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陽だまりのセプテット  作者: ÷90
第2章 風花〜儚く舞い散る雪のように〜

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第28話 真夜中のデート


 うーん、天気が良くて清々しい朝のはずが、夢見が悪かったせいでスッキリしないわ、漸く夏休みに入ったというのに、この前の一華の宣戦布告からの来愛まで参戦してきた響介争奪戦の勃発。


 アタシが居ない時に何されてるかと思うと気が気じゃないわね、まあ人の事は言えないけど。


 それにしても一華は侮れないわ、ド直球で攻めてきたり正面突破も(いと)わない特攻少女、一撃で状況変えられる時があるもの、裏工作系のアタシとは正反対だわ。


 来愛はあの豊満ボディで響介を誘惑しようとしてる、今は夏で薄着だから来愛には打って付けの季節、響介なんて目のやり場に困ってる時があるから効果覿面(こうかてきめん)よね。


 冷静に考えると2人とも強敵だわ、それぞれに飛び抜けた武器があるもの。もしかして割りとマズい状況?

 でも響介も響介よ! デレデレしちゃって、花火の時いい感じだったんじゃないの?


 ああ、失敗したなー、返事はいつでもいいなんて言っちゃったし、他の人を好きになってもいいなんて、何であんな事言っちゃったのよ、響介がモテる事忘れてた、だって割りと家にいるし、そんなに遊びに出歩かないから油断してた。いや、逆か! 家に居る方だからだ、だから一華や来愛と仲良くなり過ぎたのかも。もしかして学校にも伏兵がいたりするの!?

ああー、アタシのバカ! あんな事言わないでもっと攻めればよかったー!




 取り敢えず起きようかしら、休みだからといって寝過ぎるのは怠惰の始まりよね。

 リビングに降りて来たけど誰もいない、あのアンソレイユに棲みついてる謎の生命体ミユミユすら居ないとは。響介は? 一華は部活、来愛は買い物行くって言ってたしこれは抜け駆けチャンスでは?

 響介はどこかしら? 


「あら、花音、おはよう。今日お店忙しいから悪いけど掃除と洗濯お願いね」

「シオりん、響介は?」

「お店の手伝いよ、何か用事でも?」

「ううん、何でもない、掃除と洗濯やっとく」



 お店のお手伝いじゃしょうがないわね、夏休み早々響介も頑張るじゃない、終わったら(ねぎら)ってあげようかしら。


「フー、やっと終わったわ、天気がいいから洗濯物すぐ乾きそうね、それにしても暑いわね、冬よりはいいけどここまで暑いとちょっとね」

元々温室育ちだから室内系女子なのよ、お肌も紫外線から守らなきゃだわ。


 わっぷ、洗濯物が風で顔にまとわりつくなんて、もう、誰のよ!

「きょ、響介のシャツじゃん、やっぱ大きいな、男の子だもんね、いい匂いがする」

「それは洗剤の匂いだと思うが?」

「ひゃあー! 美優姉! い、居たの!? ア、アタシはこの洗剤の香りが好きなの! ああいい香り」

「ふーん、そういう事にしとくかい、ほれ」

あっ、アタシの好きなチョコミントのドリンクじゃん。

「中で語ろっか、いずれお屋敷に戻らなきゃならないお嬢様が恋をし始めた理由を聞かせなよ」


 そうよね、美優姉はアタシの良き理解者、色々と気に掛けてくれているもの、ちゃんと伝えるべきよね。

 響介を好きになって今まで諦めていた人生に抗うことを決めたんだ。自分の人生も響介も誰にも譲りたくない、この気持ちを全部美優姉に話そう。


「そうか、アンタの事はホントに心配でさ、でも家があの桐島だもんな、助けたくてもどう手を差し伸べればいいのかわかんなかった。わたしゃ嬉しいよ、花音が自分で歩く道を選んでくれてさ、私も協力するから頑張ろうな!」


 アタシの身の上の事をシオりんはお婆様と話しているから知ってる、美優姉が知っているのはアタシから話したから。あの時は美優姉に歯向かって、コテンパンにされたっけな。


 アンソレイユに連れて来られた時のアタシは心が壊れかけ(すさ)んでいた状態だった。新しい環境に馴染もうともせず、事あるごとに不満をぶちまけたり八つ当たりする最低な人間だったんだ。

