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陽だまりのセプテット  作者: ÷90
第2章 風花〜儚く舞い散る雪のように〜

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第33話 フォルトゥナ〜運命の車輪〜 中編 父子相伝


 なぜこんなに人が溢れているの?

 シャッターに貼られた紙、よくよく見ると入る予定の店の1部が記載されているだけね、何かしらこのQR。


「先輩! このセールのメインは清高商店街総選挙の投票がメインのようですよ」

「総選挙?」

「はい、シャッターにも貼られてる紙が配られていました。その紙にあるQRから入ると現在の入店希望の店の一覧が見れます、住民が入店して欲しい店に投票できるようです。ログインすると投票できるみたいなんですが市民限定の為住所確認できる物を提示して投票券をもらう仕組みのようです。今現在で50店舗が登録されているみたいですね」

「こんな商店街に50店も?」

どういう事よ、これは何か裏があるわね。



「これはこれは、八神さん、お待ちしておりましたぞ、ようこそおいでくださいました」

代表自らが待っていた? しかもワタシ達が来るや否やタイミング良すぎでしょ、やはり裏で手を回している者がいるな、この狙いは何?


「ここでは何ですから私の家でお話ししましょうか、以前話し合いでお越し頂いたので場所はわかりますよね?」

「行かなくて結構です、土地の価格の吊り上げでしょう? その話し合いなら今この場でも出来ますが?」


「ガッハハハ! そう警戒なされるな。そんなチンケな話しではござらんよ、互いに利益がある未来の話し興味はありませんか? 是非ウチにお越しくだされ、先生から説明してもらいましょう」


 互いに利益のある未来? 寝ぼけてるの? このタヌキ親父には悪いけどこの商店街に明るい未来なんてないわよ。でもまあいいわ、その話し敢えて乗ってあげましょうか、場合によっては今日決着(ケリ)を付けさせてもらうからね、誰に挑んでいるのか教えてあげるわ。


「わかりました、では参りましょうか」

その先生がきっと今回の黒幕ね、ワタシに牙を向けてくるなら容赦はしないから。




 代表の家に案内されると、いつもの役員が数名いた。変わらないメンツ、先生とやらがいないじゃない、それとも最初からこの中にいたのか。


「それにしてもこの短期間でお見事だわ代表、どんなマジックを使ったのかしら?」

「ワシらも勉強したまでさ、昔からの付き合いだけの商売ではなく、売り上げのシステムの構築、損益分岐点の見直し、より集客に繋がるイベントの考案等をね」

ふーん、それなりの事を言うじゃない、どうせ建前でしょうけど。


「空き店舗が埋まりそうだけどそれはなぜ?」

「そりゃアンタ方は何がなんでもここの土地が欲しかろう、なら入ってるだけで得じゃねえか。今の盛り上がりをみて土地売ってくれって言ってくる奴らも出てきてんのさ」

足元見ようと言うの? このワタシの。


「そんな付け焼き刃、折れるのは容易に想像できますけど?」

「ちょっと、先輩! 落ち着いて下さい、喧嘩腰はダメですって」

今の集客力なんてどうせ一過性のものよ、今やってるセールだって総選挙目当てに来た人をあてにした名ばかりのものでしょ。結局、売り上げが見込めず体力のない店はすぐに撤退するのは目に見えるわ、シャッター街化は防げない、これなら焦る必要なんて全然ないわね。


「今日は様子を見に来ただけよ、やっぱり帰らせてもらうわ」

今の感じならどうせ内容の乏しい会話にしかならないわ。

「まあ待ちなよ八神ちゃん、アンタにはこの復興の兆しがわからんとみえるな」

「なんですって!」

「ちょ、先輩、落ち着いて!」


「先生、後はお願いしますわ! ワシらの未来託しましたぞ!」

 先生? やはりいたのね黒幕が。


 奥の部屋の引き戸を開け出てきた人物は知った顔だった。

「優莉愛さん、お久しぶりです」

お前か、真壁響介!


《ここぞって時の行動力がね、とんでもないらしいの》


 とんでも過ぎるだろ、やり過ぎだよ響ちん。こういう時はちゃんと叱ってあげないとね、それが大人の役割だから。それにしても解せないわ、他に入れ知恵した者がいるでしょう、彼だけの知識では到底無理よ。



「優莉愛さん、先ずはこちらの計画書をご覧ください」

「その前に、その顔は何? ふざけてんの? ビジュアル系バンドでも目指してるのかしら」

アイメイクにファンデまで塗って何やってたのよ。

「ガハハハ、中々似合ってますぞ先生!」

「いや、これはですね、アイツらが……いや、すみません、終わったら説明しますので先ずは企画書のお目通し願います」


 清高商店街復興計画か、どうせ急ごしらえのイベントやセールでの集客でしょ。

しかし中身を確認して凍り付いた。


「何これ……これを、これから建てるつもりなの?」

今更ここに大衆食堂を擁するコミュニティセンターを建てるなんて何を考えているのよ。

「真壁響介くん、このプランの真意を教えてもらえるかしら」


「はい、今やこの商店街に残っている店も経営はギリギリです。そこで商店街の皆さんでコミュニティダイニング″コネクト″を運営してもらいます。メニューは定食の他、麺類は主要となる物全て提供します、麺は老若男女に幅広く対応しますからね」


「今までやってきた自分達の店舗を辞めさせると言うの?」

「そこは皆んなで充分話し合ったさ、でもな八神ちゃん、この食堂は計画の一部に過ぎないのさ」

一部?


