第3話 特訓開始!
12/4 シーンの切り替え方、変更しました。
コンコン!
「は、はい」
なんだ? もう朝か、昨日寝落ちしてたのか。
「きょ、響介お兄ちゃん、朝ご飯の時間です」
ココちゃん、お兄ちゃん呼び! マジ天使!
てかヤバッ、確かメシはなるべく一緒に食べる
ルールだった。
うわっ、皆んな集まってる。
「あら、おはよう、響ちゃん。良く眠れたかしら?」
栞さん、今日も綺麗だ。
「おはよう響介」
美優さん、意外とサバサバした人だ、栞さんの次に話し易いかも。
「おはにゃん響介くん」
おおー、オタ子。何かネコ耳つけてるんだが、そういう人なのね。
「み、皆さん、お、おはよ、うございます……」
ダメだ、緊張する、だって皆んな知り合ったばかりで昨日まで他人だったじゃん。何でこんなアッサリ挨拶できんの?
「相変わらず小さい声ね、朝くらいシャキッとしたらどうなのかしら?」
クッ、ワルコめ、今日も異常なしか。
「おそようナメック、まあ仕方ないわね、昨日はアタシも悪かったわ」
えっ、ウソ? マジ!? ピンキーが改心した?
「だってナメクジにはプライバシーどころか人権すらないのだから……ごめんあそばせ、オホホホホ」
こんのアマー! 昨日の事根に持ってんな。
「ねえ皆んな、提案があるんだけど……」
なんだ、なんだ、何言う気だピンキー、やな予感しかしねーぞ!
「入学式までまだ2週間あるわ、改造しちゃわなーい? ナ•メ•ク•ジ•く•ん•を」
悪魔の囁きだ! 皆んな耳を貸すなー!
「ほほう、面白そうだな」
み、美優さん!?
「海斗くんのままでもいいけど、皆がその気ならばやってもいいにゃん」
海斗くんって誰?
「いいですね、煮え切らない態度にイライラします」
ワルコ、言い方よ!
「ココは今のままでも……」
ホントこの子は天使!
「それはいいアイデアね、響ちゃん、せっかくだからやってみましょうよ」
し、栞さんまで!?
「そうと決まれば腕が鳴るわね、覚悟しなさいよナメック! アタシ達がアンタを男にしてあげるわ!」
え? そ、それって……。
「違う、違う、花音、それは筆おろし、エッチなやつ。響介、興奮してるから」
「なっ、やっ、ち、違うから! そういう意味じゃないからね!」
「まあ、花音が相手するならいいけど」
「冗談やめてよ、美優姉! 間違っただけよ!」
「あのう、筆おろしってなんですか?」
「ココちゃんはまだ知らなくていいのよ」
「仕切り直しよ! アンタがちゃんと高校デビュー
出来るように鍛えてあげるわ!」
こうしてピンキーを中心とした俺の育成計画が幕を開けたのだった。
——— 翌朝
「起床! 朝の弛みは人生の弛み! まずは朝の挨拶からよ!」
マジか……休み位ゆっくり寝かせてよ……。
なんつー元気な奴なんだピンキー、小学生か。
「お、おは、おはよう……」
「声が小さいわ! 目を見て、笑顔で! もう1回!」
「お、おはよう……」
「まだまだよ! できるまでご飯食べられないんだからね!」
まさかの鬼軍曹爆誕……。
やっと終わったか、まだ朝メシ食ってないんだが……てか、もうすぐ昼なのだが!
「ちゃんと噛んで食べるのよ、響ちゃん、朝からお疲れさま」
ああ、栞さん、癒されるなあ。
ピンキー張り切りやがって引っ越したばかりだぞ。今日は荷物運ばないといけないのに、朝から疲れたなー。
「やあ、響介、次は美優お姉様が担当しよう」
リビングのソファーで倒れていると美優さんが覗き込んで来た。
「私は目の担当だよ」
目? 眼科だったのかここ?
「はい、コッチみて」
う、うう、そう言われても目どころか顔だってまともに見れねー、人と目を合わせたくないから髪で隠してるのに。
「ちょっとピンで止めるよ」
止めるって何を?
美優さんは俺の前髪を軽くよけピンで止めた。
「うん、よし!」
う、うわー! 俺の結界がー!
「あ、あ、ううっ」
「ほら、下向かない、コッチみて」
む、無理だって! し、しかも女の人なんて!
かれこれ1時間攻防戦が続いた。
「や、やるわね響介……」
美優さんがたまりかねて、無理やり俺の顔を手で押さえて正面を向けさせた。が、俺は目を閉じたり、横や下に目線を逸らしたりして決して目を合わせなかった。
「どうだった美優姉?」
「うーん、手強い、頑なに目を合わせてくれないよ、これって無理じゃね?」
「ならばこの様な作戦は如何かにゃ?」
「来愛、アナタ天才ね!」
「アハ、おもしろそう!」
「や、やめろー、目が渇くー!」
「大丈夫よ、ちゃんとインターバルとるから、まあアンタが誰かの目を3秒見てくれたら終わるんだけどね」
瞼をテープで止められ顔を押さえられた。う、動けん……。上下、左右、前にそれぞれの顔がある! そう5人に5方向を抑えられたのだ。
「何て顔してんのよ! 面白過ぎるー!」
「少々、悪趣味な感じもしますが……ププ」
ワ、ワル子、ゆ、許さん!