 

 でも、美優姉はそんなアタシをほっとく様な人じゃなかった。あんなに怒られたのは初めてだったな、ズカズカと人の心に土足で入ってきてアタシの心の中をめちゃくちゃにした、これでもかってくらい叩きのめされたな。


 美優姉は何よりも人の心を大事にする人、だからアンソレイユの皆んなをワガママな振る舞いや暴言で傷付けるアタシの事が許せなかったんだろう、そう思ってた。

 だけど美優姉が叩きのめしたのはアタシの弱い心だった、その後に芽生える人を思う心を信じて。

 その時思ったの、この人は違うって、ちゃんとアタシを見てくれる人だと感じた。こんな乱暴な優しさもあるんだなって後から笑ってしまったけど。


 だから知って欲しかった、心が壊れかけた理由じゃなく、桐島花音という人間を知って欲しかった、その上で受け入れてくれるならアタシはきっとここで新しい自分を見つけられると思ったから。


 自分の生い立ちを全て話し終えた時、美優姉に抱きしめられたな、痛いほど強かった。けどその痛みが嬉しかったんだ、だって抱きしめる強さがアタシを思ってくれている証のような気がしたから。


   《私は何があってもアンタの味方だよ》


 この人はアタシを守ってくれそうな気がした、外の世界でアタシが気を許した初めての人。


 シオりんも信頼できる人だけど理解するのには時間が掛かった、なぜなら人を信じられなくなっていたアタシにはシオりんの優しさの深さが理解出来なかったから。


 何でいきなり来たアタシに色々優しくしてくれるのか、周りの皆んなと同じ様に扱ってくれるのか、全く理解出来なかった。打算がない人間なんていない、アタシの周りは権力や欲にまみれ、それを見透かされないよう仮面を被った人間ばかりだった、だからシオりんの無償に近い優しさは胡散臭い以外思えなかった。


