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陽だまりのセプテット  作者: ÷90
第2章 風花〜儚く舞い散る雪のように〜

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37/37

第37話 アイアンメイデン〜あの日の君を探して〜中編〜 砕かれた恋心

1/17 脱字訂正しました。


「さあ、どこ行こうかしら?」

「やっぱ、さやポンちでしょ」

「アンタねえ、でもとりあえず行って先生に相談するのはアリね」


「お前らまでアンソレイユ出る必要なかったんじゃないか?」

「ホントは嬉しいクセに、シシ」

「あんな状態で1人にするわけないでしょ、傷の手当てと今後の事も考えたら紗夜子先生の所に行くのが正解かもね」

「2人とも、ありがとな」

正直やり過ぎたと思ってる、それは来愛の荊を突破出来る自信があったからだ。なのにその奥には何も見えなかったその奥に触れたのは心の闇か。


        アイアンメイデン


 中世ヨーロッパで使用されたと言われる空想上の拷問器具。中には無数の棘があるが致命傷に至らない為中に入れられた人間は苦しみ悶え続ける。


 来愛の主人格はその中で悶え苦しんでいるように感じた。だから一刻も早く助けなければ主人格が死んでしまう、そんな気がしてならなかった。


「響介、元気出して。ほら、先生のマンション着いたわよ」

チャイムを連打する一華を止める気力もない。扉を開いた紗夜子さんは呆れ顔していた。

「相変わらず突然だな」

「ヤッホー、ただいまなのだ!」

「響介、ケガしているのか!? とりあえず入りなさい!」


 突然押し掛けたにも関わらず迎え入れてくれる紗夜子さんの優しさと、俺に付いてきてくれた2人に涙腺が緩みそうになった、1人じゃないってこんなにも心強いんだな。


 俺は手当てをしてもらいながら、紗夜子さんにアンソレイユで起きた事を話した。


「栞が追い出すとはよっぽどだな、それでその荷物か」

「はい、やり過ぎてしまいました。もっと慎重に対応すべきだったのかな」

それでも無茶した理由の1つは説明できない違和感もあったからだ。


「そうだな、来愛は妄想症や離人症の可能性は高いだろうな。この場合病院での治療を受けた方がいいだろう」

「今だから言うけど来愛をあんなに追い詰める必要あったの? 来愛が可哀想だったよ」

花音の言う通りだが結果がこれだと何も言い返せないな。


 ピンポーン!

その時誰かが訪れた、まさか栞さん!?

「多分、聡士と翔子だよ、アタシが呼んだんだ。チームK再始動だよ!」

もはや自分ちの様に振る舞う一華が怖い。


 2人にも事情を話した。先輩のツッコミを覚悟してたが、内容がハードだっただけに先輩は難しそうな顔をしながら聞いていた。


「俺はあの人の事はあんまり知らんけど、あの時既に尋常じゃなかったよな、なんかキメてんじゃねえのか?」

「アンタと一緒にすな、聡士!」

「んだと、またお前かバカ一華!」

「バカ聡士! さやポン、お仕置きして!」

ゴン!

「いったーい! なんでアタシなのー!」

「不謹慎!」

「ご、ごみんなさい」


「んで、どうするんだよ響介、何か策でもあるんか」

「ああ、ちょっと気になる事があってこれから調べようと思ってる」

「まさかまだ、来愛先輩を問い詰める気? 病院で診てもらった方がいいんじゃない? さっきの話しの内容じゃもう真壁の手に負えないって」


「翔子の言う通りかもしれないが確かめたい事があるんだ。その後でもう少しだけ来愛の心の中を探ってみたい、上手く説明出来ないんだが俺の中で何かが引っ掛かってるんだ。その時に俺が来愛に近づける様に皆んなに協力してほしい、頼む!」


