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陽だまりのセプテット  作者: ÷90
第2章 風花〜儚く舞い散る雪のように〜

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第30話 この料理に想いを込めて

12/13 誤字、訂正しました。

 今日は札幌のキャンプ場に行く。広大な公園でキャンプ施設の他フラワーガーデンや遊具施設等もあり、道内有数のレジャースポットである。公園もキャンプ場もやたら広い、更に整備が行き届いていて綺麗なので比較的虫が少ないらしい。虫嫌いな花音でもここならと言っているくらいだ。


 キャンプ場のチェックインが昼過ぎなので、その前に釣り堀に行こうという事になった。

 ウチの女性陣は花より魚らしい、釣った魚をその場で炭火焼きで食べられるらしいので皆やる気満々だ。

お転婆娘もいるし空回りしなきゃいいが。


「響介、響介、餌がつかないよ」

釣り針にエサが付かなく花音が悪戦苦闘していた。


「釣れた! ほら見て釣れたよ!」

はやっ! 開始早々釣り上げたのは一華だった。アンソレイユ唯一の運動部なだけはあるな。

「なんの魚だろ?」

「それはニジマスですよ」

親切なスタッフさんが教えてくれた。

他にはヤマメもいるらしい。


 餌は団子状で千切って付けるのだが簡単そうで難しい、一華がまた釣り上げてるよ。

「あの子ホント楽しそうね、アウトドア系大好きなのね、アタシとは真逆かも」

そう言いながらも参加する律儀な花音にちょっと笑いそうになった。


「クワガタ捕りもそうだけど一華が結婚して子供が出来たら、子供達楽しそうだな」

 他の客は子供連れが多い、夏休みだもんな。一華は餌を上手く付けられない子供に付け方を教えてあげている、子供と触れ合う場面がいままでなくてわからなかったが子供が好きなのだろうか。


「もういいわ、響介。未来の奥さんの所に行ってあげたら?」

「はっ? 花音、何言って……」

もしかして、ヤキモチか?

その時、誰かにいきなり襟の後ろを引っ張られた。

「な、誰だよ! えっ、釣り糸?」

「響介くんが釣れちゃった」

お前か、来愛の釣り針が引っ掛かったようだ。


「えへ、お持ち帰りしちゃお!」

「リリースしなさいよ!」

俺は魚か!


「ボクが釣ったんだからボクのものだよ! どうしようがボクの勝手でしょ」

「ここは釣り堀よ、魚釣りなさいよ」

「人釣ったらダメなんて、書いてないにゃん!」

「わざわざ書かなくてもわかるでしょ!」



 釣果は一華と美優さんがダントツの10匹、栞さんとココで5匹、花音と来愛は0匹だった、その2人の面倒を見ていた俺も集中出来ず0匹という屈辱を味わった。

それでも1人3匹は食べれそうだ。


 食べる場所もあり席に着くと、スタッフさんが炭火を持ってきてくれた。

「よう0匹トリオ、有り難く頂きな」

「3人で0匹なんて信じられないよ、無人島生活なら餓死してるんじゃない?」

「魚以外も食い物あるだろ!」

「そもそも、そんな状況にならないにゃん!」

「そういう人間が淘汰されていくんだね」

「何からだよ!」


「そこまでにしなさいな、アナタ達。そろそろ焼けるから食べましょう」

「ココは自分が釣ったお魚さん食べたい!」

「0匹トリオさん、ちゃんと感謝して食べるんだよ。この命を頂くという事を理解して」

一華のヤツ何を偉そうに、大事な事だけどお前に言われたくないわ。


 花音がやけに大人しいな、普段なら言い返してるのに。緊張してるのか、昨日俺があんな事言ったから。


《えっ!? キャンプで料理しろって? 嫌よ、アタシが皆んなの前でやらない理由知ってるでしょ》


《俺には栞さんや来愛が花音の料理を非難するとは思えないんだ》


《でも、あの時の表情(かお)は……》


《表情だけじゃわからないだろ? それに今回は俺がいる、ココだって花音の料理が大好きなんだから。もう1度作ってほしい》


 花音は渋々だが作ると言ってくれたが、やはり気乗りしないのだろう。でも大丈夫だよ、その時の事2人に聞いて状況が理解できたから、花音の勘違いだって。

 でも言っても信じてもらえそうにないから、もう1度花音に作ってもらうには、キャンプは絶好の機会だ。

すれ違ったままにはさせたくない。


 自然の中で釣った魚を炭火焼きで食べる、美味しくない筈はない! ウチは父さんが仕事で忙しかったから、皆んなでどこかへ出掛ける事はあまりなかったから凄く楽しい。

 食べ終わった頃にはキャンプ場のチェックインの時間になったので移動する事になった、それにしても広い公園だな、車が無ければ移動はキツい、園内にシャトルバスがあるくらいだもんな。



