第32話 フォルトゥナ〜運命の車輪〜 前編 鬼神と呼ばれし女
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「八神来愛のお姉ちゃんだにゃん」
「来愛のお姉ちゃん!? 知らなかった、お姉さん居たんだ」
誰かに似ていると思ったのは来愛だったのか。
「そっかー、その様子じゃあの子、ワタシの事話してないんだね」
「は、はい、初耳でした」
「ワタシの事なんて話したくないのかもね」
拗ねてる? 来愛と仲悪いのかな。
「いえ、そんな事ないと思いますよ、たまたま話す機会がないとか、俺だって妹の話し皆んなにしてないですから」
「来愛の事はどこまで知っているの? 中学時代の事聞いてるのかな、何があったか」
「えっと、言っていいのかどうか」
「不登校だった事?」
「は、はい」
「ふーん、キミに話してるんだ、原因はなんて? 話して大丈夫よ、ワタシ全部知ってるから」
まあ家族ならそうかもしれないが、知ってるならなぜ聞くのだろうか。
「友達といざこざあったらしくて、それで家でもお父さんと上手くいかなくて引きこもったような事言ってましたが」
今更だが言って良かったのか?
「そっか、やっぱ本当の事は話してないか、あの子がね精神的に追い詰められたのは本当はワタシのせいなんだ」
お姉さんのせい?
「ああもう、やめ、やめ! ゴメンね暗い話しになっちゃったね、こんな話し聞くために来たんじゃないのにね。そうだ、あの子、にゃんにゃんうるさいでしょ?」
「まあでも慣れたって言うか、今はそれが来愛らしいというか」
「フフ、やっぱりか、やっぱりまだ″にゃー子″のままなのね……」
「にゃー子のまま?」
「ううん、何でもないよ、それじゃ行くよ響ちん、着いてきて」
いきなり響ちんって、フレンドリーな人だな、会社だからお堅い人かと思ってたからちょっと安心した。
「ところでどこ行くんですか?」
「現状視察だよ、折角ウチ来たんだから学ばないと勿体無いでしょ」
そして優莉愛さんの車で向かった先はとある商店街だった。
「ここはワタシが担当してるエリアよ、ここを買い取って新しい商業施設を作る計画なのよ。何度か話し合いの場を設けているけど難航しててね、今日はアポなしで突撃するからね響ちん」
突撃って、しかもアポ無し!? 大丈夫なのか。
「それと、この件、響ちんに任せるから今日はよく話しを聞いとくんだよ、何やってもワタシが責任をとってあげるから安心して。主に説得する仕事だけど、それ相応の知識がないと出来ないんだからしっかりね!」
えっ、今なんて言ったこの人、聞き間違えか?
「あ、あのう、八神さん、任せるって何を?」
「この商店街の立ち退きの交渉とその後のケアだね、あと優莉愛って呼んでいいよ」
何言ってんのこの人!? 立ち退きの交渉、いきなり素人にやらせるか? しかも高校生に。
「ゆ、優莉愛さん、俺初めてで何やっていいかすらわかんないんですけど」
ぶっ飛んでんなーこの人、流石に冗談だよな。
「おや、響ちん、ここに何しに来たのかな? 天下の小鳥遊にまさか遊びに来たんじゃないよね、槇斗の友達なのにまさかね? それとも怖気付いたかな?」
うぐっ、煽ってんのかこの人! にゃろ、だったら。
「いえ、滞りなく遂行したいので、それに伴う知識を身につけさせてからにして頂けませんか?」
「勿論そのつもりだよ、でも今日はね、まず現場を知ろう、行くよ!」
「は、はい!」
何か乗せられた気がする。
商店街は人通りが少なく、営業を辞めシャッターを降ろした店舗が散見する。全くもって活気がなく人が寄りそうにもない、悲しいがこれも時代の流れなのだろう。
優莉愛さんと何軒か回ったものの、立ち退きについてはいい顔されず、門前払いされた店もあった。
大した成果は得られなかったが、優莉愛さん曰く今のままでは商売にならず折れるのは時間の問題らしい、後は金銭面での折り合いだとか。切ないがこれが現実というものか。
「明日から1週間みっちり知識を詰め込ませるから覚悟してね、PCは持ってる? リモートでやろう」
「会社ではダメなんですか?」
「通勤大変じゃない? リモートの方がラクっしょ」