 皆んなを巻き込みたくはなかったけど、1人では限界を感じていた。


「まかせろ、その為に来たんだからよ! で、何すればいいんだ?」

「泊めて!」

「は?」

「アンソレイユ飛び出して来ちゃったから泊まるトコ無いんだ。流石にさやポンのトコはマズいからさ、へへ」

「いいよ、イッチ、ウチ来なよ皆んなでさ!」

「ありがとう、翔子! 一応、聡士もね」

「話しが完全に逸れたな」

かくして俺達は聡士先輩宅に泊めてもらう事になった。



「その前に俺、これから優莉愛さんと八神家へ行ってくるよ」

あの後優莉愛さんにもアンソレイユであった事を電話で報告していた。その時に来愛が中学時代に不登校になった以外にも心を病む様な出来事がなかったか聞いたら、母が何か知っているようだという事で今日の夜、八神家へ訪問する事になっていた。


 

 後から聡士先輩の家に行くと伝え紗夜子さんのマンションを出た、外には車で迎えに来てくれた優莉愛さんが待っていた。

「響ちん、色々大変だったね、それじゃ行こっか」

優莉愛さんは打ち上げが中断した後実家にいたらしい、その時に来愛の状態を母に話してあると。


「すみません優莉愛さん、何とかしようと思ったんですけど逆に悪化させてしまって」

「そんな事ないよ、頼んだのはワタシなんだから。ウチの母はね、鬱病なんだ。だから家族以外の人とは会いたがらないんだけど、来愛の事話したら響ちんに会いたいってさ、珍しい事もあったもんだ。あまり興奮させないように気を付けてね」


 なんだろう、責められたりするのかな。その時は素直に謝ろう。


 家に着くとリビングへ案内された。

「いらっしゃい、お出迎え出来なくてごめんなさいね、優莉愛と来愛の母です。響介さんね、2人から話しは伺っております」


「夜分に申し訳ありません。真壁響介と言います、よろしくお願いします」

 やつれていて生気の無い顔だが色白で整った顔立ちは流石美人姉妹の母だといったところか。


「響ちん、お母さんから話したい事があるって」

お母さんの方から? 


「来愛に何があったか優莉愛から聞きました、響介さんは来愛の過去が知りたくて来たんでしょう? 教えましょう、あの子が自分を捨ててしまった過去を」



「西川翔真、彼の母親が夫の部下でもあったことから家族ぐるみのお付き合いをしていました。来愛と翔真くんは小学校も同じでいつしか2人は恋をする仲になっていました」

「翔真と仲良かったもんね、恋仲までは知らなかったけど」


「中学に入って同じクラスになったと喜んでいたのですが、間も無く事件が起きました」

事件?


「学校から呼び出しがあり何事かと行くと、放課後教室には担任の先生と来愛だけが椅子に座って待っていました。その時来愛の手に巻かれたハンカチが真っ赤に染まっていて、思わず声を上げ駆け寄りました」

「そんな事あったんだ」


「優莉愛はこっちにいなかったからね。先生に聞くとガラスの破片を握って離さないから困っているようでした。そんな悠長な事を言う担任を怒鳴りつけました、あんなに怒ったのは生涯で初めてでしたね。急いで病院へ連れて行き、破片を取り除いてもらった後、その血だらけのガラスの破片を持って帰ると狂ったように喚く来愛を見て恐怖を覚えた事は今でも鮮明に思い出せます、その時からきっとあの子は壊れ始めていたのだと思います」


「ガラスの破片を握っていた!? なんでそんな事を?」

「それはわかりません、あの日の事は一切話してくれませんでした。あの後担任からは翔真くんと揉めていたと聞かせれました、そしてその日の晩、翔真くんの母親がウチに怒鳴りつけにきました、お前の娘は彼氏がいるのに翔真を誑かした淫乱女だと。一方的に言って帰って行きました」