 けど、今は違うよ、感謝しかないよ、これ程愛に満ちた人はいるのだろうかと思う、逆に心配になる、もっと自分の事も気に掛けてよって。




「そうか、そうか、自分の足で歩き始めたか、だったらこれからは、肩入れしないよ、同情するのはそんな人間に失礼だからね、それに皆んなアタシの可愛い妹だから」

「そんなー、そこは贔屓(ひいき)してよ美優姉!」

「あんなカッコいい事言っといて、アンタにゃプライドはないんか」




 夕方になり皆が揃い始める。お転婆姫も帰ってきたわね。

「ただいまー、花音、ねえ見て見て、いいでしょ、コレ」

「キャー!! 何持ってんのよ一華! 近寄らないで!!」

「何事にゃ! どわー、いっタン、クワガタにゃん!? 何で触れるの!?」


「へへー、部活帰りに捕まえたんだ、カッコいいでしょ? ほら!」

「やめて、一華! 気持ち悪いわ! お腹みせないでよ、グニョグニョ動く脚も気持ち悪いわ」

「えー、そうかな? ちゃんとよく見てよ」

「やめてってば!」


「何やってんだよ、花音うるさいなあ」

「響介、助けて! 一華がクワガタを近づけてくるのよ!」


「お、ノコじゃん、この辺にいるんだ」

「そだよ、部活帰りに見つけたんだ、いいでしょ」


「クワガタはやっぱ水牛だよな、アレが1番カッコいい、あのハサミの形がいいんだよ」

「えー、ミヤマの方がゴツくて強そうじゃん。ねえ響介、明日の朝捕まえに行かない?」

「うーん、朝か」

何しれっと誘ってんのよ、断ってよ響介。


「今日の夜にしようぜ、今日みたいな暑い日の夜は出てくるから捕まえ易いんだ」

「そうなんだ、じゃあ、虫籠とか買いに行こうよ」

「そうだな、夕飯までまだ時間あるし行こうか」

あっ、あの子、こっち見てニヤッてしたわ。ハハーンそういうことね、早くも仕掛けてきたってことか、でも、そうはさせないわよ。


「ア、アタシも行くわ! ク、クワガタ捕り」

「えー、大丈夫? 花音が大嫌いな蛾がいっぱいいるんだよ?」

「ヒッ! な、なんて事ないわよ!」

最悪! なんでワザワザそんなとこ行くのよ。

「ボクも行くにゃん! でもボク虫苦手だからずっと響介くんの腕にしがみ付いとこ」

「来愛、それは動き辛いからダメだよ」

「響介くんはボクを見捨てるというの!?」

「何からだよ!」


「響介、何時から行く?」

「今は暗くなるの遅いし、21時くらいがいいんじゃないかな」

そんな時間に行くの?

「それってすぐ終わる?」

「そんなわけないじゃん、花音。折角行くんだから、とことんやろうぜ、なっ、一華」

「楽しみだね、沢山捕まえようね、響介!」


 これってば、2人っきりだったらクワガタ捕りという名の真夜中デートじゃん! 



 2人しかいない夜の道、街外れの街灯も乏しい歩道で聞こえるのは2人の足音と、高鳴る鼓動。(つまず)いた彼女を支えた彼の手は欲望を抑え切れず、そのまま彼女を抱き寄せ強引に唇を奪う……。って、官能小説か! しかもこれだと響介の方が手を出してんじゃん! そんな状況にはさせないわよ、侮ってたわ、あの子中々の策士だったのね。



「頭抱えて何悶えてんのさ花音、なんなら私が車出してあげるよ」

「ココも行ってみたいです! クワガタ捕りした事ないので、ママも行こうよ」

「フフ、そうね、私も行ってみようかしら」


「ヨシ、少し遠出しようか、苫小牧の手前にいいスポットあるんだよ、噂じゃデカいカブトが捕れるらしいよ」

「カブトだってさ、響介! あーん楽しみー、早く行こうよ!」

「まだ18時だって一華、ほら籠買いにいくぞ」

「はーい、ゼリーも買わないとね!」

 美優姉も乗り気ね、近場でよかったのに。




 時間になり車に乗ったけど、響介と一華が隣りなのは気に入らないわね。ちょっと! 密着し過ぎじゃない? 今日帰ってきてからずっと、響介の隣りにいるじゃん、一華。


 アタシ以外は皆んな楽しそうだな、蛾が沢山いそうで憂鬱だし、響介と一華の距離がこれ以上縮まらないよう、見張んなきゃならないし、虫捕りの何が楽しいのかわかんないわ。響介と一華ずっと虫捕りの話しで盛り上がってるわね、まさかこんな攻め方があったとは。



「着いたよ、まずはこの辺で探してみよっか」

「響介、あの灯りの下いそうだよ、早く行こ!」

えっ、ええー!? あ、あの蛾がいっぱい群がってるとこ行くの!? 信じらんない! 


「美優姉、ここって小学校? 夜の学校ってなんでこんなに不気味なのかしら」

「小さな町というか、集落っぽさが余計にそう感じさせるね、向こうには無人駅もあるんだよ」

「住んでる人には悪いけど夜は1人で歩けそうにもないわ」

「流石の花音様もこの状況じゃ何も出来ないか、これは一華の1人勝ちだな、おっ? 来愛も頑張ってんな」


「響介くん! 蛾が襲ってくるー!」

「ちょ、来愛、動けないって! なんでおぶさってくるんだよ!」

「アハハハ、何やってんのかねアイツら、こりゃ見てるだけでも楽しいや」

全然楽しくないんですけど、アタシは。どうしよう、完全に出遅れたわ、シオりんもココもなんで平気なのよ。


「しょうがないな、ほら行くよお嬢様」

「ちょっと待って、美優姉、アタシ、ホントダメなんだってば!」

美優姉に握られた手を振り解き背中に隠れた。


「いたー!! いたよ、響介!」

「ヒィー! 何がよ!? 何がいたのよ!」

「美優さん、そんな声してたっけ」

「今の声は私の後ろにいる背後霊よ」

「なんだ花音か後ろに隠れて、ビビり過ぎだろ、ハハハ」

「アンタと一華が異常なのよ」

アンタ達の上で無数の蛾がくるくる飛び回ってるじゃない、その下で笑ってられるなんてイカれてるわよ。


〈貴様、誰に断って入ってきた〉(唸る様な低い声)

「ギャーー!! 出た! 出たわ! オ、オ、オバケよ、オバケが出たー!」

「花音、ちょっと、転んじゃうって! 落ち着けって! ウワッ」

ドサッ!