「いえ、会社でお願いしたいです、あと1つお願いがあります、商店街の人達と交渉するにあたって、いち高校生じゃ聞く耳持たれないどころか、優莉愛さんや会社にまでご迷惑をお掛けしてしまう事態にもなりかねませんので、何か肩書きでも頂けないかと」
「響ちんに小鳥遊を語る覚悟があると?」
「仕事を振ってきた方がそれ言いますか?」
「面白いね響ちん、それじゃ、にゃんこ代表でいくか」
「いきませんよ! どんな代表ですか! 相手側に怒られますよ!」
「アハハハ、冗談、冗談、明日までに準備しておくから、でもホントに会社でいいんだね?」
「はい、よろしくお願いします!」
ハッキリ言って不安しかない、果たしてホントにやらされるのかまだ疑わしいが、仮にやるとしても優莉愛さんがサポートしてくれるだろう。
「何でそうなった!?」
俺は帰りの電車の中で今日の出来事を槇斗に話していた。
「引き受ける方もどうかしてるけど、無茶振り過ぎるよユリさん。やらなくていいからね響介、明日僕から辞めてもらうよう頼むから」
「いいよ槇斗、折角だからやってみたいんだよ、こんな経験滅多に出来ないだろ?」
「滅多にどころかフツー1度もないよ響介、気軽にやれるような内容じゃないんだよ、わかってる? 立ち退きの交渉だよ? それにこうなるとは思ってなかったから言ってなかったけど、優莉愛さんには気を付けるんだね、“鬼神“と言われてる程の人だから」
「何それ、こわっ」
「新人の時から有能だったユリさんはね、すぐに頭角を現して最年少で、あるプロジェクトのリーダーを任せられたんだ。でもよくある話、出る杭は打たれるで彼女を面白く思わない連中に足を引っ張られそのプロジェクトは大失敗に終わり本社勤務から地方の店舗勤務に左遷されたんだ」
「酷い話しだな」
「でもその後、並々ならぬ努力で這い上がりフロンティアの一員にまで登り詰めたんだ。そして数々のプロジェクトを成功させる中で、当時彼女の足を引っ張った人達を煽って、身の丈に合わない仕事を受けさせた。結果、自分の実力以上の仕事を引き受けた彼らはこぞって失敗し責任を問われ、辺鄙な場所に左遷させられたという。皆それなりの実力者だったらしいけど、ユリさんに全員処刑される形になったんだよ」
「処刑って槇斗、出来ればその話し聞きたくなかったよ、それにしてもヤケに詳しいな」
「……響介だから言うけどね、実は僕、小鳥遊の跡取り候補なんだ」
「あ、跡取り!?」
「それとね実は、鈴羽と婚約してるんだよ、黙っててゴメン」
「ええーー!! 待て待て槇斗、脳がショートした、いつの間にか異世界に来てしまったのか? 電車だな! この電車が異世界と……」
「混乱させてゴメン。と言ってもつい最近の話しなんだよね、鈴羽との交際の挨拶に行った日に婚約だよ、小学校の頃から鈴羽とは仲良くて家族ぐるみの付き合いもあったんだけど、このタイミングを待ってたみたいだな、鈴羽も驚いてなかったし」
「そんな大企業の跡取り候補が高卒でいいのか?」
「鈴羽のお父さんが実力主義者でね、勉強学ぶより経営を学べ、高校卒業する頃にはプロジェクトの1つくらいは成功させて、それを手土産に入社すれば誰も文句は言うまいってさ」
優莉愛さんと言い、ここの人達の考えは常軌を逸してるな。
「槇斗もそんな状況だったのか、だったら俺もチャレンジするよ、お互い頑張ろうぜ!」
次の日も槇斗と一緒に出社した、槇斗は夏休み返上で教育されるらしい。跡取りと聞いて羨ましいと思った気持ちが同情に変わっていく、これはこれで大変だ。
「おはようございます、優莉愛さん。本日もよろしくお願いします」
「おはよう響ちん、約束の物出来たよ、はい」
それは昨日話した肩書きの件だった、仕事早いな。
小鳥遊HD 事業開発部 PM補佐 真壁響介
「PMって何ですか?」
「プロジェクトマネージャーさ、そのワタシの補佐役ってこと。実際の仕事内容とは違うけど、ワタシが仕事振ったんだからこの位の肩書きは与えよう、期限は1ヶ月だよ、ワタシが責任持つから好きにやってみな」
顔写真入りの社員証、ホントにやるんだなと身が引き締まった。
「響ちん、これだけは忘れないで、小鳥遊の名を語る重さをね」