 キャンプ場に着いた、栞さんと美優さんが受付しに行った建物に俺も入ってみて驚いた、売店、シャワー、洗濯機まである。

更に驚いたのは俺達が泊まるキャビンだ、デカい! トイレ、キッチン、冷蔵庫が完備! テラスもめっちゃ広いじゃん! BBQ用の木製テーブルまであるじゃん! 何か別荘に来た気分だ。


「響ちゃん、嬉しそうね」

「はい! こういう所初めてなんでワクワクします!

 おお、ロフトもある」

「ウチは女ばかりだからトイレも付いてる所がいいの、綺麗なキャンプ場だけど外のトイレは特に夜なんて蛾がいるでしょ? 花音は絶対無理だから」

でしょうね、前回のクワガタ捕りでの慌てよう見てたらね。


「これは料理しがいがあるぞ!」

「響が作る気? 不安しかないんだが」

「ハハ、メインシェフは花音だから安心したまえ」

「紛らわしい言い方するなよ」


「お兄ちゃんいらないでしょ、折角の花音ちゃんのお料理なのに」

花音の料理になると途端に冷たくなるよなココ。

「えー! 響介、料理できるの? それに2人でなんてズルい! アタシも作る」


「いっタン、アスレチック行こうよ、色んなのあるみたいにゃん」

「わあ行きたい! 行こう、今すぐ行こう!」

単純なヤツ、相変わらずの腕白少女。


《来愛、キャンプの時俺と花音で料理すると言ったら一華もやると言いかねないから、その時は一華を連れてどこかに遊びに行ってほしいんだ》


《わかったにゃん! ボクも花音タンの料理楽しみだから協力するにゃん、でもホントはねボクも一緒に作りたかったんだから》


《このお礼は必ずするから、頼む!》


《フフ、OK! 楽しみにしてるにゃん!》


 ヨシ! 打ち合わせ通りだ、サンキュー来愛。



 やっぱりまだ浮かない顔してんな。

「まだ、準備するには早いか、その辺散歩でもする?」

「ううん、時間ないよ、仕込みしないと」

「了解です、花音シェフ!」

「そういうのヤメて、余裕ないから」

「ご、ごめん」

「響介、テラス行こ」


 テラスに出ると花音が後ろから抱きついてきた。

「言い方悪くてごめん、ダメだね、こんなんじゃ」

相当不安みたいだな。


「大丈夫、美味しい料理は皆んなを笑顔にしてくれるよ、花音の料理なら大丈夫だよ」

「そうかな、アタシ料理で褒められた事なんて殆どないから」

「はあ? それはおかしい! 多分、花音の料理が美味すぎて言葉を忘れたんだろう」

「フフ、何それ。ううん、きっとそうだわ、ありがと響介。それに折角皆んなでキャンプに来たんだから楽しまないとね!」



「何からする? 俺が手伝っていいのか?」

前回はいらないとリビングに避難させられたもんな。

「うん、お願い、手伝って」

「了解! で、何作るんだ?」

「昨日買い物した時に言ったじゃない、もう忘れたの?」

そう、昨日2人でキャンプ飯の材料調達の買い物に行ったのだ。

「ごめん、馴染みのない言葉だったんで忘れました」

「ローストチキンとラムシャンデリアの焚き火ロースト、これは見た目もインパクトあるから期待しててね、それとトマトのパエリアとシーザーサラダね、温泉たまごとドレッシングも作らなきゃだわ」

吹っ切れたのか、楽しそうだな、きっと料理するのが好きなんだろうな。


「響介、料理した事あるの?」

「ああ、少しね」

「意外ね、全然出来ない人だと思ってたから、助かるわ」

「花音ちゃん、料理してるとこ見ててもいい?」

「ココ、良かったら手伝ってくれる?」

「えっ、いいの!? 花音ちゃん!」

「うん、助かるわ」


 ココに教えながら作ってる姿はとても楽しそうだった、何か変わったな花音、穏やかになったというか雰囲気が柔らかくなった。


 いよいよ夕飯の時間になりお転婆娘も帰ってきた。

「わあ、美味しそう! これ全部花音が作ったの?」

「そうだよ、お姉ちゃん、凄いでしょ! ココも手伝ったんだよ、お兄ちゃんは、まあまあ頑張った方ね」

花音サイドになったココは何故か俺に冷たい、何か寂しいな。


「響介、手伝ってたの? ズルい! アタシも手伝いたかったのに! 響介はアタシが邪魔だったんだ……」

「いや、決して邪魔だったわけではなくて、えっと」

一華が拗ねてしまった。


 何とかしないとな、折角のキャンプで雰囲気を悪くしたくないと声を掛けようとしたその時、一華が飛びついてきて俺はひっくり返る様に倒された。そして一華は俺に馬乗りになった。

