第34話 フォルトゥナ〜運命の車輪〜 後編 仕組まれた出会い
1/5 誤字訂正しました。最後の行、月島→桐島。最初の設定の苗字でした、申し訳ありません。
これが響ちんの未来予想図!? 商店街の未来をワタシ達が造る新都市構想プロジェクトに組み込んできた!?
「響ちんにこれからワタシが携わるプロジェクトの内容を話した事があったわ。利便性をテーマに医療・福祉施設、ショッピングモール、娯楽等の施設や店舗を1つの建物に集約し地下鉄と直結した巨大施設を建設する計画をね。その中に“コネクト“を加えるという事はこの施設の窓口的な役割もできるじゃない、スタッフが地元の商店街の人達ならではの気配りや安心感は強みとなるわね」
「先輩、何かとんでもない話しになってきてませんか? それにここ見ましたか、最後のページ。何かちょっと感動しました」
“コネクト“が成功した暁には貴社のプロジェクトの一端に加えて頂ければ幸いです。その他こちらから提示する条件は一切ございません。 清高商店街一同
ばかな、土地の値段交渉すらしないと言うの?
まるで意図が掴めない、何がしたいのよ。
「槇斗、響ちん呼んで来て」
「は、はい」
このワタシがたかが高校生に振り回されてる、これで中身の乏しい返答だったら、マジ許さないからね!
「せ、先輩、落ち着いて下さいね、顔怖いっす」
「お呼びでしょうか、優莉愛さん」
あっ、化粧落としてる。なんて顔してんのよ、目のクマ酷いじゃない、顔もやつれてるわ、こりゃ化粧で隠したくなるわ、でも同情はしないからね。
「ここまで大掛かりなプラン立てといて、要求はこれだけってふざけてんの?」
「怒ってるんですか? そちらも仕事し易くなったと思ったんですが」
「怒ってないわよ、聞いただけでしょ!」
「先輩! 怒ってますって。ゴメンね響介くん」
「不易流行がコンセプトです。札幌時計台を見た時に思ったんです、新しいものと古いもの、どちらもそれぞれの良さを残しつつ無理なく共存できないものかと。それと今回の件が重なって見えたんです」
「不易流行、変わらない本質と時代に合わせた変化。なる程、響ちんの考えがわかってきたよ。正直ここまで魅力あるプランを出してくるとは思わなかったわ、これなら他にも交渉の幅が広がるんじゃない? なぜそれを求めないの?」
「それは自信があるからです。きっとこのプランは成功すると、あの人達ならやってくれると思ってます、そして必ず住民の支持を得ると。このセールに来てくれて総選挙に参加して下さった方々と話して色んな声を聞き確信しました、その必要性に」
「それじゃ答えになってないわ、他に要求はないなんて、一見下手に出ているような文章だったけど、ワタシにはやれるものならやってみろと言ってるように感じたけど?」
「ユリさん、それは言い掛かりじゃないですか!」
「いいんだよ槇斗。フフフ、ホント恐ろしい人だアナタは」
「きょ、響介?」
「どこまでも深く読んでくる、優莉愛さんの言った通りですよ、新都市構想プロジェクトはまだ始まったばかり、用地取得までの期間はまだあるし、商店街が今回の件で区役所との連携も確保すれば買い取りもスムーズにはいかなくなるはず、その間にコネクトが住民の信頼を得たらどうなりますか? この土地はプロジェクト建設予定地の端側、そんな面倒な土地なら切り離した方がマシという流れになるのではないでしょうか?」
侮っていた、ここまでしたたかだったとは。
「新都市構想のプロジェクトを教えてもらい地図を見た時に思いました、このプランはこの商店街の敷地を確保出来なくてもやれるのではないかと」
「何が望みなの?」
「意見を下さい、小鳥遊が創る未来の街づくりを担う一端になれるようプロのアドバイスが欲しいです、俺なんかのアイデアでは不安を募らせる人達もいるでしょう。そんな状態では出来るものも出来なくなってしまう恐れがあります、色々生意気な事言った後で申し訳ありません、綺麗事かもしれませんが皆んなで作る未来が見たいんです!」
《最年少でプロジェクトリーダー任されたからなんだってんだ、お前みたいな小娘の言う事なんて聞けるか!》
《皆んなで作り上げるだ? 夢見てんじゃねーよ、そんな綺麗事でメシ食っていける程甘い世界じゃねーんだよ、お嬢さん!》
あの時反発せずに響ちんみたいに頭を下げられていたら何か変わったのだろうか、綺麗事を貫いていたらどうなったのだろうか、ただ響ちんを見て思った事があった。
なぜ人の為にここまで頑張るのか聞いてみたかった、ここまで必死にやってもキミは何も貰えないんだよ? でも聞かないのは、キミがなんて答えるかわかっているから。
だから何ですか?