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「ねぇ槇斗くん、お友達は元気かな?」
「友達? 響介の事ですか?」
「ああ、そんな名前だったっけ」
「どうですかね、忙しくて連絡とってないです」
高橋さんの前にあの人から頼まれたから仕方なく面倒みてやったけど、座学の後から音信不通になるなんて舐めたヤツね。
商店街との交渉で何かあったら連絡してとワタシの名刺を渡したけど、あの子の番号聞いとけばよかったかな、まあ逃げたんなら掛けても無駄か。
商店街の交渉は難航していると言っても一部の人達だけで、実際はここまで衰退した商店街の維持や、ましてや復興など求められていないのが現実でしょう。
だから誰が何しても変わらないの、折れるのは時間の問題なのよ。
毎日ビッシリやったとはいえ1週間程度の座学で根を上げるような子を薦めてくるなんて、あの人の眼力も衰えたものね。
ワタシも槇斗が連れてくる友達だからと期待していた所はあった。でもそれは間違いだ、槇斗が別格なのよ、社長と会長にまで認められるんだもの、まだ高1よ? 例外なのよ槇斗が。
「八神、緊急会議だ! お前の担当エリアの商店街の事で上層部より召集だ、急げよ!」
は? 緊急会議? 意味わかんないんだけど、あのエリアは順調に事が進んでいる、何慌てているのよ。あの商店街は時間の問題よ、もう少しであの金額で落ちるんだから、ワタシの計画に狂いはないわ。
「すいません、遅れました、この度はどのような内容でしょうか」
何、このそうそうたる面々、何が起こってるの?
「新都市開発プロジェクトの一環であるBエリアの開発担当はキミだね、八神くん」
「はい、私ですが」
「報告ではBエリアの用地取得のメドは立っていると聞いていた、シャッター街化した商店街だから問題はないとね。ではなぜ今あの商店街が活気付いているんだね? 噂じゃ空き店舗もほぼ埋まるそうではないか」
はあ? 何言ってんの、意味わかんないんですけど? 潰れる寸前のシャッター街だよ? 2週間前に見に行った時だって……。
2週間前って確かあの子と、いやいやいや、まさかね。
《何でワタシが高校生のお守りを? いくらアナタの頼みでもフロンティアの人間に頼みますか? 一般社員でいいでしょう》
《ワタシの知り合いのお気に入りの子なのよ、ちょっと面白そうな子でね、今仕事ひと段落ついたでしょ? だからお願い、ユリ》
《面白そうって?》
《ここぞって時の行動力がね、とんでもないらしいの》
まさか、あの子も例外だっていうの?
「八神くん、聞いているのかね」
「は、はい、至急確認して参ります。詳細を確認の上、用地取得の件、早急に進めて参ります」
とは言ったものの、全くもって腑に落ちないわ、あの商店街が活気付く? 何寝ぼけた事言ってんのよ、あのオヤジ共。
「健吾、車出して!」
「先輩どうしたんですか、そんなに慌てて」
「車の中で話すわ、B地区の商店街までお願い」
冷静に考えるとあの子が何かしたとは考えにくい、だって2週間よ、そんなのワタシだって無理よ。
「着きましたよ先輩、随分人が集まってますね。提灯に紅白幕お祭りかな、行ってみましょう」
なんだ、そういうこと? 勘違いした誰かの誤報が上層部に伝わったのね。
「シャッター降ろしてる店舗が多いですね、あれ? ウソだろ、この貼り紙。先輩、この貼り紙見てください!」
「えっ? これって、近々入るお店の名前とその詳細が書いてあるじゃない。ホントにこんな商店街に入るお店があるの? 他のシャッターにも貼ってあるじゃない」
「先輩、コレ祭りじゃないですよ、特別感謝セールの垂れ幕がありました」
「じゃあ、この大勢の人達は買い物をしに集まった人達だというの?」
潰れる寸前の商店街だったのよ、一体何が起きているっていうのよ。
衰退した商店街に起きた謎の現象に戸惑う優莉愛。その背景には黒幕がいると睨むが優莉愛はその狙いがわからないでいた。そこに組合の代表が現れ黒幕と思われる先生と呼ばれる存在を知る。
第33話 フォルトゥナ〜運命の車輪〜 中編 父子相伝
12/28 お昼に更新します!




