第31話 導く者
12/22 脱字訂正しました。
キャンプ楽しかったな、夜は夜で俺の寝袋に一緒に入ろうとした一華を止めようとした来愛まで入ってきて寝袋破れるし、寝ようとしても2人が両サイドからちょっかい出してくるから寝れなくて、結局、美優さんに俺まで怒られる始末。
花音は静観してたが後が怖い、だって今の花音は人前ではあまり俺に絡まない様にしているみたいで、2人になった途端迫って来るというか、本性を出すというか。
ほら、メッセ来た、2人での買い物のお誘いだ。だが、わざわざ外で待ち合わせって何かあったのかな。
「おはよう、響。キャンプの後片付け手伝ってよ」
「ごめん、美優さん、今日約束あってもうすぐ出るんでホント申し訳ない。なんなら帰って来てからでもいいなら全然やるよ」
「いや、それならいいよ、気にしないで出掛けて来な。一華と来愛はまだ寝てるしさ、あの2人夜通し起きてたもんな、花音はさっき出掛けたしココに手伝ってもらうかな」
先に出掛けた? 外で会う約束だからか、なんか用事でもあるのかな。
この違和感は待ち合わせ場所で会ってからも消えなかった。
待ち合わせ場所のショッピングモールに着くと一際目を引く女性が壁にもたれ立っていた、俯いたその顔はどこか寂しさを醸し出しているが、それすら彼女の魅力を彩る1つにすぎなかった。
似てるな、花火の時の花音に。
「よっ、先に出てたんだな」
「うん……じゃ、行こか」
あれ? いつもなら腕組んできたりするのに、やっぱり何かあるな。
花火の時は……告白されたんだった!
てことは、返事を聞かせろということか、いや、いつでもいいって言ってたよな。
花音はどんな気持ちでそう言ったのだろうか、本当にいつでもいいのか?
やはり今日の花音はいつもと違った。適当にブラブラ店を周りながら他愛のない会話、何か心ここに在らずって感じだな。
丁度昼くらいにフードコートに着くと沢山の人で賑わっていた。
「何か食べるか?」
「う、うん」
取り敢えず飲み物だけ買って席についた、そういえば前に玲彩と来たっけな、アイツはガッツリ、ラーメン食べてたっけ。思わず込み上げてくる笑いを抑え、話しを切り出した。
「あのさ、この前の花火大会の時のことなんだけど」
花音はピクっと反応した、やはり返事の件か。
正直に言うと自分の気持ちが良くわからない。花音のことは好きだと思う、だがそれ以上の事になるとまだ足踏みしている自分がいる。
それに今日は……。
「あ、あのね! 昨日はありがとう!」
へっ?
「響介のお陰でシオりんと来愛とのわだかまりが無くなってスッキリしたよ!」
「そ、そうか、それは良かったよ」
「これからは、いっぱい美味しいって言うの、料理も沢山作るんだから!」
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ビックリしたー、まさか響介の方から切り出してくるなんて、いつもは鈍感なクセに何で今日は気付いちゃうのよ。
でもアタシ、響介の気持ちが知りたいんじゃなかったの? 最近、一華と来愛が響介に迫りまくって焦ってる、でもやっぱ響介の気持ちを確かめるのが怖い。
それでも抑え切れない衝動に駆られる。知りたい、響介がアタシの事をどう思っているのか。
でもさっき、響介が言い掛けた時怖かった、雰囲気が重かったし、もし振られたら諦めるしかないじゃん。そんな状態で一緒に住むなんて無理だよ。
響介の気持ちが知りたい、響介を独り占めしたいのに振られたらと思うとやっぱり聞けない。
恋はメビウスの輪だ、知りたいけど怖い、正反対の気持ちを繰り返す様に捻れた輪が心を締め付ける。
付き合ってと簡単に言えればどんなに楽だろうか、ダメだったら次の恋を探せばいい、確かにその方が悩んでいるよりいいのかもしれない。
それが出来ないのは振られた瞬間から、彼が他の人のものになる事が確定した様なもので、その資格が剥奪された自分に耐えきれなくなるからだ。それなら答えを出さなければ……。
