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陽だまりのセプテット  作者: ÷90
第1章 邂逅

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9/40

第9話 来愛

12/5 シーンの切り替え方、変更しました。


 気のせいかな最近気になる事がある。

アンソレイユでは食事の時の席は決まっている。だがリビングは自由で誰がどこに座ってもいい。つまり、早い者勝ちだ。


 なのにだ最近必ず俺の隣りに花音がいる。

最初は偶然かと思った、3回連続マグレなんて良くある話。でも5回連続を超えて来ると何かの大いなる意志の存在を認めざるを得ない!


 何が言いたいかと言うとどう対処していいのかわからん! 話し掛けてくるから無視する訳にもいかない。


 聞いてみる? そんなに俺の隣りにいたいのかい? ベイビー! キッモ!

DTで陰キャは何も出来ず悶々とする日々を耐え忍ぶしかないのだ!


「どしたのボーとして食べる? はい」

ええ!? 花音の指から俺の口に直接お菓子が運ばれる、この行為はスプーンや箸に比べると威力は落ちるが間違いなく ”あーん” ! そう ”隠れあーん” と名付けよう! こ、恋人じゃないと許されない行為!

(※個人の感想です)

しかも物理的距離は心の距離に比例する!

(※諸説有り)

 嫌いな人間とは距離を空け親しいものほど近づく。つまり花音の今の距離はお付き合いしてもいいよ的な距離!


「どしたのアタシを見つめて……ハハーン、好きになっちゃった?」

んんーー! 首を傾げて可愛いく言うな!

何か場の皆さん凍りついてない?


「お菓子の事じゃん、何勘違いしてんのよ!」

くっ! ニマーて笑うな、わかっててやってんな!

「そうだ美優姉、可愛い服見つけてさあ」

あ、行ってくれた。わかっててからかいやがって、ダメだ陰キャな俺ではカースト上位ランカーの花音には敵わん。


 そう言えば夢野姉妹は割と一緒にTVや動画見たりしてるが来愛はあまりリビングで見かけないな。





 次の日の昼休み、俺は机でうなだれていた。

「響介、早く来いよ!」

「あーい」

いつも昼は憂太の席を中心に固まって5人で食べる。

窓際最後列、主人公席じゃん! 羨ましい。


「何かあった? 響介、あからさまに元気ないね」

「槇斗……実は」

「俺が当てたる、好きな子できたろ! ん?」

こういう時は鋭いな憂太、若干違うが。


 グシャ!

「何ですって? 詳しく教えてよ、響介」

ヒィー、あの潰れたパンは俺の未来か!?

「戦の匂いがするのう」

言えん! 絶対言えん! 玲彩の前で花音の話しは

できん! それにまだちょっと気になるだけだし、好きとかではない。


「違う、違う、バイトで疲れてるだけだよ」

「何だ、つまんねーな」

「はう! パンがなんで小さくなってんの? 怪奇現象?」

「お前の脳みそがな」

「憂太もでしょ!」

〈皆んなの前でいい辛い事だったら後で聞くよ〉

槇斗ーー! 心の友よ!


「そう言えばあのアニメ見た?」

隣りの奴等の会話が聞こえてきた、アニメか……。

はっ! 


《海斗くん!》


「お前ら夏グラってアニメ知ってる?」

「知らねーな」

「ゴメン僕は、アニメあんまり見ないんだ」

「戦国ものならわかるぞ」

「んー、名前は聞いた事あるけど、それがどうかしたの?」

「ああ、知り合いにそのゲームの海斗くんに似てるって言われてどんなキャラか気になってたんだ」

「ケータイで検索すれば1発だろ」

「あ、そうか! 高校入ってからケータイ持ったから気づかなかったよ」

「響介、不憫なやつ。ヨシ、俺様が調べてやんよ!」


「へー、楽しみー、どんな感じのイケメンくんかなー」

「ほう、夏色グラフィーって言うのか。うん、うん、で、海斗、と……」

「ね、ね、出た? 見せて、見せて!」

「……」

「どうしたのさ憂太?」


 憂太は何故か俯いたままスマホの画面を槇斗に見せた。何してんだ?

「え、えーと……響介、その似てるって言った人ってどんな感じの人? ハハ」

なんの質問?

「うーん、一言で言えば変わってるな、あと間違いなくオタク!」

「何よ憂太、アタシにも見せなさいよ! ゲッ!」


ゲッ、だと? 海斗くんを見て?

「た、頼む槇斗から教えてやってくれ、お、俺には無理だ」

なんか震えてないか憂太? えっ、玲彩も?

「響介、その人とどんな関係かわからないけど怒らないで聞いてくれ。海斗くんとは」

「海斗くんとは?」

言い辛いほどそんなに変なキャラなのか。


「犬だよ、ハハ」

「い、いんぬ?」

「アハハハハハ!! もうダメだ耐えらんねー」

「頭ボッサボサだよ、おかしー!」

「鼻水も垂れとるのう」

「なんでも主人公が大好きだったおじいちゃんの名前を付けたらしいね、うん、い、いい話しだ」


 皆んな大爆笑じゃねーか! 槇斗だって苦笑いしてるし、人間ですらなかったのか!!

