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ソリアナの最後の転生 だからのんびり楽しく旅ぐらしがしたい…だけどなぜかいつも波瀾万丈  作者: 青山心為
第一章

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15 箱形の馬車

 ヴェルデ家の初めての勉強会は、マージナルへの理解が深まると同時に、みんなの心の内にある旅への期待感を掻き立てて楽しく終了しました。それぞれの日記には、マージナルへの想いと旅への希望が書き綴られたのでした。


 そして迎えた次の日の朝は、真っ青な空が目にまぶしい快晴でした。いつものように、母さんとシエナ姉さんの作ったおいしい朝食を取ったヴェルデ家の人々は、旅に出る準備として馬車のキャビンを改装することにしました。馬車は、馬小屋の隣の納屋に収納してありました。


 ヴェルデ家の馬車は、普通の馬車と同じように馬が引いているように見えますが、実際には父さんと母さんが意識の力で動かしていました。御者の席は二人掛けで、荷台の前面に張り出した形で屋根はありませんでした。荷台の部分にはUの字をひっくり返した形の骨が数本立っており、そこに白い帆布の幌がかかっていました。


 これまでは日帰りで森の近くにある村を訪ねるだけでした。馬車は意識の力で動くとはいえ、御者の席に誰もいないのに馬車が動いているのはマージナルではとても不自然なことでした。ですからこれまでの外出の際は、父さんと母さんが御者の席に座っていました。そこに同行する子どもたちは一人か二人でしたので、幌がかかった荷台の中で荷物に紛れて過ごしていました。


 しかし、家族みんなで旅に出るとなるとキャビンにも座席が必要になります。父さんは、キャビンの中をどんな作りにするか考え始めました。その隣でサレント兄さんは、馬車の絵を描くためにメモ帳と鉛筆を手にして待機していました。


「そうだなあ、ドアと窓のある箱形のキャビンにしようか。三人、二人、三人と三列にして八人分の座席を設けよう。座席は大きめで、間隔はゆったりと取ろう。荷物を積むスペースは座席と分けておこう。保冷庫とテント一式を収納できる広さを取って、荷物は中からも外からも積み下ろしできるようにしようか。そうだ、二人がけの御者席には屋根をかけた方がいいな。扉と窓には日よけとカーテンを備え付けておこうか」


 サレント兄さんは、父さんが思いつくままに話すアイデアをひとつずつ書き止めていきました。そしてアイデアが出尽くしたところで、父さんが想像したような箱形の馬車のキャビンの外装と内装を絵に描き表しました。馬車の上にも荷物が載せられるようになっていたり、サレント兄さんのアイデアも盛り込まれて素晴らしい箱形のキャビンが描き出されました。


「ねえ、ドアのために開けたスペースに折り畳み式の座席を作って、九人掛けにしたらどうかしら?御者の席にずっといたら疲れてしまうだろうから、全員がキャビンで座って休めた方がいいかなと思ったのだけど……」


 その絵を見てシエナ姉さんは、父さんと母さんも快適に過ごせるようにとアイデアを出しました。キャビンの中で全員で食事をしたり、休憩したりすることができた方がいいのではないかと思ったのでした。


「そうだな、全員がキャビンで休めるのはいいかもしれないな。座席は九席にしよう。サレント、ここのドアの前のスペースに折り畳み式のイスを一つ追加して描いておくれ」


 父さんが言うと、サレント兄さんは、キャビンの中の座席を一つ増やして描き直しました。すると母さんが、その九人分のイスの絵を指差して言いました。


「ねえ、座席の下に物を収納できるようにしたらどうかしら?子どもたちそれぞれのスーツケースを載せるスペースはないけれど、ここを自分の荷物を収納する場所として使えたら楽しいんじゃない?」


 旅に出るとなると、服や下着などの着替え、日記帳や筆記用具など個人の荷物も相当あります。それぞれの荷物を収納する場所が決まっていた方が、きっと旅の間も快適に過ごすことができるでしょう。