《答えを急くな花音、響介は子供だよ、恋愛に関してはな。アイツはきっと花音も一華も来愛も皆んなの事は好きなんだろう、だけどそこから先がわからないのさ。でもいつかアイツにも芽生えるさ、誰にも譲りたくないって気持ちが、そう想える人にいつか気付くはずさ。だから辛くても、その時が来るまでは待つんだよ》
昨日のキャンプで1人テラスで物思いに耽っていた時、美優姉が来てアタシの心を見透かす様に言ってた。
花火大会の時に響介が話してくれた8年前の事、やっぱりあの子の事が気になってるのかな。
「花音、ゴメン。やっぱり俺……」
バシャ。
唐突な死刑宣告の様な言葉はアタシの思考を奪った。
その言葉に力が抜け紅茶が入った紙コップを床に落としてしまった。
「大丈夫か、花音? 花音には悪いけど俺……」
やめて、それ以上言わないで
「響介、ゴメン! アタシ用事があるんだった!」
「か、花音!?」
溢した紅茶もそのままにアタシは駆け出した、受け入れ難い現実から逃げるように。
時間を巻き戻したい! 今日誘わなければよかった。
美優姉が言っていたのはこういう事だったんだ、アタシがあんな雰囲気にしてしまったから、響介を焦らせて答えを急かせてしまった。
終わってしまう、響介と過ごしてきた日々が。
こんな曖昧な関係がいつまでも続くなんて思ってなかったけど
今日、終わるの?
トイレに駆け込み声を押し殺して泣いた、どんなに後悔しても時間は戻らない、美優姉の忠告を聞かなかった罰だ。
どれくらい時間が経ったのだろう、ここに居ても仕方がない外に出た。振られた絶望感はアタシの世界から色を奪っていく、あんなに眩しかった世界は一瞬でつまらないモノトーンの世界に変わってしまっていた。夏の日差しは容赦なく降り注ぐ、いっそこのまま愚かなアタシを溶かしてくれればいいのに。
「花音!!」
響介……なんでまだ居るの? アタシを探してたのかな、でもあんな事の後に何を言う気なのよ、今はアタシに構わないで、お願いだからほっといてよ。
「待てって、花音! 俺何かした?」
何言ってんのよ死刑宣告しといて、響介ってこんな無神経な人間だったの?
だったらもういいわ終わりにしよう、アタシからこのメビウスの輪を切って終わりにするの。
「全て言わないと気が済まないの? だったらハッキリ言いなさいよ、今度は逃げないから」
切ってしまえばメビウスの輪はただの切れ端、見向きもしなくなるんだから……。
「ゴメン、そんなに嫌がるとは思ってなかったんだ、やっぱ嫌だよな、今日は日差しも強いしさ」
日差し?
「な、何の事?」
「わかってて怒ったんじゃないのか? まさか逃げるほど嫌だとは思わなかった、キャンプだって行ってたから大丈夫かと思って。川に行きたかったんだけど、そこまで嫌なら行かないよ、何かゴメンな」
川……えっ?……ええーー!!
「さ、さっき、それを言おうとしたの?」
「あ、ああ。でも行くのやめたからさ、中戻ろ?」
ウソでしょ、なんて……紛らわしいのよ!
それじゃアタシって、川行くのが嫌で紅茶床にぶち撒けて走って逃げたアタオカ女じゃん!
アタシ史上1番ダサい!
「花音がインドア派だと知ってたけど、あそこまで嫌がるなんてやっぱ肌焼きたくないんだよな? でも言い掛けただけでわかるなんて、凄いな花音」
ええ、自分でもそう思うわ、一華流で言えば早とちり大魔王ね、しかも花火大会以来の2度目だし。
「ゴメンな、花音の好きな所行っていいからさ」
「いいよ、川行こ」
「だ、大丈夫! 店の中の方がクーラー効いて涼しいしさ」
「日傘買うから大丈夫だよ」
「無理すんなよ、逃げる程嫌だったんだろ?」
「や、やめて! アレは誤解よ! 勘違いしちゃって、お願いだから忘れて!」
「ホントに? わかった、じゃあ傘買って行こうぜ!」
響介嬉しそう、満面の笑み、可愛い。そんなに川行きたかったんだ、でもなんで川?