「あの母親、気が強かったからね。お母さんは言い返さなかったの?」


「その後あの人に伝えたのだけど、会社の人間と揉めたくないから事を荒立たせるな、来愛の躾がなっていないと相手にもしてくれませんでした」

「あんのクソジジィ、成敗してくれるわ! 今どこにいやがる!」

「落ち着いて下さい優莉愛さん、まだ話しの途中ですよ」


「アメリカでしょ、同じ会社なんだからアナタの方が詳しいでしょう?」

「ああ、そうだった、興味ないから忘れてた」

同じ会社? 親父さんも小鳥遊の人間だったのか。


「翔真くんの母親の口振りからするとクラスの皆んなからも来愛はそんな目で見られていたのかもしれない、だから次の日から学校に行かなくなったんだわ」

「何で教えてくれなかったの!? そしたらワタシがそのクラス、担任もろとも地獄に沈めてやったのに!」

地獄にって……ホントにやりそうだから怖い。


「優莉愛は大変な時期だったじゃない、本社から転勤になって」

「あの時だったの?」

「今だから言うけどね、その事があってお父さんの来愛に対する執着が強くなったの。不登校なら尚更社会に出てから役に立つ勉強をしろと、経済学の勉強を押し付けていたわ」

スパルタ過ぎる親父さんだな、来愛も相当苦労してたんだな。


「だからか、来愛がワタシに対して心を開いてくれないのは。ワタシが失敗したから来愛に過剰に入れ込んじゃったんだね、あのジジイ。そんな時にあの子のそばにいてあげられなかったなんて」

何か八神家って思ってたよりハードな環境だな。


「でも何だったんだろうね、あの子が血だらけになっても離さなかったガラスの破片って」


    《駄菓子屋……ラムネ……ビー玉》


        ガラスの破片


         ビー玉?


「ビー玉だ!!」

「うわっ、響ちん、ビックリするじゃんか!」

「お母さん、それってビー玉じゃなかったですか!」

「ごめんなさい、砕けていてわからなかったわ」

あんな呪文の様に呟く物だきっと関係があるはず。


「それがわかるとすれば西川翔真くんだけよ」

「連絡先わかりますか?」

「いいえ、わからないわ。でも確か、響介くんと同じ歳の妹がいたわ、知らないかしら? 確か、楓、西川楓ちゃん」


 西川楓? 前に綾姉の家に行く途中のコンビニで会ったあの西川か? だとしたら連絡先交換してたな。


「もしかしたら知り合いかもしれません、連絡してみようと思います」

繋がった、ギリギリで。まだ来愛の真相に迫る可能性は残された。ただちょっと確かめたい事がある。


「今日は夜分に押し掛けてしまい申し訳ありませんでした」

ゴン。

俺はスマホを落としてしまった、いや正確に言うとワザと落とした。


「すいません、実は緊張していて。拾って頂けたら助かります」

「えっ? ああ、はい」

不思議に思ってるだろうな自分で拾えばいいのにと。


「はい、ど、どうぞ……」

「ありがとうございます。それではこれで失礼します」

「じゃあ響ちん送ってくるわ」



 人は仕草にその時の心情が現れるという。あの人は会った時からずっと腕を組んでいた、ずっと。不安な時に出る防御本能の1つらしい、だからそれを解く為にワザとスマホを落とし拾ってもらった。


 鬱病なのに初対面の人間と随分饒舌に話すなと思っていた。スマホを渡す手は震え、目は泳いで明らかに平静を失っていた、何かを隠している。


 違和感が少しずつ疑惑へと変わっていく。でもまだ仮説であって理解出来ていない意図が多々ある。とりあえず明日西川楓に電話してみよう。


「響ちん、色々ありがとう。でも無理しないで、ワタシも来愛の事わかってなかったから、それにその西川楓って人違いかもしれないしね」


「いいえ、間違いないですよ、きっと確かめるまでもない。アイツは、西川楓は西川翔真と兄妹です」


「響ちん?」


 そう言い切る俺を優莉愛さんは不思議そうに見つめていた。



      ==================



「もしもし、さっき帰ったわ、指示通りに誘導出来たと思う、お願いだから変なこと考えないで、これ以上家族をバラバラにしないで!」


「アンタは傍観者だ、黙って見ていればいい」



       そう処刑の瞬間をね



  




来愛の真相に近づくほど深まる謎。その鍵となるアイテムに気付いた響介達は、来愛の部屋にあるそのアイテムを手に入れる為アンソレイユへの侵入を試みる。


第38話 アイアンメイデン〜あの日の君を探して〜後編 魔女のシナリオ 1/22 お昼に更新します!

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