ダメだどこを見ても誰かの顔がある、止むをえん! 必殺技だ! 秘技、高速回転!
俺は目を決して止める事なく上下左右に素早く動かし続けた。
「キャハハハ、何コレ!? 受けるー!」
「器用なやっちゃな」
「凄い技にゃん、ユニークスキルかにゃ?」
「き、気持ち悪いわ」
「な、なんだか可哀想です」
クソーこんなの拷問だー!
「それじゃあダメよ、響ちゃんが可哀想だわ、フフ」
「シオりん、でも全然目を合わせくれないんだよ」
「私に任せて」
助かったよ栞さん、マジ女神!
「響ちゃん、コッチに座って」
そこは窓際の1人用の席……。
栞さんはもう1つ椅子を持って来てそこに座った。
「響ちゃん、座って」
俺は言われるがまま対面で座った。
2人で座ると思いの他近いな、そのテーブルに栞さんは両肘を立て両手に顎を乗せた。
ガタッ!
あまりの近さに俺は咄嗟に体をのけ反らせた。
「フフ、大丈夫よ、少しお話ししよ」
「は、はい……」
「あのね、響ちゃん、人とお話しする時、目を見るのはその人の心を見る事なの」
こ、心……。
「どういう気持ちで聞いてるのかな、何を考えているのかな、ちゃんと聞いてくれてるのかな、とかね。目を見てるとね、わかる時があるんだよ。目は口程に物を言うって言うでしょ?」
気持ちがわかる?
「だから気持ちが通じ合う事もできるんだよ、私は響ちゃんとそんな関係を築いていきたいなあ、だから目をみて話そ?」
し、栞さん、こんなに優しく諭してくれる人なんて今までいなかったな。
が、頑張りたい……。
俺はゆっくりと顔を上げ栞さんを見つめた。
体が強張って相変わらず視線はままならないができるだけ視線を合わせる様に堪えた。
「フフ、少し目が合ったね、頑張ったよ、えらい、えらい」
栞さんは優しく頭を撫でてくれた。
「これが大人の余裕ってヤツね……流石シオりんだわ」
「まあ、私達にも出来るかだけどね」
「このやり方がいいよ! じゃないと響介お兄ちゃんが可哀想だもん」
「ヨシ、目は今後このやり方でいきましょ! 少し休んだら次は会話よ、一華お願いね!」
一華か、声が小さいといつも言われてたな、どんな事になるんだ?
「担当の一華です、本日はよろしくお願いします。それではお腹に手を添えて発声練習を致しましょう!」
固い、固いヤツだなー、風紀委員タイプ?
しかし発生練習なんて演劇部かよ!
「アエイウエオアオ! はい!」
「アイウエオ……」
「違います、ハァ、そこからですか? 声も小さいですよ?」
「いい練習だな、普段から声小さい人は、大声を出す事に抵抗があるからね」
「これも時間が掛かりそうだけどね」
「次は会話よ、これは目を見て声も出さなければならない、勿論会話について行けるよう情報収集もしなきゃならないからこの修行の集大成ね!」
「花音先生!」
「はい、一華さん」
「笑顔の練習もしてほしいです、その、笑い方が汚くて気持ち悪いので」
酷い! もう笑えない……。
「後は何かあるかしら?」
もう、やめて! 死んじゃうから!
「礼儀作法!」
「お茶の立て方!」
「料理!」
「英会話!」
「まて、まて、まて! 何を目指してんだよ!」
「あら声出るじゃない」
「充分でしょ花音、2週間しかないんだから」
「そうね、じゃあ次は会話よ、来愛ちゃんお願いね!」
「まだやるのかよ! 休ませろよ!」
「あん?」
「や、休ませてく、ください、お願いします……」
「ダメよ、2週間しかないんだからね、甘えは許されないわ、しっかりしなさいナメック!」
鬼だ……何てとこに来てしまったんだ。
「ナメックから来愛に話し掛けて」
いきなりかよ、何話したらいいかわかんねーよ。
「ご、ご出身は……」
「末広3丁目にゃ」
「お見合いか! 来愛も出身地ピンポイントで言わない!」
特に女子となんか殆ど会話した事ないんだよ。
「ナメックしっかりやんなさいよ!」
「そ、それでは……」
「にゃ?」
「また……」
「また?」
「明日……」
「終わりかーい! ふざけんなナメック!」
「まあまあ花音、それが出来たらこうなってないよ、始めは話題振ってやろうよ、まあ初日だしぼちぼちね」
「じゃあ最後は笑顔の練習よ、爽やかに笑えるように……誰にお願いしようかしら?」
「は、はい……、ココ、やってみたいです」
「じゃあココお願いね」
「はい!」
「じゃ、じゃあ、響介お兄ちゃん、ココみたいに笑ってみて! はい、ニーーって」
ココちゃん、無邪気で可愛いな、栞さんも優しいのにアイツはなんであんなに捻くれてんだワルコのヤツ。
「二ッ、ニッ、ヌニッ」
「キモ! 変な生き物みたい!」
俺のアイデンティティが薄れていく……。
「花音、一生懸命やってるんだからそんな事言っちゃダメだろ、ほら響介死んだ」
「響介お兄ちゃん、大丈夫? 花音ちゃん酷いよ、響介お兄ちゃんうずくまっちゃった……」
酷過ぎる……。
こうして理不尽極まりない修行がスタートした。
2週間!? 持つわけないだろ。