「それはいいアイデアだね。座面を持ち上げて開閉できるようにして、イスの下に個人用の収納スペースを設けよう」


 父さんは、楽しそうに頷いてみんなのアイデアに賛成しました。サレント兄さんは、みんなのアイデアが出るごとに情報を更新して、キャビンの内装の絵を描いていきました。キャビンはどんどん快適になっていきました。


 内装の詳細が決まると、それぞれの部分の高さ、幅、奥行きなどの数値や、材質、色、デザインなどの情報を細かく決めて書き込んでいきました。意識の力を使って、頭の中で想像したものを現実のものとして創造するためには、視覚的にイメージをすることがとても大切なのでした。


 意識の力を使って何かを現実化するときは、まず、創造したいものの主な材料を用意します。次に、創造したいものが現実になるところを想像します。そして、想像したものが創造され現実のものとなることを、現実化されるまで信頼し続けることで形にしていきます。


 現実化されるまでの時間は、意識の力の強さ、現実化への信頼の強さにより変化しました。意識の力が強ければ現実化も早くなりました。ヴェルデ家には意識の力の強い両親と子どもたちがいました。家族全員で焦点を合わせて意識の力を使うときには、現実化を起こすための時間を短縮することができました。


「よし、馬車の設定は決まったな。次は材料を用意しよう。車輪と台座はこの馬車のを使うとして、木材は納屋にある分で足りるだろう。カーテンと、イスの背もたれと座面の布と、中に詰める綿は母さんたち女性チームに任せるよ」


「ええ、わかったわ。みんなでかわいい柄の布を選びましょうね」


 母さんが女の子たちとカーテンの柄の相談をしている間に、父さんと男の子たちは馬車の幌と骨組みを取り外して片づけました。そして、新しい箱馬車に必要な材木などの材料を、裸になった馬車の台座の横に並べて置きました。


 意識の力で創造を行うための準備が整いました。ヴェルデ家の人々は、サレント兄さんが描いた馬車の絵をじっくりと眺めて心に刻み、手をつないで目を閉じました。それぞれに深い呼吸を続けて、心を落ち着けていきます。それぞれの内側が静かに落ち着き、完全に平穏になると、まぶたの裏側に淡い光が見えてきました。


 それは純粋な意識の力のエネルギーの場でした。そこに意図を置くことで創造を行うことができます。ヴェルデ家のみんなは、先ほど心に刻んだ箱形の馬車を創造することを意図しました。そして、そうなることを完全に信頼しました。


 どのくらいの時間が過ぎたでしょうか。目を閉じていたみんなの心に、創造が成ったという確信が訪れました。目を開けると、みんなでアイデアを出し合い、サレント兄さんが描いた通りの、ぴかぴかの新品の箱形のキャビンが完成していました。


「わあー!かっこいい馬車ができたね!」


 レゼダ姉さんとメーラ姉さんは、大喜びでドアの前に置かれた小さな階段を上り、ドアを開けて中に入っていきました。シエナ姉さんは嬉しそうに、荷物を入れる場所を馬車の外から開けて確認しています。


「中はすごく広いぞ!これならみんなで乗っても大丈夫だね」


 シプロ兄さんも二人に続いてキャビンへと駆け込み、窓から顔を出しました。父さんとサレント兄さんは、馬車の細かいところを確認していました。プラート兄さんも父さんの隣で確認作業を手伝っていました。三人は、キャビン内の温度を快適に調節する設定や、走行しているときの地面からの衝撃を吸収し和らげる設定、箱馬車が実際よりも小さく見える設定など、思いついたものをすべて意識の力で設定していきました。


 母さんと女の子たちで、カーテンとイスの背もたれと座面を作ったら馬車のキャビンは完成です。今日はもう休むことにして、馬車の内装、テント、保冷庫などは、明日作ろうということになりました。みんなは完成した箱馬車の話で盛り上がりながら、家へと戻っていきました。

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