識が愛の状態にある。癒しを行うために意識を愛の状態に保つには、自然の中にいるのが一番なんだ。マージナルの人々がいる場所に長く滞在すると、私たちも人々のネガティブな意識の影響を受ける。そうなると、愛の状態を保つためにたくさんのエネルギーが必要になる。だから、村や町に住むことをせずに森に暮らしているんだよ。喧騒から離れて、静かに意識の力の探究をしたいという思いも、もちろんあるけれどね」


 父さんは笑いながら話を終えました。

 初めて聞く内容に驚いて言葉を無くしていた子どもたちも、やがて落ち着きを取り戻し、それぞれの聞きたいことを質問し始めました。


「そうだ、父さんと母さんはどうやってランドラからマージナルに来たの?迷いの森は通れないでしょう?」

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