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ソリアナの最後の転生 だからのんびり楽しく旅ぐらしがしたい…だけどなぜかいつも波瀾万丈  作者: 青山心為
第一章

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14/22

14 マージナル

 マージナルはこれまでの数百年間、広大な迷いの森によって世界そのものから切り離されていました。マージナルができた最初のころには、自分たちがここではない場所から連れてこられたことを覚えている者たちもいました。彼らは、迷いの森を抜けて故郷へと戻ろうと、マージナルからの脱出を試みました。


 しかし、何度挑戦しても迷いの森を抜けることはできず、誰一人としてマージナルを出られた者はいませんでした。そして人々は、外の世界への興味を失っていきました。何世代も経過するうち、マージナルに住む人々は、森の向こうにもっと大きな世界が広がっていることをすっかり忘れてしまいました。


「マージナルの人々の意識をポジティブな方へと導くため、祈りの場を提供していたはずの神殿までが、ネガティブな意識のエネルギーにのまれてしまった。光のガイドさんの話から考えると、マージナルの人口に対して神官の人数が少なすぎたんだろうなあ。今では神殿と神官たちは、富と権力を手にするために人々の思考をコントロールしようとしているようなんだ。マージナルの人々にみんなと同じことをしていないと不安になるような暗示をかけて、流行を作り出し、すべての商業や産業を支配しているらしい」


 マージナルでは、全ての商業、産業によって出た儲けの二割を神に捧げるために神殿に納めることが義務付けられていました。物が売れれば売れるほど神殿は潤うため、神官たちは言葉巧みに人々の心を操って流行を作り出し、消費行動を促して富と権力を手にしていたのでした。


 マージナルの人々は、自分にはこれがあれば幸せになれると心の底から信じていました。日々忙しく懸命に働き、なけなしのお金を払って欲しい物を手にしました。そのようにして不足感から何かを手にしても、彼らの心は満たされませんでした。富と権力を得た神官たちも、物欲を満たしたはずの人々も、みな幸せとは程遠い意識の状態で生きていました。


 そんな風に生きているうちにマージナルの人々は、自分にとっての楽しみとは何か、自分はどんなことをしているときに生き生きするのか、自分自身が真に望んでいることが分からなくなっていきました。そして、生きることへの意欲そのものが失われ、自分自身の人生の未来や将来に夢や希望を持てない人々が少しずつ増えていきました。


「マージナルの人々が生きる意欲に欠けてしまっているのは、意識のエネルギーがどんどんネガティブになっていったことが最大の原因なのよ。彼らの意識がまたポジティブな状態に戻れば、どこかに旅に出たいだとか、そういった夢や希望を持てるようになると思うの。ここまで彼らの意識がネガティブに傾いてしまったからには、もう自分たちだけではどうにもできないでしょう。誰かが彼らに助けの手を伸ばすことが必要なのだと思うわ」


 母さんは前世、嘔吐と下痢に苦しみながら小さい子どものころに亡くなりました。病気が発生する原因もわからず、薬もないという状況で、同じ学校に通っていた友達も何人も亡くなったのでした。不安と恐怖の中でたくさんの人々が亡くなった、あの前世のときのような苦しみを繰り返させたくないという思いが、母さんの心の真ん中にありました。


「そうだな、マージナルの人々のために私たち家族ができることは何か、それを探しながら最後の一年間はあちこち旅をしてみよう。私たちは私たち自身の人生を楽しみながら、自分たちにできることをして周囲の人々の幸せに貢献しようじゃないか」


 家族の全員が、父さんの言葉に心から賛成して肯きました。旅に出られると聞いて、子どもたちはみんな笑顔になりました。家族みんなで旅に出るのが楽しみで仕方ありませんでした。


 そして、何かを楽しいと思うときのわくわくしたエネルギーは、とてもポジティブなエネルギーなのでした。ヴェルデ家の人々が生活を楽しんでわくわくしたエネルギーで過ごしていることも、マージナルの人々に良い影響を与えていました。



 ソリアナは、自分自身も周囲の人々もすべての人々が幸せに生きられる世界、そんな世界を創造していきたいと心から思いました。そして、辛い体験をしている人々を助けてあげたいと思う一方で、重く苦しい体験から抜け出さない人々の選択を尊重してもいました。


 ソリアナは前世、たくさんの人々の悩みの相談に向き合った体験から、ドロドロとした人間ドラマのような体験から抜け出したくない人々がいることを受け入れていました。彼らは、重く苦しい体験の被害者でいることを無意識に選択していました。悪いのは相手で自分は悪くないから、自分自身の人生の責任から逃げることができる、そういう設定をしていたのでした。


 光のガイドさんから、自分たちの魂の本質はみんな同じで、それは大いなるひとつの意識なのだと聴いたことが、ソリアナに大きな気づきを与えました。私たちはひとつの意識から生まれ、何千回もの人生を経てひとつの意識に帰るのならば、その間のすべての選択はひとつの意識によるものなのではないか、ソリアナはそう考えました。


 人々は、意識のエネルギーがポジティブなときにはポジティブな選択をし、ネガティブなエネルギーのときにはネガティブな選択をしているだけなのでした。ですから、どうありたいかは自分で選べるのだということを伝えてあげれば、自分で選択できるようになるのではないかなあと思いました。


 旅の間にマージナルの人々と交流してみたいなあと、そんなことも楽しみになったソリアナでした。



「父さん、魔女の歩く家で旅がしてみたいなあ」


 シプロ兄さんの声で、ソリアナは我に返りました。ソリアナがじっくりと考え事をしているうちに、勉強会の話題はどうやって旅をするかということに移っていました。


「シプロ、それは難しいだろうな。何しろ、マージナルの人々は意識の力があることを忘れかけているんだ。家が歩いているところを見たら大事になるぞ!神殿に取り上げられるかもしれないな」


 父さんは魔女の家がマージナルを歩いているところを思い浮かべながら、さも楽しそうに言いました。子どもたちはシプロと同じように、魔女の家での旅を期待していましたので、みんな少し残念そうにしていました。母さんはそんな子どもたちの様子を見かねて、みんなに言いました。


「キャビンを広くしたりして、快適に移動できるように馬車を改装しましょうよ。見た目は意識の力で設定すれば何とでもなるし。そして、テントを積んでいってみんなでキャンプしたらどうかしら?旅に出るのは久しぶりだから本当に楽しみだわ」


「キャンプはいいね!馬車のキャビンの改装、テントやシート、マットレスの準備、やることがたくさんあるなあ」


 プラート兄さんは腕まくりをして張りきっています。サレント兄さんは静かに話を聞きながらも、目を輝かせてメモ帳にびっしりとメモを取っていました。


「各地のおいしいものも食べたいわね。名産品やそこにしかない食材があったら試してみたいわ。安心のために、保存食も準備したほうがいいわね。馬車に乗せられる大きさの保冷庫も作って持っていきましょう」


 シエナ姉さんが笑顔で言うと、サレント兄さんはそれもメモに書き加えていました。その後しばらく、旅の気分を盛り上げるためにスーツケースが欲しいだとか、日よけの帽子も必要ではないかなど、子どもたちの意見が尽きることはありませんでした。

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