なんつーハイカラな名前の爺さんだよ!

そんな思い入れのある名前付けた犬に鼻水垂らすな!




 俺の怒りは頂点に達していた、アンソレイユに帰った俺はすぐさま来愛を探した。


 バン!

「来愛はいるか!」

「ヒィ! お、お兄ちゃん……お、お部屋です……」

「来愛ーー!!」


カン! カン! カン! カン!(コップを箸で叩く音) 「御乱心! 御乱心!」

カン! カン! カン! カン!

「御乱心! 御乱心!」

「どうした、ココ?」

「なあに? 泥棒?」

「お、お兄ちゃんが、来愛さんの部屋に討ち入りしましたーー!」


「来愛ー!!」

「何事ーー!? 女の子の部屋に不法侵入ですと!

この不届者めー! この刀の錆にしてくれようぞ!」

何でんなモン持ってんだよ!?


「安心せい、これは鞘から抜けん!」

「そんな安心する情報敵に漏らすな!」

「何用じゃ!」

「俺の事海斗くん、呼ばわりしてどんなイケメンかと期待してりゃ、犬じゃねーかよ! バカにしてたのかー!」


「黙って聞いてりゃ聞き捨てならないね、海斗くんにどれだけ小梅ちゃんが助けられたと思ってんるにゃん!! 」

「知るか!」


「どんなに奈落の底に叩き落とされても這い上がり、何度も死戦を潜り抜け、ハリウッド女優として小梅が栄光を掴めたのは、海斗くんが側で支えてくれたからにゃん!」

犬だよな……。


「ハリウッドってそんなヤバい所じゃないだろが! 化け物でもいるんかい!」

「いるにゃん! マグマに落ちても復活するサイボーグやマスク外したら蟹みたいな口してるエイリアンとかが!」

「それは全部映画の作品の話だろ!」


「でも小梅は気付くのです、ここは私の本当の居場所じゃないと、そして小梅はハリウッドの栄光を捨て小さな町でひっそりと駄菓子屋を始めるのでした、海斗と一緒に……」


「なんつークソゲーだよ! せめてタイトル回収せい!」

「酷いにゃん! この神作品をクソゲー呼ばわりしないで!」

「あんなボッサボサの髪で鼻水垂らした犬にそんな重要ポスト任せる作品があるか! あんなクソ犬と一緒にすなー!」


「ここに来た時の響介くんとソックリでしょ!!」

ガーーン!! 言われてみれば確かに‥‥‥。

だからイラついたのか、既視感からだった!?

でも……。

「だからって犬はねーだろ!」


「キャーー!!」


「美優姉、来愛の悲鳴!」

「ヤバい! 花音行くよ」


「イヤーー! 妊娠するー!」

「妙な事言ってんじゃねー!」

「響介、何やってるのよ!? 女なら誰でもいいの!?」

「響! 早まるなー! ちゃんとゴム付けたのか!」

「皆さん何言ってんですか! 止めてくださいよ!」


 俺は取り押えられた。

「響介、どうしたのよ、急に」

「花音、いや、何というか、その」

「はっきり言いなさいよ」


「ボクのマスコット、海斗くんが犬だったので響介くんがショックを受けて、襲って来たという酷いお話しですにゃん」


「な、お前!?」

「ああ、響に似てるってやつ?」

「画像はこちらです!」 

「おまっ」

来愛はその画像を皆んなに見せた。


「ダッサ、何この犬! 来たばかりの響介ソックリじゃない!」

「ほんとクリソツだな」 

「ココは可愛いお犬さんだと思うよ」

美優さんと花音は顔を見合わせ大爆笑してる。

ク、クソー!


「く、来愛はさ、海斗くんの事どう思ってるんだい?」

笑いを(こら)えながら美優さんが質問した。

「とってもチャーミングで、大好きにゃ……」

「その海斗くんと響が似てるんだ?」

「う、うん」

えっ、て、ことは……来愛真っ赤じゃん、あ、泣きそう。


「ほら、皆んな出るよ、響、私が何言いたいか来愛を見ればわかるよね、器のデカい男になりな」

ポンと肩を叩き美優さんは皆んなを連れて部屋を出て言った。


「来愛、ゴメン! 悪気なかったんだな、あんなダサい俺でもそう思ってなかったのか?」

来愛は大粒の涙を流しなら何回も頷いた。


「目、目が隠れる位のボサボサの髪もオドオドしてたとこも、か、可愛いと思ってた……。でもゴメンなさい! 響介くんに嫌な思いをさせた! ホントにゴメンね……」

ああ、ダメだ……来愛の泣き顔に体が勝手に動いていた。

ギュ!

