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陽だまりのセプテット  作者: ÷90
第1章 邂逅

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第7話 その先の景色が見たいから


「ねぇねぇ、響介、部活何入んの? 陸上部入りなよ、陸上部!」

「玲彩が陸上部だったとはね、軽音楽部か思った。」

「何でだよ響介、こんなバカに使える楽器なんかないだろ」

「うるさいよ憂太、アンタだって変わんないからね! それより響介は何でそう思ったの?」


「ほら玲彩のヘアピンに付いてんのピックじゃん?」

「あのギターで使うやつ? 僕も気になってたんだその形、ヘアピンにしては変わってるよね」

「えっ、今アタシ注目されてる? モテ期来た?」

「ピックがな」


「へへッ、これはね、お守り! これを付けて走ると速くなるんだよ!」

「そんなチートアイテムあんなら、皆んな付けるわ」

「もう、さっきから何よ憂太は! それより響介、陸上部入ってよ」


「ダメだ、響介はサッカー部が頂いた!」

まだ、頂かれてないが。

「囲碁部じゃ」

「ねーだろが!」

「ゴメン俺バイトあるから入れないんだ」

「えー、やだやだやだー、入ってよ陸女!」

「やっぱアホだなお前、陸上部入っちまったら自然と男子の方だろが、女子のほうにいたらそれはただの変態だ!」

「響介なら変態でもいいの」

良くないわ!


「槇斗はどこ入るんだ?」

「僕も入らないよ、塾があるからさ」

「そっか本日代表だもんね、頭いいのかー、将来ボーボーだね」

「アソコの毛か!」

「アソコって、憂太サイテー!」

「サイテーはお前の脳みそだろ! 良くここ受かったよな! あっスポ待か」

「そうスポーツ侍さ!」

「ニンベンじゃなくギョウニンベンな」

「……」


「これ以上恥をさらすな、幼馴染みとしてメッチャ恥ずいわ!」

「憂太がスポ待何て変な略仕方するからよバカ!」

「いいや、侍と間違えたお前がバカだ!」

「そうじゃ玲愛、侍らしく切腹せい!」

「あーん、響介助けてよー、アタシが可愛いからってイジメて来るの」

「殺すか」

「激しく同意」


「そう言えば何のバイト? 飲食? ホールだったらアタシ毎日行くよ!」

玲彩ならホントに来そうで怖い。近いものがあるだけに言葉を選ばないとな。

「アンティークショップだよ、シェアハウスのオーナーがやってるんだ」

「え、あの美人オーナー栞さんが! 俺サッカー部辞めるわ! そこでバイトする!」

「なあ憂太ももしかして、特待生?」

「言ってないのによくわかったな響介」

「うん、ソックリだからね」

「うん?」

玲彩と憂太は不思議そうに顔を見合わせた、似たもの同士罵り合ってたのか。


 そう言えば槇斗が元気ないように見える。

「槇斗何かあったか? 元気ないな」

「ハハ、新しい環境で疲れたかな?」



======


「うわー、凄い美人だな、夢野さんとはまた違った美しさだな小鳥遊鈴羽(たかなし すずは)さん!」

「頭もいいし受験トップだろ? 噂じゃほぼ満点だったらしいぞ!」

「ウソ、なんでここに? 一応ここも進学校だけど南だって余裕で入れたじゃん」

「病欠じゃなければ彼女が代表スピーチしてたのかー、見たかったなー」


「アンタだって顔は負けてないのよ、一華」

「カナ、顔で何の勝負するのかしら」

「もう、そういうとこだよ、少しでも愛想振り撒けばアンタだったら男落とし放題じゃん!」

「興味ない、それより少しでも速くなりたいの。あの子に勝ちたいから」


「もう、おこぼれほしいのにさ」

ペシ!

「それが本音か」

「へへへ、あっ、スピーチくんだ! メガネが似合うイケメンもいいよねー、誰かに用かな? あっ入らないで帰っちゃった残念」


 鈴羽、何で南受けなかったんだよ。僕への当て付けか?


《私は本気で槇斗の事……》


 住む世界が違うから、これ以上一緒にいるのが辛い結果しか見えない未来だとわかったから、親に反対されてもこの学校を選んだのに。


     何でお前がいるんだよ



======


「ヨシ、部活だー! 風を切ってくるぜー!」

「ダサい、ダサい、風は切るもんじゃねー、感じるもんだ!」

「恥ずかしくないのアンタ」

ドッと笑いが起きた、ホントコイツ等のやり取りは最高だな、良かった槇斗も笑ってる、けど何か違うな。


「途中まで一緒に帰ろう、槇斗」

「ああ」

道中他愛もない会話で盛り上がったが、さて、どうしたものか。槇斗が何か悩んでいる気がする。聞くのは余計なお世話か? それとも、槇斗とはそこまでの関係じゃないのか?