響介に勢いよく飛びついて倒してしまった。


「アハハハハ、花音タン、本物だと思った? すっごい驚き方、ギャーーだって!」

「く、来愛だったのあの声? アンタねー!」

「大丈夫? 花音タン」

「大丈夫じゃないわよ、なんであんな事するのよ、もうサイテー!」

「いや、オバケの事じゃなくて、頭に止まってる蛾の事だにゃん」

「えっ? ウ、ウソでしょ……ねぇ響介? ウソだよね」

「えーと、うん、付いてるよ、2匹」

「イヤー!! 取って! 取ってー! 響介取ってよ!」

「やだよ、蛾は俺も触りたくないよ」

「そんなー!」



 見兼ねた美優姉が蛾を払ってくれた。

「美優姉、ありがと」

「私も触りたくないから来愛の上着で払っただけだがね」

「美優タン酷いにゃん! パーカー貸してっていうから着ると思ったのに、何に使ってるにゃん! 帰ったらすぐ洗わないと」

「ハハ、ゴメン、ゴメン。でも、いい状況になったじゃないか来愛、タンクトップ姿で響介に抱きついたら喜ぶかもよ」

「なるほどにゃん! 美優タン、冴えてるのだ! 響介くーん!」


「み、美優姉、なんでよ!?」

「今までアンタに肩入れした分、来愛と一華にもしてあげないと平等じゃないでしょ。同じスタートラインから勝負して勝たないと意味ないじゃん」

「それはそうだけど……」


「アンタに肩入れしてたのはね、いずれお屋敷に戻り親に決められた世界で生きていかねばならないアンタの叶わぬ想いを応援してあげたかったからさ」

「今は違うって言うの?」


「あの桐島家に抗うつもりなら、惚れた男くらい自力で振り向かせなよ、そのくらいの気構えないと、自分の人生も響介も手に入れらんないよ」

美優姉は誤魔化せないなあ、あんなタンカ切ったクセにまだ弱気になってる部分を見透かされたか。


「上等よ! アタシに惚れない男なんていないんだから」

「さっすが、お嬢様、そうこなくちゃ」

「フン!」 



「花音、なんか飲む? アッチに自販機あるから行こ!」

「一華……そうね、少し喉が渇いたかもね」

ホント楽しそうね小学生みたい。でもこの真っ直ぐさが今の一華の魅力だわ、天真爛漫という言葉が良く似合う。

「奢るよ、どれにする?」

「そうね、アタシはミルクティー……えっ、ええ! な、何その自販機!」


「わかったミルクティーね」

「やっ、待って、やっぱいらないわ! いらないわよ、蛾が群がってるじゃない!」

ガコッ!

「別に飲み物の中にまで入ってないから」

「そういう問題じゃないでしょ! ヤダッ、取り出し口にもいるじゃない!」

「まあまあ、拭けば大丈夫でしょ」

「嫌よ! 絶対飲まないから!」

何なの!? あの野生児! ちょっと前まで繊細な子だったじゃない! 覚醒し過ぎでしょ!


「花音飲まないってさ、響介、一緒に飲む?」

ハッ! この展開は真夜中のデートPart2!



 2人きりで訪れた街外れの真夜中の自販機。私達はその光に誘われたオスとメスに過ぎない。喉の渇きを潤す為に買ったミルクティーを飲む私の唇を見つめる彼の目は欲望に満ちていた。慌てた私は彼に飲みかけのミルクティーを渡した、けれど彼が欲しかったのは私の唇だったみたい、ミルクティーよりも甘いとろける様なキスに抗う事ができず堕ちていく。

てっ、何考えてるのよアタシ! あーもう、今日は変な妄想が止まらないわ!