きっとキミはそう言うのだろうね
「お姉ちゃん! 話し聞いてた!? 響介くん休ませてあげてよ!」
「来愛、また勝手に出て行って、もう!」
「ゴメンゴメン、来愛、もう帰るわ。仲いいわね、そちらのアナタもアンソレイユに住んでる人かな?」
「は、はい、そうです。初めまして、桐島花音と申します、来愛にお姉さんいたなんて知らなかったです」
「桐島!?」
《室長、なぜ急に計画変更したんですか? 桐島が世代交代した今が攻め時だって言ってたじゃないですか? 向こうだってあの場所抑えてるウチ等の事よく思ってないでしょ、あんな場所が数年後、国道と繋がる重要地点になるなんてね、ほらなんだっけ、アン何とかって言うシェアハウスある所》
《ちょっと都合が悪くなっただけよ、だから様子見》
確かあれは2年前?
「お姉さん、どうしたんですか?」
「い、いや、何でもないわ。ちなみに、えーと花音ちゃんはいつアンソレイユへ?」
「中3の時だから、2年前位かしら? それが何か?」
「いや、何でもない、来愛の事よろしくね」
「はい!」
やってくれたな室長、あの時言葉を濁したのはこういう事か。
「んじゃ帰るわ、来愛、またね。響ちんはゆっくり休むんだよ、さっきの件、ちゃんと考えとくから」
「ありがとうございます! よろしくお願いします!」
人の事でしょうに、なんでそんなに喜ぶのよ。
帰り道、ずっと考えていた。花音と名乗る桐島の女の子と出会ったお陰であの日からモヤモヤしていた思いが晴れた、と同時にある懸念も生まれていた。
「着きましたよ、先輩、お疲れ様でした」
「うん、健吾もありがと」
ふう、さて上にはなんて説明しようかしら。それにしてもだ、なんてヤツ連れて来たのよ槇斗!
「もう!」
バン!
「こら、デスク叩かないでよ壊れたら請求するわよ」
「まだ居たんですか室長、ゴリラじゃあるまいし叩いた位で壊れませんよ!」
「おおー、怖っ、鬼神様が荒れていらっしゃる、どうしたのかしらね。そういえばあの子どう? ユリからはどう見えたのかしら」
「おおー、怖っ、白々しいことで、アナタの方がよっぽど怖いですよ。ワタシ何かはどうせアナタの2番煎じなんだから、そうでしょ? 初代鬼神、夢野一枝殿」
「やーねー、棘のある言い方」
「ワタシを使って試したな、あの子を、真壁響介を」
「はて、何の事かしら?」
やはり惚けるか、だったらこっちから仕掛けるまで!
「桐島花音!」
ほら、一瞬顔が歪んだ、ビンゴでしょ。
桐島と名乗っても桐島グループと関係ない人の方が多いでしょう、でもね、あの子が現れたタイミングと場所が答えを教えてくれてるのよ、桐島のお嬢様だってことをね!
「それが何?」
「2年前の桐島を攻める絶好機に足踏みした理由はあの子がアンソレイユに来たからでしょ」
どう出る、初代鬼神。
「ユリ、何が言いたいのかしら? 言葉はちゃんと選ばないと言の刃となって返ってくるわよ」
うっ、地雷踏んだか。でもこのままビビって足を離したらワタシだけ爆死だわ、冗談じゃない、一枝さんアナタも巻き添えよ!