「えっ? 響介くん!?」

素直な来愛の気持ちと泣きじゃくる姿に、込み上げる衝動を抑えきれず、俺は来愛を思わず抱きしめていた。



      ==================



「お兄ちゃん遅いですね、大丈夫かな?」

「そうだな、まあ静かだから大丈夫だろ? 意外に仲直りして乳繰りあってたりしてね、アハハ」


バン! 

「そんな事させないわ!」

「落ち着きな花音、テーブル壊れるって。冗談だから、私が行くよアンタは待ってな」

花音、ソワソワしてんなー、余計な事言っちゃったか。今の花音の前じゃ響介絡みの話しは迂闊な事言えないな、チョット様子見てくるかね。



どれ、悪いがチョット覗かせてもらうよ。

「へー、来愛って漫画家志望だったんだ。だからいつも部屋にこもってたのか」

「あの、あのね、きょ、響介くん! き、聞いてほしい事があるの!」  


 おっとこれ以上は聞かない方がいいな、それにしても、いい雰囲気じゃん。2人でベッドに寄りかかって肩寄せ合いながら話してると恋人にしか見えないな、覗いてゴメンね。


「どうだった美優姉! 変なことしてなかった?」

「ハハハ、花音、大丈夫だよ。どうやら仲直りしたみたいだ」

「それならそうと、何で出て来ないのよ? やっぱ見て来る!」


「まあまあ、争いの後だ、積もる話しもあるでしょうよ、だからさ、も少し2人で、ね?」

危ない、危ない、今の花音があの状況見ちゃったらどうなる事やら。



      ==================



「来愛、話し方普通だね」

語尾ににゃがない。


「うん、アレはね好きなキャラのマネなんだ、にゃんにゃんパラダイスのにゃー子。」

「ハハ、色んなネコが出てきそうなタイトルだね、癒されそうだな」

「そ、そっちの、にゃんにゃんじゃない……」

「えっ?」

「エ、エッチな方……」

まさかの18禁だった。


「ボクね、中学生の時、不登校だったんだ」

過去を話し出した来愛の顔が辛そうで俺はそっと手を握った。

「ボクもね、人と話すのが苦手なんだ、自分の気持ちを知られるのが怖くて周りの顔色見て合わせてた、その内自分のホントの気持ちがわからなくなっていったんだ」


《来愛はさ自分の意見はないの? いつも誰かに同意してるだけじゃん》


「それから人と距離を置く用になったら余計自分がどう振る舞えばいいのかわからなくなって、そのうち学校に行けなくなったんだ」


 俺が言うのも何だが、ちょっとコミュ障の気があるかなとは感じてたが、そんな過去があったのか。


「そんな時支えになったのがアニメだったの。いつかボクも人に勇気を与えたり感動する作品を作りたい。でもね学校にはやっぱり行けなくて引きこもってアニメや漫画ばっか見てた。お父さんはそんなボクの事を恥ずかしいとさえ思ってたみたい。会うたび小言ばっか言われて家の中でもビクビクしてたの。そんなボクを見かねたのか、ある日お母さんがある所にボクを連れ出したの、綺麗な人がやってるシェアハウスへ」


「それってもしかして……」

「そう、ここ、アンソレイユだよ。お母さんと離れるのは嫌だったけど、お母さんは栞さんの事知ってたのかな? ここなら、この人なら大丈夫だからって。最初は何言ってるか分からなかったけど、ボクをお父さんから離したかったんじゃないかなって」

「そっかその時はもう、シェアハウスやってたんだ」

「うん、ボクが2人目だよ。美優ちゃんはもう居たの、フフ、最初は酷かったんだから荒れてて。あっ、その話は内緒ね?」

「ああ、わかってる」

まあ、確かにそんな感じはあるな、あの人は。


「栞さん達も色々あってそれでも、一華ちゃん、ココちゃんも一生懸命生きてるのがわかったらボクもここでなら頑張れるかなって思えたんだ。栞さんが毎日すっごく真剣に向き合ってくれたから今ボクは夢を追って生きて行けるんだよ!」


 栞さんって本当に強くて温かい人なんだな。

それから俺達はアニメや漫画の話しで盛り上がった。その時確かにそこには優しい時間が流れていた。


 俺はふと思ったアンソレイユはもしかして心の傷ついた子供達を受け入れているのではないかと。

 心の傷……それは栞さん達家族もまた同じだという事に俺は気付いていなかった。



   

  アンソレイユ、それは陽だまりを意味する


  暖かくて心地いい場所、シェアハウスに

  ピッタリな名前だと思っていた

  

  だがそれは勝手な思い込みだったのかも

  知れない、何故ならその意味を知る時が

  来るから、それでも俺は暖かくて心地い

  い場所だったと思いたい

  



         例えそれが


     祈りに近い言葉だったとしても







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