「コネクトの店内にはこの街のあらゆる店舗の宣伝をするスペースを設置します。そこで各お店のCMを流したり、イベントの告知やクーポンの配布なども行います。更に地元の業者と市民の皆さんへの橋渡しや手続きのサポートなどをする場を設けるんです」


「この街にこんな事している店があったんだ、これを頼みたいけど対応してる所がわからない、これを作れる業者さんがいないかとかな、人と人を繋げより良い生活へと導く場所、それが″コネクト″なんだよ、八神ちゃん」


「なるほど、広告収入ね」

「流石、優莉愛さん、掲載費はリーズナブルな値段に設定しますが、他にも各手数料なども負担にならない程度で頂きたいと思ってます。それと食堂での利益を合わせ、潤滑に増やしていく手段も検討中です、それができれば自立可能な施設となるでしょう」


 それはもう復興のレベルじゃない、街づくりなのよ響ちん。これがもし潤沢に事が進めば間違いなくこの街に根付く、なんて事を思いついたのよ。


「一旦この話しは持ち帰させてもらうわ、それと真壁響介は明日、ウチへ出社しなさい」

なぜこの短期間でここまで出来たのか聞かせてもらうわ。


 ガラッ!

「それはダメ! 響介くんは明日はお休みだよ! 全然寝てないんだから!」

「ちょっと来愛! 出たらダメでしょ!」

「来愛……なんでいるの!?」


「お姉ちゃん、ボク達はチームKだからだよ」

「プラスワンだ! 俺の事も忘れんなよ」

「アンタはおまけよ、聡士」

「んだと、桐島!」

「お兄、やめなよ!」

何なの、この子達は。


「ユリさん、すみません。響介この2週間仮眠しかとってないんで明日は休ませたいんですが」

「顔色悪かったもんな兄ちゃん、だから化粧で誤魔化してたんだよ八神ちゃん、でもちょっとやり過ぎだろ? 出てきた時思わず吹いちまったぜ、ガハハハ」

「もうだから言ったじゃん、来愛のせいだよ」

「いっタンだって面白がってやってたじゃん」

「ハァー、キミ達静かにね」


「やっぱり槇斗も絡んでいたのね。わかったわ、響ちんは明後日会社に来る事、あと槇斗ちょっといいかしら、車まで来てくれるかな」



 槇斗が絡んでいたという事は、その周りにいる小鳥遊の誰かが手助けしていると考えるのが妥当か。

「ユリさん、出過ぎたマネをしてしまい申し訳ありませんでした!」

「キミの入れ知恵だけじゃないわね、このプラン考えたのは誰?」

ワタシはその黒幕が知りたいのよ。

「商店街の方達と皆んなで意見を出し合いました。けれどこの構想は響介ですよ」


「バカな、素人にこんなアイデアが出せる? しかもたった2週間で空き店舗も埋まるメドが立ち、お客さんもこれだけ集めるなんてフツー出来る訳ないわよ」

「それを可能にするのがアイツなんですよ、実際僕はそれを目の当たりにしました。アイツは思い立ったら止まらない猪突猛進タイプだと思ってましたが、それが規模が大きくなったら(ひる)むどころか、勢いが増すなんて思ってなかったですよ、ハハ」

「あの発想はどこから? 経験者でもあるまいし」


「細分化して考えまくってましたよ」

「細分化?」

「これです」

槇斗から渡されたのはビッシリ埋め尽くされた3冊のノートだった。中身は商店街が衰退した原因から立て直しの展望までが事細かく書き綴られていた。


「細分化、なる程。特性要因図、フィッシュボーンね、どれだけ細かく書いてるのよ」

「そのやり方はお父さんに教わったらしいですよ、観察、考察、推察、洞察をもって事を成せと教わってきたらしいです」


「観考推洞、四察か、彼のお父さんは何者なの?」

「SEらしいです、理論的な人で考える事が仕事だと言っていたようです」


《父さんに度々言われていたんだ、どの現象も例外なく原因と結果から成り立つと。だからそれに至るプロセスを見抜く事が本質を知るという事だって。その意味がなんとなくわかってきたよ、そして計画を遂行するにあたって大事な事は初手だって言ってた事もね》


《最初の1手のことかい?》


《そう、闇雲に打つ1手と全体を見据えた1手では雲泥の差だと。手間が掛かり時間を有するからといってそこを疎かにする者にいい物は作れないと。最初に時間を有して出遅れたとしても、先を見通して進行する分その後の速さと完成度の差は言うまでもないだろうって言ってたんだ。この考え方は何にでも当て嵌まる事だと言ってたのを思い出したからやってみたんだよ》


「紹介した僕の方が色々教わりました、何よりあの情熱が全てを可能にしたんです、皆んなで作る未来が見たいと。その気持ちに商店街の皆さんも心を動かされたんです、そして響介の仲間達も。ユリさん、その計画書の最終項目見て下さい」

「最終項目? これか……えっ、これは!?」


 響ちん達の狙いは商店街の復興を成功させ、開発の土地買収を阻止するか、売るにしても交渉を有利に進める事だと思っていたのに。


   まさかこんな未来予想図を描いていたの?








今年最後の投稿になります、いつも読んで下さる方々ありがとうございます! 来年もよろしくお願いします!


響介を助ける為に集まっていたチームKの中に桐島を名乗る少女がいた事で優莉愛は2年前に中止されたあるプロジェクトの真実に気付く。

アンソレイユに隠された謎が今ベールを脱ぐ。


第34話 フォルトゥナ〜運命の車輪〜 後編 

仕組まれた出会い 1/2 お昼に更新します!

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