「騙されおって未熟者が」

やられた、思えばあんな風に落ち込むデリケートな人間じゃなかった!


「嵌めやがって、心配して損したよ!」

「そんなことないよ、仲間外れにされて悲しいよ、えーん、えーん」

「腹立つ演技だな、いつまで乗っかってんだよ!」


 俺は一華を降ろそうと腰を掴んだ。

「ひゃん! 何するのよ、エッチ!」

「こら、降りろ! 暴れるな! くすぐるんじゃねえ!」

この態勢も色々よろしくないだろ!

「楽しそう! ボクも混ぜるにゃん!」

「2人で乗るな! 重いだろ!」

「女の子に重いだなんて失礼ね」

「ふざけんじゃね……」

ムニュ。

あっ、この感触はアレだ、間違いない。

バチン!

「イッテー!」

一華に思いっ切りビンタされた。


「サイッテー! エロエロ大魔王! もうアタシ帰る!」

「ちょっ、いっタン!? 響介くん、早く謝るのだ!」

 まさかの反応に困惑してしまった。皆んなが楽しみにしていたキャンプ、花音が頑張って料理してるのに。

俺、やらかした?


 しゃがんだまま泣いている一華に近寄り、恐る恐る声を掛けた。お転婆娘だと決め付けて繊細な部分を見逃していた俺が悪かった。


「一華、ごめん、わざとじゃないんだ、ホントにごめんな」

こんな事で皆んなが楽しみにしていたキャンプを台無しにしたくない。

「柔らかかったでしょ? テヘッ」

何言ってんの、コイツ!

泣くどころか顔を上げニヤリと笑いやがった。


 またやられた……コイツ、俺の反応見て楽しんでやがったな!

「一華、お前!」

「キャー! エロエロ大魔王が怒った、またオッパイもまれちゃう、逃げろー!」

「まちやがれ!」


「何やってんのかね、アイツら」

「フフ、楽しそうじゃない」

「栞はあの2人がじゃれあってる所見るのホント好きな」



 そんな騒動のさなか花音の料理が出来上がったのだった。

「響介、運ぶの手伝って」

 香ばしく焼けた肉の匂いと色鮮やかなパエリアとサラダに空腹が加速する。少しくらい、いいよな。


「あっ、響介、つまみ食いはダメよ!」

「もう、お兄ちゃん、子供なんだから」

「ごめん、うまそうで我慢出来なかった」

「ホント美味しそうね」

「お肉の方は両方ともハーブで味付けしてるの、シーザーサラダのドレッシングはアタシが今まで作った中でも自信あるものなので皆んなの口に合うと嬉しいんだけど……」


 エプロン姿でトレーを抱えながら、はにかみながら説明する花音は可愛かった。


「凄いじゃん、花音! アンタどこぞのシェフなん? あの焚き火で吊るしてるヤツ食べたいんだけど何あれ? 凄くない?」

「ボクはパエリア食べたい! トマトのパエリア何て初めてだよ!」

「このサラダ美味しい! このドレッシング最高だよ花音!」

「あっ、お姉ちゃん、もう食べてる! まだいただきます、してないよ!」

ハハ、皆んな楽しそう、良かったな花音。


「花音、その吊るしてる肉もう食べれるのかい?」

「待ってね、美優姉、今外して取り分けるから」

「見た目も豪快で美味しそうね、何てお料理なの?」

「シオりん、これはラムシャンデリアよ、センターに行って焚き火架台とか借りてきたんだ」

「はい、どうぞ、美優姉、シオりん」


 不安そうに2人が食べる所を見つめる花音、大丈夫だよ、あの時の事、栞さんと来愛に聞いたら、あまりの美味しさに言葉が出なかったらしい。


「美味い、最高じゃん花音! ワタシの嫁になれ!」

「ダメだにゃん! 花音タンはボクのお嫁さんなのだ。花音タンの料理は次元が違うにゃん、ボクと結婚して毎日作って欲しいのだ」

「本当に美味しいわ、花音。前作ってくれた時も思ったけど、下処理とか仕込みがとっても丁寧で花音らしいお料理だと思うわ。自分の作る物が恥ずかしくなっちゃう」


「そんな事ないよ! シオりんの料理も来愛の料理も美味しくてアタシは大好きだよ、ただアタシは料理の先生に教えてもらってただけで、同じ環境なら誰でもこのくらい作れるというか……」