 弱い心が選択肢を増やす、相手の気持ちに踏み込むのが怖かったり、周りの目を気にしたり、何か言われて傷つくのを恐れたり。

だから迷うんだ、逃げる選択肢ばかりが増えていくから。


 もう答えは出てるだろ? 進めよ! その先に見たい景色があるのなら。


 落ち着け、まずは深呼吸だ! スーハー、スーハー。

「何してんの響介?」

「いや、あの、思い切って聞く! 嫌でも答えてほしい! アレ? 違うか?」

しまった出だしでコケた。

「ハハハ、嫌な事は言いたくないな」


「玲彩と憂太のやり取り面白いよな、いつも笑わせてくれる、でも嫌なんだよ、笑いきれてない槇斗を見るのが」 

「……まだ会って数日じゃん、そんな響介に僕の何がわかると言うんだい?」

うっ、槇斗の雰囲気が変わった、ビビるな、気圧されるな!

「その通りだ知らないさ、会ったばかりだし」

「えっ」

「でもな、悩んでる位見たらわかるんだよ、友達だから力になりたいんだよ!」


「アハハハ!!」

ソレは槇斗らしくない大きな笑い声だった。

「ほんと、キミは真っ直ぐだな響介」

槇斗……。

「友達だろって、こんな真剣に言う人いたんだね、ハハハ」

「茶化すなよ、友達じゃなかったのか?」

「友達だよ、だけど話せない、僕自信整理がついてないんだ」


 違う、止まるな、喰らい付け、出し切れ! ここまで話して諦めんじゃねえ!

「入学式のスピーチ驚いたよ、急に頼まれたのにさ、いとも簡単に堂々とやり遂げた槇斗が羨ましかった、カッコ良かった、あんな風になりたいと思った!」

「響介……」


 俺はスマホの写真を槇斗に見せた、変わる前のボサボサで陰キャなダサい自分を。


《髪切る前にさ、写真撮ろうよ》

《嫌ですよ美優さん、こんなダサい自分》

《響介、これからキミは変わる、今までのキミは黒歴史なんかじゃない、これから撮る写真はねスタート何だよ、ここから始まったんだって確認する為のさ、だから思いっ切りダサく撮ろうぜ!》


「えっ? 誰の写真?」

「入学式1週間前の俺だよ」

「ウ、ウソだろう? これはあんまりにも……。ゴメン、キミはこんな時、嘘付くやつじゃないもんな、聞いていいかい? そこまで変わった理由を……」 


 俺は槇斗に全て(さら)け出した、嫌われるかもしれない、友達でいられなくなるかもしれない。

でも何かそんな事どうでも良かった、槇斗に届けたい気持ちがあったから。


 話しを聞いた後槇斗の目にうっすら涙が浮かんでる様に見えた。


「俺が変われたのはダサい俺でも暖かく受け入れて支えてくれた人達のお陰だ、だから俺はその人達を裏切りたくない! まだ人付き合いとか苦手なもの沢山あるけど、元の陰キャには絶対戻りたくない! 人は出会いで変われるのなら俺は槇斗にとってそんな存在になりたいんだ! だから、だから1人で抱え込まないでほしい。こんなダサい俺で幻滅したかもしれないけどさ」


 人の気持ちは見えないから怖いんだ。

でもだからって決めつけて何もしないのは違う。

「言うな……言うなよ!」

えっ?

「ダサいなんて言うなよ、カッコイイよ響介、でも待ってくれ鈴羽の事は必ず話すよ。でも今は自分のやらなきゃイケナイ事に気付けたよ、キミのお陰でね。そう僕が逃げてたのは行き詰まった未来からじゃない、鈴羽の気持ちに向き合うのが怖かったからだ。わかってるんだホントはなんで南を受けないでここに来たのか、わかってて僕は避けてた、最低な男だね」


「俺よりマシだよ」

俺は色んな事から逃げ続けてきたから、きっと家族とだってちゃんと向き合えば違う未来になってたかもしれない。


「そうだね、キミよりマシだ」

「酷くない、槇斗」

「ハハハ、ありがとう響介!」


 と、届いたのか?

「槇斗ーー!」

「泣くなよ」

「だって友達辞められるかと思ったからさあ」

「ないよ、そんな事絶対ない! なんて顔してんだよダサいな、ハハ、でもカッコイイ、ダサカッコイイよ響介」

「褒められてんのか、(けな)されてんのかわかんねーよー!」

「アハハハ」


 この日から俺達の間に友達以上の何かが芽生えた。それ以降お互いにピンチな時に助けて合っていくことになる。


 後に思うこの日初めて親友ができたんだと。


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