「一枝さんは栞さんの事お気に入りだもんね、それに可愛いお孫さんも住んでる慶太郎さんが建てたアンソレイユは守りたい。今あの土地の所有者は妻である栞さん、その後ろに一枝さんがいれば桐島グループもおいそれと手は出せない。資産家の夢野家と小鳥遊まで敵に回す事になるからね、いくら無能な元ご主人でもそのくらいはわかるでしょ」
「ユリ、何を言ってるかわかってるの?」
「最後まで聞きなって一枝さん、なのになぜ強気に攻めないで静観する事になったか、それは栞さんの人の良さにつけ込んで桐島花音をアンソレイユに送り込まれた、つまりは先に手を打たれたんでしょう? 向こうの時間稼ぎの為にね」
ワタシは一枝さんと一緒のチームで仕事していた頃から可愛がってもらっていた。仕事のスタイルが似ていたからか、後ろにあの人がいるからなのかはわからないけど気に入られ、気付けば師弟関係のようになっていた。
色々な身の上話しもしてくれるようになって知った、来愛がお世話になっているシェアハウスを経営しているのが亡くなった息子さんの妻だったとは。
それから一緒に行ったりする事もあったけど桐島のあの子とはたまたま会わなかっただけか。ワタシもその頃から仕事が忙しくなって暫く行けなくなっていたからね。
「聞き捨てならないねユリ、アンタに栞の何がわかるのよ! あの子はあんな幼少期を過ごしてきたのに人を恨むどころか手を差し伸べる天使のような子よ! そんな子を選んだ慶太郎をワタシは誇りに思ったわ、そんなあの子達の夢が詰まった場所、あんな奴には絶対に渡さない!」
「あんな四面楚歌な状態で足止めまでされてどう巻き返す気ですか? あの街は地主である桐島の独壇場、いくら小鳥遊といえど、下手を打てば後に響く事くらいらわかるでしょうに」
「わかってるわよ、必ず打つ手はあるはずよ」
アンソレイユって確か陽だまりって意味よね、でもこれじゃ火溜まりじゃない、大事な場所なのになんで戦火の真っ只中にあるのよ。
「ワタシの妹もいるんですけどね、その中に。でも気に入らないのはアナタは響介を何に使おうと企んでるのですか、一枝さん!」
響ちんがリモートワークを断った理由は毎日会社から商店街へ向かう為、初日から全開に動いてた。人の為にこれだけ出来る人なんているの? まだ高1だよ?
ワタシはあんなに真っ直ぐな人間を知らない、来愛の言った通りだったわ、人の為なら自分の事など返りみないで突き進む人間。
「あの子を利用する気なら許さないですよ」
「それは上司に向けて言う言葉かしら」
「お願いだから、上司だと思わせて下さいよ一枝さん!」
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《慶太郎のスカジャンをあの子が持っているの?》
《そうなんです、お義母さん、紗夜子が持っていたのも驚いたけど、紗夜子から譲り受けた事が何だか嬉しくて》
《そう、紗夜子が持っていたんだ。アナタが持ってなくてよかったの? 栞》
《あの日、慶ちゃんの命日に響ちゃんのお父さんと出会った日から何かを感じていたの。それにね、響ちゃんは小さい時から凄かったんだから!》
《はい、はい、何回も聞いたわよ、あの大雪の日の事》
自分の息子の事のように嬉しそうに話す栞が印象的だった、この子にこんな顔をさせる孫の同級生にいつしか興味が湧いていた。小学2年生の子が一華の為にあの大雪の中、家を飛び出して助けに向かうなんて信じられなかった、しかもその子と再会して慶太郎のスカジャンを譲り受けていたなんて。
ゴメンね、ユリ。アナタは賢くて思慮深い子、だから余計な心配をさせてしまったわ。
アナタは鬼神と言うより、そうね、フォルトゥナ、ローマ神話に登場する運命の女神よ。目隠しをするフォルトゥナのように、時に気まぐれだけど人を導く大きな力を持っている。
だからアナタと出会わせたかったの
アナタの持つ運命の車輪が響介くんをどこに導くか見てみたかったのよ、私には慶太郎がなぜあの場所に拘りあの辺一体を買い取ったのかわからなかった、でも慶太郎にはきっと何かが見えていたんだろう。
私はアンソレイユを守りたい、だけどあの土地に拘る私を上層部がいつまで見逃してくれるか。だから私は賭けてみたかったアナタと、栞を惹きつける響介くんが出会って事態が好転しないかと、2人が交わり起こす化学反応が新たな道を開いてくれないかと期待してしまった。だって今の私にはアンソレイユを傷付けず守る自信がないもの。
桐島花音、あの時よりによってあの子を連れてくるなんてアイツにしては見事な1手だったわ。卑怯な手段だけは相変わらず冴えてるわね。
あれから2年、まだ目立った動きはないが必ず仕掛けてくるでしょうね、でも希望が見えてきたわ彼のお陰で。ウチの女神様が桐島に興味を持ち始めてくれたのだから。
アンソレイユの住人と触れ、感化されていく優莉愛はいずれ勃発するアンソレイユ争奪戦にある作戦を思い立つ。
第35話 フォルトゥナ〜運命の車輪〜 完結編
女神の決意 1/7 お昼更新です!