 言葉に詰まってる、頑張れ花音、想いは伝わるから。


「アタシは自分の料理なんて大した事ないって思ってた、だから初めて皆んなに作った時にあんなに美味しいなんて言われると思ってなくて。でもその時のシオりんと来愛の反応だけが微妙だったから、空気読まずに何かやらかしてしまったんだと思って……」


「だから変に気を使ってしまって、その後から2人の料理に美味しいって言い辛くなったんだろ? 本当はずっと言いたかったんだよな?」

一生懸命、自分の気持ちを伝えようとする花音を放って置けず、つい口を挟んでしまった。

「う、うん、言いたかった……」


「花音、そんな事思ってたなんて、気付いてあげられなくてゴメンなさい。あの時は花音のお料理のレベルにビックリしちゃって言葉が出なかったの」

栞さんは花音を抱きしめた。

「アナタは優しい子ね」

「シオりん……」

花音の目には涙が浮かんでいた。


「ボクもそうだよ、だってお店で出てくる様な料理だったもん。それに花音タンは料理しない子だって思ってたから尚更ビックリしちゃって言葉が出なかったにゃん」


「これからアタシもご飯作ってもいい?」

「勿論よ、是非お願いしたいわ、ありがとう花音」

「花音タン、色々教えてね」

「うん!」



 良かったな、花音、どんなに相手を想っていても口に出さないと伝わらないから。

 ところでこのお嬢さんはいつの間に隣りに?


「響介、このお肉美味しいよ、はい、あーん」

何やってんの一華、今お涙ものの感動シーンなんだが?

「お前は空気読めよな」

「空気は吸うものでしょ」

確かに……って、おい!


「もう、照れちゃって! オッパイの次はどこ触ろうとしてるにゃん?」

「おまっ、何言ってんだよ!」

来愛かよ!

「ゴロにゃん!」

猫の様に擦り寄って来やがった。


「いっタン! ボクのにゃん語、使ったらダメにゃん!」

本家が現れた。

「にゃん語は誰のものでもないにゃん」

何? この争い。


「一華、他のドレッシングもあるの。きっと一華が好きな味だと思うから掛けてみて」

「お主、中々気の効くやつじゃのう、可愛がってやろう、ほれ、(ちこ)う寄れ」

今度はお代官様か!


「フフ、しょうがないお人ですわね。はい、あーん」

慣れてんな、花音!

「ん、んんー!? か、辛いのだー!!」

「あら、お辛い物がお好きかと」


「言ってない! 一言も言ってないのだ! 痛い、口の中が痛いにゃん! お主、何をしたー!」

一華、相当辛いんだな、キャラ、バグってんじゃん。

「このペッパーXならご満足頂けるかと思いまして、フフ」

ギネス世界一とか書いてんじゃん、その瓶!


「花音タン、ボクには入れないでよ!」

「大丈夫よ、一華がちょっと、おいたが過ぎたようだからこれで静かになるでしょう」


「痛いよー! 水ー! 花音のバカー!」

余計うるさくなったのだが。


 でもこれはこれで楽しいし、良き思い出となるのだろう、絆が深まっていく感じがした。



 しかし、ここまで深く繋がっていたはずの絆に亀裂が入るのはこの数週間後だった。

 アンソレイユを二分する争いが勃発するのだ。

 その争いの火種となった俺はアンソレイユを追い出される事になる。


 その発端となる人物に出会う瞬間は、すぐそこまで来ていた。俺が進むべき道を教えてくれたその人は、その力強さで俺の明日へと続く道を切り開いてくれた、だが同時に嵐も連れて来るのであった。

 



 


夏休みも中盤になり、自分がやりたい事を見つけたい響介は槇斗に相談する。すると槇斗に呼び出され向かった先はなんとあの小鳥遊グループの札幌支社だった。そのある部署で響介は今後深く関わっていくある人物に出会うのだった。

第31話 導く者  12/18 お昼に更新します!

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