「半分あげるよ響介、アタシのファースト間接キスあげる、なんてね」

「お前、何言って、そんな事言われたら飲み辛いだろが」

「ダメ! 響介、飲んじゃダメー! 絶対ダメなんだから!」

何で蛾まみれの自販機でいちゃつけるのよ、もう帰りたい!




「お目当てのカブトムシも捕まえられた事だし、そろそろ帰りましょうか」

「見て見て、花音、カブトムシだよ、カッコいいよね!」

「やめて、見せなくていいわよ! なんで角の根本に目があんのよ!」

嫌だって言ってるのに、何で見せてくるのよ、アイツ絶対ワザとでしょ!




 帰る頃には日付けが変わっていた。漸く帰れると安堵したのも束の間、一華が虫籠の小窓を閉め忘れていたせいで帰り道、真っ暗な車の中でカブトムシとクワガタが飛び回るという地獄を味わったのだった。



「ハー、やっと着いた、もう一華のせいでトラウマになったわよ」

「ゴメン、ゴメン、カブちゃんの可愛さに免じて許してね」

「全然、可愛いくないから!」


「ホント虫捕りはもうコリゴリにゃん、響介くんも凄く楽しんでたし、今回は一華に完敗にゃん」

「そうね、侮っていたわ、あの子、天然と策士のハイブリッドだわ」

「ハハ、凄いのかどうなのかわかんないにゃん。でもね、次も負けるのは花音だから」

「はっ? 来愛、どういう意味よ」

「次のフィールドは海だにゃん、水着でボクに勝てるかにゃ?」

え、え、ええー! 両手で胸持ち上げちゃって、嫌味か!

「健全な男子高校生がボクのBODYの誘惑に勝てるかにゃん? ウフフ」


 ヤバい、ヤバ過ぎるよ、連敗はダメ! どうしよう、あの2人が格上に見えてきた、アタシってこんなものなの? そういえば今日、響介は全然アタシの事かまってくれなかった……。


 こうなったらアタシだけの特権を使うしかない! 電話よ、今電話して、とりあえず裏庭に呼び出してこの前言った事取り消さなきゃ、そして言うのよ、アタシだけを見てって。



「およ、響介、電話鳴ってるよ」

え? 車の裏に居たの?

「今ゼリーあげてるから出れないな、誰から?」

何でスマホを地べたに置いてんのよ。

「見ていいの?」

「ああ、問題ない」

問題大ありよ! き、切らなきゃ、あっ、ヤバッ、焦ってスマホ落としちゃったじゃない! 傷付いてないかな……。


〈もしもし、何の用? 同じ家に居るのに電話するんだ、へー〉

間に合わなかった、何とか誤魔化さないと。

〈い、一華、ち、違うの、えっと、こ、これは間違って掛かっちゃって〉

「響介、花音だったけど替わる?」

「今、手離せないから後で掛け直すって言っといて」

「はーい」

〈だってさ、聞こえてたでしょ? ウソはよくないなあ花音、今の響介の反応、花音の電話に慣れてる感じだったけど? こういう事、割りとしてるんじゃないの? 知られちゃいけないような話ししたかったのかな? フフフ〉

〈か、勘違いしないで! ホント間違っただけなんだから!〉



「あっ、電話切られちゃった。へへ、そうはいかないよ、アタシの勝ちね、花音」

「何か勝負してたのか?」

「うん、進行形よ、白熱してきたとこなんだから」


 バ、バレちゃった、一華に。気にしないで後でまた電話すれば……。


《惚れた男くらい自力で振り向かせなよ、そのくらいの気構えないと、自分の人生も響介も手に入れらんないよ》


 何か違う気がする、一華も来愛もアタシみたいに裏でコソコソしてない。

 もうやめたわ、そんな小細工しないでも振り向かせてみせる、正面から受けて立ってやるわよ!


 見てなさいよ、一華、来愛。その気になったアタシに堕とせない男はいないんだから!










アンソレイユのメンバーで海水浴へ! 来愛の猛攻にタジタジの響介。それを見て響介に愛想を尽かした花音は1人でその場を離れてしまう。1人ビーチを歩く花音は強引なナンパ男に捕まって逃げられない状況に。そんな花音を助けたのは、あの聡士だった。


第29話 聡士のケジメ  12/8 お昼に更新します!

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