そういえばアタシを追いかけて来た時の顔、すごく必死だったな、あんな困った顔するなんて。
もしかしたら満更でもないのかな、アタシの事。
「フードコートで言いかけた花火大会の事って何?」
「返事まだ出来なくてゴメン。待たせて申し訳ないと思ってるんだけど、まだ答えが出せなくて」
振られたんじゃなかったんだ、良かった。響介、なんて顔してんのよ、もう。
「焦んなくていいよ、それじゃ行こっか川に、フフ」
「う、うん!」
焦ってたのはアタシもだけどね。
響介に飛びついて腕を組みたい衝動に駆られたけど思い止まった。今までは平気で出来たのにためらう自分がいた。
さっき本気で振られたと思った時に気が付いたの、アタシ本気で響介の事が好きだ、だから
恋人紛いな事はしたくない
する時は恋人として一緒に歩く時にしたい、これは我慢じゃない、願いだから。
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「あれれれ、花音さん、響と一緒に帰って来たという事はもしかして」
「そうよ、響介と一緒にお出掛けしてました」
「可愛くない言い方だな、しかもキャンプの後片付けもしないでおデートとは」
「ゴメン美優姉! それは悪かったわ、今度穴埋めするから」
「どこ行ってきたんだい?」
「ショッピングモールと川よ」
「かわ? 」
「響介が天気いいから行きたいって行ったんだけど、川眺めながらまったり過ごしただけだった、天気がいい日は川辺でボーとしたい時があるんだって。できれば海がいいんだけど、近くにないから川なんだって」
「だから浮かない顔してたのかい」
「だって折角2人で出掛けたのに川って……やっぱアタシの事意識してないのかなって思っちゃって」
「花音、それは逆でしょ進展してんじゃん」
「どこがよ、もう、お風呂入ってくる」
あの子意外と鈍感なんだね、そんなまったりしたプライベート空間に誰か入れたりしないと思うがね。
それだけ響介にとっては安心できる人だって事じゃん。
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今日も快晴、ヨシ、行くか!
俺は今、槇斗と電車に乗って札幌に向かっていた。
《槇斗は夏休みも塾かい?》
《そう、夏期講習があるからね、それと鈴羽の会社で手伝いをさせてもらってるんだ》
《会社の手伝い?》
《そうなんだ、ここだけの話し僕は小鳥遊グループへの就職がもう決まってるんだ、高校卒業したらすぐ来いと言われて今から仕事を覚えさせられてるんだよ》
《凄いじゃん、槇斗! いいなあ進路決まってて。俺なんかやりたい事ないもんな、夏休み中に探してみるかな》
《別に凄くないよ、何か鈴羽のお父さんに気に入られて逆にプレッシャーだよ、これなら夏期講習申し込まなきゃよかった、お金払っちゃったから勿体無いしね。そうだ良かったら響介も行こうよ!》
《夏期講習?》
《違うよ、小鳥遊グループの札幌支社、明日一緒に行こう!》
昨日、花音と出掛けて帰って来てから槇斗に電話した。やりたい事が中々見つからなくて槇斗はあるのか聞こうとしたらこうなってしまった。
「槇斗、ホントに俺も良かったのかよ」
「なんだ、大企業小鳥遊にビビってたんだ?」
「ち、ちげーし! ビビってねーし! ちょっと早めのインターン、いや、ただの社会科見学だし!」
「何か見つかるといいね」
「ああ」
「駅から歩くのかい?」
「うん、時計台の方さ」
俺達は駅を出て会社に向かった、札幌駅ってあんなにデカかったんだ、1人なら絶対迷子になってたな。
歩いて行くと時計台が見えてきた、札幌の代名詞の様な存在の時計台だが見て落胆する人もいるらしい。
わからない事もない、これだけビルに囲まれた中にあるんだもん、そこだけ時代が違ってる。
でも俺は周りに流されないで時を刻む姿に感銘を受けた、それはただそこに建ってるだけで周りが勝手に変わっていっただけかもしれない。でも変わらない強さの様なものを感じたんだ。
「変わらなきゃならない勇気も大切だけど、変わらない強さも大事だよな」
「? うん、そうだね」
時計台見てこんな事思うの俺くらいかもな、ハハ。
「着いたよ、響介、覚悟はいいかい?」
「上等! いざ参る!」
「こんにちは、高橋さん! 今日は友人共々よろしくお願いします」
「こんにちは! 真壁響介です、よろしくお願いします!」
「あらあら、彼もイケメンだこと、これはあの人も喜ぶわね」
「高橋さん、誰の事ですか?」
「あのね槇斗くん、残念だけど彼は一緒にお仕事する事はできないわ、だって知識がないでしょ」
「そうですよね、ゴメン響介、ホントに社会科見学かも」
「気にしないでよ槇斗、それでも貴重な体験だよ感謝してる」
「あら残念がるのはこれからよ槇斗くん」
「えっ?」
「響介くんの担当はね、なんとユリちゃんなんだから」
「ユ、ユリアさん!?」
「槇斗くんのお友達だからイケメンかもって言ったら喜んで引き受けてくれたわ」
「ハハ、ユリアさんらしいね。羨ましいよ響介、ユリアさんはね、小鳥遊グループが誇るエリート集団、チーム“フロンティア“ の一員なんだよ」
よくわかんないけど凄そう! でもなぜそんな人が!?
8年前の大雪のあの騒動が無ければ、俺は普通に友達もいて楽しい学校生活を過ごしていたのかもしれない。アメリカにも一緒に行ってたのかもな。
高校生で1人暮らしするなんて無茶振り、今思えば父さんの思惑があった様にも思える、でもそれがあったからこそ栞さんと出会えたんだ。
槇斗とは同じクラスになって仲良くなったけど、人を避けてきたままの俺だったら友達になれていただろうか、アンソレイユの皆んなが俺を変えてくれたから槇斗と友達になれた気がする。
どんな道もきっと意味のない道はないと思う、ずっと進んでから振り返った時に気付くものなのかもしれない、全ては繋がっていたんだと。
この道を歩いてきたから、あの人に出会ったんだと
「キミ、ツイてるよ。今日キミを面倒みてくれる人はね、我が社のエースなんだから」
人は人と出会い成長していく
「ついこの間、大きな案件終わってたまたま空いてたのよ、大変だったらしくてね、気分転換にいいかもって引き受けてくれたのよ」
そしてその先にある新たな出会いへと繋がっていく
「優莉愛ちゃん、昨日言ってた子連れて来たわ、よろしくね」
俺は今、紗夜子さんの他にもう1人、この先師匠と呼ぶ事になる人と出会おうとしていた。
「やあキミか、ホントにイケメンじゃん。お姉さん嬉しいよ、ん? これってセクハラじゃないよね?」
「ハハ……」
紗夜子さんが武と仁の師匠なら、この人は知と戦略の師匠となる。
「誠穣学園1年の真壁響介と言います! 本日はよろしくお願いします!」
凄い綺麗な人だ。色白で綺麗なグレーの長い髪、目つきと言うか眼光は鋭いがまつ毛が長く、切れ長な目は一層美しさを際立たせている、誰かに似てるな。
「誠穣の1年生で、響介……キミってもしかして、アンソレイユに住んでたりする?」
「は、はい、お世話になってます、よくご存知で」
栞さんの知り合いかな。
「そっか、そっかー、これだけのイケメンくんと一緒に住んでるんだもん、あの子も熱上げちゃう訳だわ、納得」
あの子?
「自己紹介まだだったね、ワタシの名前は八神優莉愛、28歳」
八神って言えば……。
「八神来愛のお姉ちゃんだにゃん」
歯車がまた1つ回り始めた
折角だからと優莉愛に連れて行かれたのは周辺の大型店に競争負けして今にも潰れそうな商店街だった。その商店街の立ち退きの説得を優莉愛はなんと響介に依頼するのであった。そこに隠された優莉愛の真意とは。
第32話
フォルトゥナ〜運命の車輪〜 前編 鬼神と呼ばれし女
12/23 お昼に更新です!




